第563話 穴の先は?
20分少々の休憩を終え、ボク達は再び討伐を再開し始めた。
来た道を戻って十字路へと到着後、更に奥へ進むために右へと曲がる。
そこから数分程真っすぐ進んでいると、突き当りで道が左右に分かれており、正面の壁には看板が設置されていた。
「左は行き止まりで、右が奥に続いてるのか…ならまずは左を調べるべきだよな」
「討ち漏らしでもあったら、奴らはすぐ増えるっすから大変すもんね」
もし2匹以上のソルジャーマウスを撃ち漏らしてしまっていたら、その数はすぐに増えてしまう。
そんな事にでもなったら、確実にボク達の冒険者歴に傷がついてしまうだろう。
そう思った上での判断だったのだが、そんなボクとクロエの会話にマルクが疑問を口にする。
「というか、お二人の気配察知で居るかどうか判らないですか?」
「臭いもしないし音も聞こえないけど、もしもって事があるから念には念を入れてちゃんと自分達の目で確認した方が良いんだよ」
ボクの言葉にマルクは「へぇー」と納得した様子を見せ、ボク達は早速分かれ道を左へと曲がり、その奥を調べに向かう。
するとすぐにまた分かれ道があったが、左側はすぐ先が行き止まりになっており、右側はまだ奥へと続いている。
行き止まりはどこなのだろうかと思いながら進んで行くと、漸く前方に行き止まりらしき場所である壁が見えて来た。
「どうやらあそこが行き止まりらしい…と思ったけど、穴があるな」
行き止まりと思わしき壁の右下あたりに、直径50㎝程の穴が開いているのを発見した。
「ここで働く人が開けた穴って、わけはないよな」
そう口にしながら穴の中に松明をゆっくりと入れようとしたとき、松明の炎が揺らいだ。
どうやらこの穴はどこかに繋がっているようだ。
が、しかしどう考えてもこの穴のサイズは人が通るような道ではなく、更にはその穴の付近からは獣臭が漂っていた。
つまり…
「これはソルジャーマウスが通った、というよりも掘った穴、かな?」
「間違いないと思うっすよ。だってほら、あそこにソルジャーマウスの臭いがする毛が見えるっす」
そう言ってクロエが指し示した先には、壁に張り付く獣の毛があった。
「けど、この穴どこに繋がってるんだろ?」
「穴は真っすぐ掘られてるみたいだけど、松明の灯りじゃあ流石に届かないか。だったら…」
ならばと松明の灯りを下げ、穴の奥に向かって灯りの魔法を放つ。
すると穴の奥が開けているのが見えた。
「あ、奥に通路が見える。だけどアレって何処だろ?
「ここに来るまでこんな穴は見てないっすから、あの看板のあった分かれ道の右を進んだ先っすかね?」
「方角的にそうだろうね。とりあえずここは通れないし、ソルジャーマウスも居ないようだからあの分かれ道まで戻ろうか。と、その前に」
折角こっちの道を探索したのに、彼方側に行く間にソルジャーマウスがこの穴を通ったりしたら意味が無くなる。
なので穴の奥、そして手間の順に地属性魔法のアースグレイブ(威力を激減させたバージョン)を使い、穴を塞いだ。
「これで探索中、こっち側には来られないだろ」
穴のあった場所を軽く叩いてみて、崩れる様子が無いのを確認した後、ボク達は例の分かれ道へ戻り始めた。




