第008話 辺境の街クラド
あけましておめでとうございます!
今年も頑張っていきますので、よろしくお願いします!
道中、初のモンスターとのエンカウントも無いまま移動を続け、なんとか夕日が見えるよりも早く街を囲う石壁の近くまで来る事が出来た。
丁度ボクの居る場所の正面には、街の中をへと通じる巨大な門があり、その隣には詰め所らしき小屋があった。
高さと幅が5m程は有ろうかという巨大な門の前には全身を覆うような鎧を着た二人の衛兵が立っており、先程からずっとこちらを見ている気がする。
二人の衛兵の視線を感じる中、ボクは平静を保ちながら近づいて行き、門まで後数メートルといったところで、向かって右側にいた衛兵が声をかけて来た。
「止まれ!あまり見ない顔だな。どこから来たんだ?」
当然の如く衛兵に声を掛けられ、それに従うようにして立ち止まると、声をかけて来た方の兵がこちらに近づいてきた。
「何か身分書はあるか?」
しまった。そういえばその事を考えるのを忘れてた!
こういう街に入る前のチェックとか、お決まりパターンなのだから何か考えておかないといけないんだった!どうしよう…
「無いのか?それだったらあっちで簡単な検査と通行料を払ってもらう事になるんだが?」
返事に困るボクの姿に、疑いの目を向けている衛兵(右側の人)は、ボクが身分書を持っていないと判断したらしく、そういった場合の対処を口にする。
検査とは一体どんなものなのかは分からないが、とりあえずボクは別の世界から来たという部分以外、何も後ろめたい事はしていないのだから大丈夫だろう。
なので検査さっさと済ませ、通行料を払えばこの街への入場を、クリア出来そうだ。
「分かりました。身分書は無いので、その検査とやらをお願いします」
正直に答えると、衛兵(右側の人)は「こっちだ、ついて来い」と言い、門の左手に見えていた詰め所らしき小屋へと向かい歩き始め、ボクはその後をついて行く。
小屋に入ると、部屋の中央に丸い人の頭程の水晶が乗ったテーブルと、そのテーブルを挟むようにして2つのイスが有るだけだった。
きっとあの水晶は嘘発見器、もしくはその人のステータスを見る道具なのだろうと予想出来る。
「それじゃコレに触れながら、俺の質問に答えるんだ」
触りながら、という事はコレは嘘発見器なのだろう。
とりあえず言われた通り、水晶に触れ、これでいいかな?という意味を込めつつ、向かい側に居る門番を見る。
「よし、じゃあまず名前と年齢を言ってくれ」
「(そういえばステータスの表記じゃ、ファーストネームとラストネームは逆になっていたな。って事は…)ユウキ・アズマ、じゅうきゅ…15歳です」
危うく19歳と答えてしまうところだったが、今の年齢が15歳になっているのをふと思い出し、咄嗟に言い直す。
この答に間違いが無い証拠に、手の下にある水晶は何も反応している様子は無い。
そもそも、コレが予想している通り、嘘の答えに反応するのかどうかはわからないのだが。
「では次の質問だ、クラドに来た目的はなんだ?」
「冒険者になる為です。聞いた話では、冒険者として始めるなら、このクラドの街が良いと聞きましたので」
この答にも水晶は何の反応も見せない。
まぁ、嘘は言ってないのだから当然なのだが。
「なるほど。では最後の質問だ。これまでに罪もない人を殺した事や、盗みを働いた事はあるか?」
殺人や盗み?もちろんこの答はNOだ。
当然水晶は何の反応もしない。
「よし。嘘も言っていないようだし、ステータスに罪人の称号も無いな」
そりゃそうだ。罪人の称号なんてあってたまるか。
こちとらこの世界に来てまだ1日目なのだからね!
それに、お天道様の下を歩けなくなるような人生送りたくない!
…ってアレ?ちょっとまって?なんでこの衛兵さんはボクのステータスに罪人の称号が無いか確認出来たんだ?
「あの、水晶って何だったんですか?」
先程まで手を置いていた水晶を指さしながら衛兵に尋ねてみた。
「ああ、コレか?これは触れている者が嘘を言えば光る魔道具だ」
やっぱり嘘を見抜くアイテムであってるよね?じゃあなんでだ?
直接聞いてみるか。
「なるほど。ところで何故ボクのステータスの称号を確認出来たのでしょう?」
「それは観察眼っていうスキルを持っているからだ。俺達門番には必須のスキルだよ」
観察眼スキル?ボクの鑑定と似たようなスキルだろうか?
気になる所だけど、それは追々調べるとしよう。
とりあえず「なるほど」と分かったかの様に答え、衛兵に通行料について聞くと、銀貨5枚だと言われ、これが高いのだろうか?それとも安いのだろうか?と新たな疑問を増やしつつも通行料を支払い、ボクは漸く、このルヴィアートという異世界に来て初の街、クラドへと入ったのだった。