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第082話 ボクにプライバシーは無かった


 ひとしきり慌てた後、目の前に居る女性はコホンと可愛らしい咳ばらいをした後、笑顔を浮かべながら「こんにちは」と挨拶をするのだが、その笑顔は若干引きつっている。


 とりあえず挨拶されたのなら返さないとね。

 

 ってなわけで笑顔で挨拶を返し、笑顔のまま先程の事について追及する。


「で?先程の話はどういう事ですか?」


「な、何のことでしょう?」


 どう頑張っても誤魔化しようのない状況だと思うのだが、目の前の女性は引きつった笑顔のままとぼけている。

 その後ろでは女神ラケシスが額に手を当てて俯いている姿が見える。


 ボクは笑顔のまま何も言わず、視線を目の前で引きつった笑顔を見せている女性にロックオンし続けていると、観念したのか「はぁ」と溜息を吐いた。


「ごめんなさい」


 女性はそう言って頭を下げた後、「実は…」と、先程口にした[ボクの行動記録]の件について語り始めた。


 その内容によると、以前まで続けていた作品を完結させた後、新作が読みたいという声が多数あり、どうしたものかと考えていたところに、妹であるラケシスの管理している世界に転移した人物、つまり、ボクの事を知ったこの女性は、今度はボクを使って新作を作ろうと考えたらしい。


 因みに以前まで続けていた作品というのは、ボクがこの世界に来る前に読んでいた、あの作品である。


 女神ラケシスに似たその顔を見た時から、何となくそんな気はしていたのだが、その話を聞いて確信が持てた。

 やはりこの女性は、運命神モイラで間違いなさそうだ。


 間違いはないのだが…


「(あの作品に出てたモイラ様のイメージと現実のモイラ様って、違い過ぎじゃないかな!?)」 


 現実との違いに驚いていると、運命神モイラは「作品の中くらい、別に現実(リアル)のまま書く必要ないもん」と、口先を尖らしながら小さく呟いていた。

 どうやら神というだけあって、人の心を読むくらいは当たり前のようだ。


「まぁ、その辺は作者の自由ですもんね。それより…」


 そう言うと運命神モイラは拗ねるのを止め、こちらへと視線を向ける。


「ボクを使って書いている事はもう気にしない事にしますので、好きにしてください」


「本当ですか!?」


 ボクの言葉を聞いた運命神モイラは、そう言ってパァと笑顔を咲かせる。

 そんな笑顔を見ながら「ええ」と肯定の言葉を返す。


 別にボクがソレ(新作)を目にする事も無いんだし、気にするだけ無駄というものだ。

 それに害がある訳でも無いので、好きにさせておいても問題は無い。


 …と思ったが、一つ問題があった。


 という事で、僕は先ほど好きにしていいという言葉に2足を加える事にした。


 一つ、ボクとルーリアが致している時は覗かない事。

 二つ、ノクターンに掛かるような内容は一切出さない事。


 以上、2つだ。

 気にしないとは言ったが、流石にこれ大事な事だ。

 特に一つ目の方。


 ボクの語った補足を聞いた運命神モイラと女神ラケシスは、お互いに視線を合わせた後、今後は(・・・)しないし、書かないと約束してくれた。


 こうして約束してもらえたところで、こんなやり取りに疲れたボクは早く元の世界(ルヴィアート)に返して欲しいと願い出るのであった。

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