第488話 我が家とマルクの家
マルクの新居
「とまぁ、内部はこんな感じの間取りになってるから」
「ほんとにこんな立派な家を貰っても良いの!?」
マルクは新しく生活する家と、地面に書いた内部の図面を見て驚き目を見開いている。
そんなマルクの様子を見たルーリアは「ほらね?」と言いたげな視線を向けて来ていた。
「良いも何も、さっきも言った通りここは今日からマルク達の家だよ。中は二人の個室と共同の部屋が一つ、後は風呂とトイレがあるだけだよ」
「だけって…十分すぎるよ。てっきりボクは部屋が一つとトイレがあるくらいかなって思ってたのに…」
「部屋一つにトイレって…流石に一緒の部屋はマズいだろ。っていうか、最低限だと風呂も必要だろ?」
「ユウキ様、普通の家にお風呂はないからね?あるのはそれなりに裕福な家くらいだよ」
「そりゃそうかもしれないけど、ボクにとっては必要最低限の設備だからね」
これだけは譲れないとばかりに答えると、ルーリアはそれ以上何も言わず溜息を零す。
「まぁとりあえず、実際に中を見ておいでよ」
「そうだね!ちょっと見て来るよ!」
そう言ってマルクは家の中へと入っていく。
その後すぐに中から聞こえてくるマルクの喜びと驚きの声を何度か聞きながらボク達はマルクが戻ってくるのを待った。
それから5分後、興奮気味な状態で戻って来たマルクを連れて、今度はボク達の家の正面へと戻る。
「ところでユウキさんの家の中はどんな感じになったの?」
「ウチか?ウチは…」
マルクに聞かれ、ボクは我が家の改築をする際に皆で書いた見取り図を収納の腕輪から取り出す。
1Fの図面
2Fと3Fの図面
「こんな感じだな」
「うわぁ…外見から既に思ってはいたけど、中もこれ、ちょっとした貴族の家と同じじゃん」
「今はまだいいけど、シャルロットが来た時の事を考えると、これくらいは無いとなんか言われるかもって意見があってな…」
「あ~、それもそうだね」
因みに、この王女が嫁いでくるというのに小さな家は流石に問題があると言い出したのは、ルーリアであり、それにアミルとクミが賛同したのだ。
おかげで2Fに空き部屋を増やす流れになったが、これはこれでいつ来るかわからないナツキ達が寝泊まりする部屋に出来るので良しとしよう。
だが、この家には重要な問題が一つ残っているのだ。
「ただ、内装と家の広さはクリアできたんだけど…この外装だけはどうにもできないんだよな…」
そう、我が家とマルクの家は形こそ、ちゃんとした家ではあるが、壁は全て茶色一色である。
土魔法で作ったものだから、当然こうなってしまうのだ。
「ユウキ様の魔法でどうにか色とか付けたりできないの?」
確かにルーリアの言う通り、魔法でどうにか出来るかもしれない。
普通にに考えれば、魔法の発動地点に必要な色の土でも置けば出来るように思えるのだが、実はそうもいかないのだ。
というのも、今ボク達が立っている地面の色が明るい茶色に対し、その上に作った我が家とマルクの家は濃茶になっているのだ。
もちろん昨日ギルドで依頼を受けて作った家や、スラムにある解体場も全て濃茶である。
どうしてこの色になってしまうのかは謎ではあるが、きっと何らかの方法はあるはずだと、ボクは信じている。
「きっと方法はあると思うけど、今はやり方が分からないからこのままかな…、スマンがマルクの家も壁の色はあれで我慢してくれ」
「こっちはあれで十分満足してるから大丈夫かな」
「そっか…」
十分満足してくれている様で良かったと思いながらも、ボクは茶色一色の我が家を見上げながら、魔法で色を塗る方法はないかと考えるのだった。




