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第510話 笑顔(威圧)


 いつシャルロット抱きしめ(あの件)についての事を言われるかと身構えていたが、ヘルムート王の口から出てきたのは例の夜襲の件についてだった。

 どうやらローレライ王妃の心当たりが見事的中していたらしく、無事に黒幕を捉える事が出来たらしい。


 昨日の今日で、しかも昨夜は夜な夜なクミの血の副作用に身を任せて励んでいたはずだ。

 という事はつまり、実質8時間程で事件を解決した事になる。

 中々なスピード解決である。


 因みに犯人は、3人いたシャルロットの元婚約者候補だった内の一人で、バナティス公爵家だったらしい。

 やはりドガッティ侯爵家のヴォルキスは完全に無関係だったようだ。


「ところで…ユウキ殿とシャルの結婚式はいつ行う予定か、考えてはいるのかな?」


 夜襲の件についての話が続いてたため、途中から完全に油断しきっていたボクの心がドキッとする。

 そしてそんなボクに追い打ちをかけるかのように、例の話題が持ち出されたのである。


「ところでユウキさん?なんでも今日は街中で大胆にもシャルの事を抱きしめたそうね?これはもう…責任を取る覚悟が出来たって事で、良いのよね?」


 ローレライ王妃がとても良い笑顔で質問してくるが、どう考えてもそれへの返事はもう2択であることが許されないように感じ取れる。

 いやむしろ[YES or はい]の答え方の違う2択があるだけなのかもしれない。


 妙な威圧感を覚えるこの状況下で、助けを求めるかのように視線をルーリアとクロエの居る方へと向けるが、二人は苦笑いを浮かべながらそっと視線を反らしていく。


「(なぜ!?…っ!!)」


 二人が視線を反らした事へ疑問を感じたその次の瞬間、ローレライ王妃の居る方向から居抜かれるかと錯覚するような視線が向けられた事を感じてゾッとし、ゆっくりと視線をそちらへ向けるとそこには、先程と同じ笑顔がボクへと向けられていた。


「えっと、あの時はですね?ヴォルキス様をおびき出すために「責任、とってもらえるんですよね?」…いえ、ですからあの時は「責任、とってもらえるんですよね?」……」


 これはもう「はい」という選択肢を選ぶまで終わらない会話になっているのではないだろうか?


 そんな事を思っていると、不意に背後からクラディウスが囁きかけて来た。


「ユウキ様、これは貴方様の油断が招いた結果です。素直に諦めてくださいませ」


 確かにその通りなのだろうけど、ソレを報告してしまったのは貴方では?と、言いたいところではあるが、クラディウスはそもそも王家に仕えている身。

 当然ボク達よりも王家の味方をするだろう。


「責任、取らせていただきま「責任を取りたいのよね?」責任、取りたいです!」


 笑顔という威圧に屈し、ボクはローレライ王妃に言質を取られる事となった。

 確かに今回王都に来たのはシャルロットをクラドに連れて行く為であるが、結婚自体はまだもう少し先にするつもりだった。

 現在シャルロットは15歳であり、せめて18歳になってからかなと考えていた。


 一応この世界において、結婚出来るのは15歳からである。

 つまり、シャルロットは既に結婚可能な年齢ではあるわけだが、あちらの世界の常識が残っているボクにとっては15歳の少女との結婚はどこか犯罪臭がするのだ。

 そう思っていたが、もう諦めざるを得ない。


 何せすぐ傍ではシャルロットがルーリアとクロエ、そしてクミの3人から祝福の言葉を送られているのだ。

 アレに水を差そうものなら、きっとボクの評価なんて無いに等しいものにされる事だろう。


 ボクは自分の倫理観を捨て、これからについて前向きに考えようと決めたのであった。

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