第591話 恋愛結婚推奨です
無事に出産を終え、疲労困憊なシャルロットに労いとお礼の言葉を伝えてから生まれたての我が子(名はヒルメリア)を抱き終えた後、次はローレライ王妃が抱きたいというので、細心の注意を払いながらゆっくりと渡すと、この子の名前は決まっているのか聞かれたので、以前に話し合って決めていた名前を伝えた所、優しい笑みを浮かべながらヒルメリアへと話しかけ始めた。
「そう、この子の名前はヒルメリアっていうのね。ヒルメリア、パパのように強く、そして元気に育つのですよ」
何故女の子にボクの様な強さを求めるのだろうか?
出来ればシャルの様に可愛らしく育つように願ってもらいたい。
それから程なくし、面談時間のタイムアップがやって来た。
ボク達はメイド達に退室を願われ、シャルに可能な限りゆっくりと休むようにと伝え部屋を出た。
「ところでお二人はいつまでこちらに居られるのですか?」
ボク達よりも先に部屋を出たヘルムート王の背に向けてそんな質問を投げかけると、振り返ったヘルムート王が困り顔を見せた。
「3日程だな。なのですまぬがその間こちらに泊めてもらってもよいか?何せ急な事だった故、宿泊先の準備をする余裕がなかったものでな」
そりゃ突然クラドに来ることになったんだし、宿泊先の準備をする時間なんて無くて当然だろう。
「私達が使っているものと同等の部屋しか用意できませんが、それでも良ければ…」
「十分だ」
今から最高級の布団を探しに行く、なんて事にならなくてよかった。
流石に今から手に入れるのはほぼ不可能だ。
ともあれ、ヘルムート王の言質が取れたのでホッと一安心したボクは、アミルにヘルムート王とローレライ王妃の紅茶の準備を頼み、ボクはクロエと共に客室の準備をする為2階へと上がった。
それから20分後、部屋の準備が整いリビングに戻ると、そこには先程までいた3人に加え、ルミナを抱いたルーリアの姿があった。
どうやらルミナのご飯の時間が終わり、なかなか眠りそうにないのでリビングに出て来たらしい。
「戻って来たか。少し相談があるのだがちょっと良いか?」
ボクの姿を見るなり、そう言いながら手招きするヘルムート王。
何か嫌な予感がするのだが、話を聞かないわけにもいかないだろうと思いながらテーブルに着くと、驚く言葉がその口から放たれる。
「そちらのルーリアの子供であるルミナを、うちの息子の婚約者にどうだろうか?」
「え?」
まだ生まれて数日しか経たぬ子を婚約者にとは、、一体何を言っているのだろうか?
しかも年の差が20もあるのはちょっと…
「ルティアート王子は確か20歳でしたよね?流石に年が離れすぎてますよ。それにルミナには自分で相手を選ばせて「ルティじゃないわ」」
ローレライ王妃の言葉がボクの言葉を遮る。
「これはまだ発表していない事なのですが、今度シャルに弟が出来る予定があるの」
ウフフと微笑んだローレライ王妃は、下腹部を撫でる。
ローレライ王妃が今着ている服はいつもと違い、腰回りを締め付けないタイプのドレスなので気づかなかったのだが、確かに言われてみれば下腹部が少しばかり膨れていた。
「それはおめでとうございます。ですが、やはりルミナには相手を自分で選ばせてやりたいので、申し訳ありませんが婚約はお断りさせてください」
王族からの婚約なんて普通なら断ったり出来ないし、しないのだろう。
だけどボクはルミナの将来を勝手に決めたくは無いので、ここはしっかりと断らせてもらう事にしたのだ。
「そうか、なら今は諦めるとするか」
特にお咎めもなく簡単に引き下がってはくれたようではあるが、それはあくまでも今は、である。
つまりまた聞かれる時が来るって事だ。
ならばと思い、ルミナが成長して第2王子と仲良くなる様なことがあり、もし二人が婚約を望むのであれば問題は無いと伝えた。
すると何故かヘルムート王とローレライ王妃はニコニコしつつ、ボクの提案を了承したのだった。




