第525話 朝から無茶苦茶言われている
買い物が終わり、シャルロットもそろそろ戻らないといけない時間となっていた為お城まで送って行ったボク達は、その後我が家へと戻って来たのだが、何故か入り口ではルーリアではなく、ナツキが出迎えてくれた。
しかもその両手には木刀を持った状態でだ。
「おかえり。朝の続き、はじめよっか」
何故かすごくいい笑顔でそう言いながら木刀を1本差し出してくるナツキ。
確かに朝の訓練の時に時間が出来ればとは言っていた。
そして今日はこの後の予定は特にない。
だからと言ってまさか、その日の内に2度目の訓練をしようと言われるとは思いもしなかった。
「ほら、やろうぜ」
中々木刀を受け取らないからか、木刀をボクの胸元へと押し付けてくる。
せめて一休みしてからにしてもらえないだろうか?
「ちょっと休憩じゃ、ダメで「ダメ」…なんですね」
此方が言い切るよりも先に返事をされてしまった。
絶対に休ませてはくれないようだ。
「あ!ユウキ様おかえり」
「お父さんおかえり~」
この後始まる訓練に溜息が零れそうになっていると、玄関に買い物用の袋を持ったルーリアとクミがやって来た。
「ちょっと二人で夕飯の材料を買いに行ってくるわね。帰ってきた後は訓練するって聞いてたから、お風呂はお湯を張るだけで大丈夫なように、着替えとかは準備しておいたわ」
既にルーリア達にはボクが返ってきた後は訓練をするという風に伝えられている様だ。
つまり、もうボクはこの胸元に押し付けられている木刀を受け取るという選択肢しかないらしい。
一応この場から逃げるという選択肢もあるにはあるが…多分、というか確実に追いかけられて捉まるだけ。
やるだけ無駄というものだ。
そう思い至ったところで諦め、溜息を吐きながら木刀を受け取った。
「まぁ死なない程度に頑張ってね。それじゃあルーリアさん、行きましょ」
結構シャレにならない言葉を残し、クミはルーリアの手を取って出かけて行った。
そしてボクは、二人の後ろ姿を見送っているところをナツキに手を引かれ、裏庭へと連れていかれたところですぐに訓練は開始する。
本当に加減してくれているのか分からない位の力量の差を見せつけられながら、幾度となく気絶と回復を繰り返し、気づけば2時間近くの時が過ぎていた。
怪我はいくらでも回復されているが、体力と気力はどうにもならず底をつき、ボクは漸く地獄から解放された。
その後はナツキと二人でお風呂に入り、しばらく休んだところで全員揃っての夕食の時間となる。
過酷な訓練をしたからか、この日の夕食時、ボクははいつも以上の量を食べていた。
そしてその翌朝…
朝日が昇り始めた頃にナツキにたたき起こされ、朝からまた訓練が始まっていた。
とは言え、流石に起きたてという事もあり、いきなり実戦形式のモノではなく素振りからのスタートだ。
「ほら!素振りのスピードが遅いぞ!せめて秒間2回は振れ!」
かなり無茶な事を言われながらだが…
そんな無茶苦茶な素振りは20分程続き、腕が悲鳴をあげだしたところで終了する。
が、勿論それで訓練が終わるわけではない。
むしろこれからが本番である。
強くはなりたいが、せめてもう少し優しいメニューにはならないだろうか?
ボクはそんな事を思いながら、訓練を続けるのだった。




