第524話 指輪を求めて~その4~
出店を回るだけで1時間近くを消費したボク達は、漸く本来の目的地であるお店へとやって来た。
「これはこれはシャルロット姫様!この度はご婚約おめでとうございます」
店内に入るなり、昨日と同じ燕服を着た執事の様な姿をした店員がボク達を出迎え、シャルロットの姿を見るなりそう口にして胸元に手を当てながら深くお辞儀する。
その動作を目にし、ボクはこの人の本来の職種は執事なのではないかと思えた程だ。
祝いの言葉に、シャルロットはニコリと笑顔を浮かべ「ありがとうございます」と、お礼の返事をする。
それを聞いた後、今度はこちらへ視線を向けながら「という事はやはり…」と呟く。
「お客様がシャルロット姫様のご婚約者でお間違いなかったという事ですか」
その言葉からして、どうやらボクがシャルロットの婚約者という可能性があると思っていたという事になる。
確かに昨日来店した際、ルーリア達が何度かボクの名前を呼んでいたのを聞いていたはずなのだが、ルーリア達とクロエの二人とだけ出来ていたから、確信を持てなかったという事なのだろうか?
それでも、昨日同じ指輪を4つ注文していた事から、まだ可能性があるという程度だったのかもしれない。
「はい。それと昨日一緒に居た二人と、こちらのアミルさんも婚約者になっています。そういう訳なので、昨日のアレをこのお二人に見せてあげてください。後、それぞれのサイズも測っていただければと」
「畏まりました。それでは皆様こちらへどうぞ」
そう言われ、ボク達は昨日見た指輪の置かれているショーケースの位置へと進む。
「こちらがユウキ様のお選びになられた指輪でございます」
今日初めて指輪を見るシャルロットに、店員はそう口にしながらショーケースに並ぶ指輪の内の一つを右手で示した後、続けて指輪に使われている素材の説明や、付属されている効果についても話し始めた。
それをシャルロットは、終始喜びの表情で聞いていた。
「以上がこちらの指輪の説明となります。何かご質問などはございますでしょうか?」
「いいえ。十分です」
店員の言葉に、シャルロットはそう答える。
指輪の素材と効果以外に聞く事なんて、あるとは思えないので、当然の返事だろう。
もしあったとしても、指輪の製作者くらいだろうか?
「では早速サイズを測りたいと思います。まずはシャルロット姫様から測らせて頂きたいと思いますので、お手をよろしいでしょうか?」
「ええ。よろしくお願いします」
そう言ってシャルロットは左手の薬指だけをピンと伸ばした状態で店員の前に差し出し、店員は「失礼いたします」と一言断りを入れた後、指のサイズを測り始めた。
サイズの測り方は単純なもので、用意された各サイズのリングを、少し大きめなところから指に嵌め、徐々に小さ目な物へと入れ替えていくだけである。
その結果、選ばれたのは5番と書かれた小さなリングで決定した。
そうして次はアミルの番となり、シャルロット同様に大き目なサイズから徐々に下げていき、こちらは7番と書かれたリングのサイズで決定した。
「それではこちらのサイズで指輪を作らせていただきます。昨日申し上げた通り、今日より3日後の午後にはお引渡し出来るように致しますが、どちらへお届け致しましょうか?」
どうやら完成した指輪は配達してもらえるシステムがあるらしい。
初めは我が家に届けてもらおうかと思ったのだが、式の準備は全てお城の方でしてもらえているので、ここはやはりお城の方へ届けてもらった方が良いだろうと思い、完成品はお城に届けてもらえるように手配して貰い、ボク達は店を後にしたのだった。




