第518話 お誘い
お城に到着し、門前に立っていた二人の衛兵の内の片方が既に顔なじみになりつつあるためか、用件を伝えるとすぐに確認を取りに行ってもらえた。
「(そういや、ここ最近あの人が絶対いる気がするけど、固定になったのかな?)」
記憶ではこのお城に頃は門前に立つ衛兵がよく入れ替わっていたはずだが、気づけば先程確認に行ってくれた人がいつ来ても立っていた。
おかげで楽に話を通してもらえるのでありがたいが…もしかしてボク達のせいで固定になったかな?
確認してくるのを待っている間、そんな事を考えていたが、流石にそれは違うかと思考否定した。
しかし、実は本当にユウキの存在が関わっているのだが、ソレを知る事はこの先暫く無い。
その後、すぐに戻って来た衛兵に案内してもらい、場内へと進む。
2階へあがり、右手に伸びる廊下を進んだ先にある、一つの部屋の前で衛兵の足が止まる。
「姫様は現在こちらの部屋にいらっしゃいます」
そう言って衛兵は扉を軽くノックし、中から「どうぞ」と入室の許可が出たところで衛兵が扉を開いてくれた。
「こんにちはシャル。突然だけど、今夜ウチで夕食を一緒にどうかな?といっても、今我が家には知り合いの一家がお祝いに来てくれてるから、ボク達だけってわけじゃないんだけどさ」
「まぁまぁ!それは是非ご一緒したいですの」
すごい喜びようを見せながらも誘いに乗ってくれたシャルロット。
多分本人は気づいていないが、小さい頃の…といっても少し前の事だが、その頃の口癖が出てしまっていた。
知り合いが居る事について、特に問題は無さそうだ。
「早速お父様に外出の許可を頂きに行くの!」
喜んでくれているのはいいのだが、舞い上がり過ぎて落ち着きを無くしてしまったシャルロット。
落ち着く様に助言するが聞き入れてくれず、部屋を早足で出て行ってしまう。
すぐに後を追い、ボク達はヘルムート王が居るであろう執務室の前へとやって来た。
コンコン
「お父様、私です」
「シャルか?入りなさい」
入室の許可が出たところでシャルロットは扉を開き、室内へ。
ボクも入っていいのだろうか?と思っていると、シャルロットは廊下で立ったままのボクを見て「ユウキ様、入ってください」と言われたので、入らせてもらう事に。
「ユウキ殿も来ていたのか。それで?二人してどうしたのだ?」
尋ねてきた用件を伺おうとするヘルムート王。
シャルロットはニコリと笑みを浮かべながら、口を開く。
「先程ユウキ様から夕食のご招待して頂きましたので、今夜はユウキ様のお宅に行ってまります!」
我が家に行っていいかどうかを聞くのではなく、既に来る事が決定事項の様に伝えるシャルロット。
せめてちゃんと許可を取ろうよ…と内心思っていたのだが、その内容を聞いたヘルムート王はシャルロットの言葉を指摘するわけでもなく、娘の嬉しそうな様子に「そうか。良かったなシャル。楽しんでおいで」と答えたのだった。




