第456話 報告したらちょっとスッキリ
翌日、朝食を食べ終わったボク達は、ギルドで言伝されていた通り王城へと足を運ぶ。
すると、入り口に立つ衛兵達にもちゃんと話が通っていたらしく、何の疑いもなく中へと案内してもらえた。
ボク達のそばにはフェンリルがいるにもかかわらず、何の検査もすることなくである。
国の中枢であるお城の入り口を守っているというのに、それで本当に大丈夫なのだろうか?
そんな心配をしながらも、案内をしてくれている衛兵の後を歩いていると、大きな扉の前へとやってきた。
謁見の間への入り口である。
「ユウキ様御一行をお連れしました!」
「入れ」
中からヘルムート王の入室を許可する声が聞こえたかと思うと、入り口の扉は内側から開かれる。
正面には当然ヘルムート王が玉座に座っており、その隣にはローレライ王妃が立っている。
そしてその二人の元へと続くカーペットの両側には、鎧だけを身に纏った騎士達が並んでいるのだが…なぜかその騎士たちは武器と思わしきものを持っていない。
魔法で戦う騎士たちなのだろうか?
一瞬そんな事を思ったが、そんなはずはないだろう。
最低限武器で戦えるくらいの技量がなければ、こんな重要な場所に居るわけがないのだ。
武器を持っていないその理由がわからないまま、ボク達はヘルムート王の3m程手前まで進み、そこでそろって片膝をつくのだが、フェンリルだけはただじっと佇んでいた。
フェンリルにとって人間の上下関係なんてどうでもいいことなのだろうが、せめてお座りくらいしてくれないだろうか。
「さて、早速で申し訳ないのだが、昨日の戦いについて詳しく報告してもらえないだろうか」
普通なら挨拶から始まるはずだが、まさかのそれを抜きにして報告を求められた。
余程結果が気になっていたのかもしれない。
なので今回は言われた通り挨拶も抜きに遠慮なく報告させてもらうとしよう。
「王都に向かってきていた二つのモンスターパニックですが、片方は無事に片付きました、そしてもう一つの王都付近まで来ていた方も、一先ずの安全は確保できました」
「ふむ。私もローレライと共にテラスから望遠の魔道具を使って見ていたので、襲ってきていた魔物が全て倒されたのは確認している。しかし、そなたは今、一先ずの安全といったな?それはどういう事か説明せよ。それとユウキ殿の近くに居るその大きな狼は一体…」
望遠の魔道具という気になる単語が聞こえてきたが、今はその事よりも先にヘルムート王の質問に答えていく。
見ていたであろう巨大な黒いタマゴの事、そしてそれから出てきたフェンリルという存在。
そしてトドメとばかりに、例の召喚の杖を収納の腕輪から取り出し、そこについている石を後4日以内に破壊しなければボク達の命が無いという事を。
「解決策は何か見つかっては、おらぬのか?」
「何もありません」
安心してもらうために誤魔化すなんてことはせず、ハッキリと答えた結果ヘルムート王は頭を抱える事となった。
爆弾を落とし終えた事でちょっとスッキリしたボクは、他に何か用はあるのかどうかを確認し、謁見の間を後にする事となる。
そのまま家に帰ろうとしたが、王城の入り口付近で二人のメイドを引きつれたシャルロットと遭遇…というより待ち伏せされてた感じだが、今日はこれからしなければならない事があるので、シャルロットには悪いと思いつつも、簡単な挨拶とこの後の予定について説明して帰路につこうと思ったのだが、なんとシャルロットはボク達と一緒に付いてくると言い出した。
「危険ですよ?ボク達の傍には常にフェンリルが居ますし」
「どの道残り4日以内にその石を破壊しなければ私達の命は無いのでしょう?逆に言えば、その4日間は何もしてこないという事ですから、大丈夫ですよ」
「それはそうかもしれませんが…」
「それとも、私が傍にいるのは迷惑なのでしょうか?」
上目遣いでそう口にしたシャルロット。
ボクは慌てて「そんな事はありません」と答えると、シャルロットの表情はパァっと笑みを咲かせた。
「でしたらご一緒させていただいても、いいですよね?」
「わかりました。ですが、ご一緒しているのが危険だと感じたらすぐにお城の方に戻ってもらいますよ?」
「ええ。わかりました」
こうしてシャルロットの同行が決まり、シャルロットの傍に居たメイドの片方にヘルムート王への今のやり取りの事を伝えてもらう様に頼み、ボク達は王都にある我が家へ向け、徒歩での移動を始めた。




