第423話 変わり果てた姿に
地震により、あちこちの崩れた家から誰かを求める声が聞こえてくる。
自身、もしくは身内が瓦礫に埋まってしまっているのだろう。
現に見える範囲だけでも瓦礫の下から手が出ているのが見えている。
まだ動いているので生きてはいるようだ。
「ルーリア!あそこの人を頼む!クロエはそっちだ!クミとマルクはあそこの人達を手伝ってきてくれ!」
生きていれば助けることは出来る!
そう思いボクは皆に指示を出し、自分も別の場所へと走った。
周りでは無事だった住人や冒険者と思わしき人達も被害者の救出をし始めたが、その人達は瓦礫を慎重に動かしているのだが、ボクはこういう時に役立つ収納の腕輪があるので、瓦礫をまとめて取り込んでいく。
おかげで埋もれていた人はすぐに見つかり、且つ二次災害が起こることは無い。
そんなアドバンテージを活かし、目につく瓦礫をひたすら収納からの倒れている人の救出を繰り返していく。
時折瓦礫によって腕や足が押しつぶされてしまっている人が居たが、そういう怪我人は[心具]を手に回復魔法を使っている。
出来る事なら助けた人全員に回復魔法を使いたいところだが、そんな事をしていたら魔力が足りなくなって動けなくなってしまう。
なので今は重症と判断した人にだけ使っているのだ。
「誰か!ポーションか回復魔法を使える人はいないか!?」
前方に見える曲がり角の先から聞こえるその声に急ぎ向かうと、右腕と左足が本来とは違う方向に曲がってしまっている少女の姿と、その少女のそばで瓦礫を背で支えているヘーデルと、少女の両脇に手を入れて移動させようとするミデールの姿があった。
「回復魔法使いますので、その場に卸してください!」
ヘーデルの背にある瓦礫を収納し、すぐに少女の治療を始める。
変な方向に曲がった腕と足は光と共に元の形へと戻り、おまけに頭に負っていた小さな怪我も綺麗さっぱり治っていた。
「「すげぇ…」」
双子が揃ってそんな事を口にし、唖然としている。
あとは二人に任せて大丈夫だろう。
何せこの双子はボクが一度は目標にした程のベテラン冒険者なのだから。
「それじゃあボクは他のところに回りますので、その子を安全な場所に移動させてあげてください。では!」
そう言ってボクはその場を去り、他に被害者がいないかを見て回り、気づけばもう陽が傾き始めていた。
「ユウキ様!」
「「ユウキさん!」」
「お父さん!」
そろそろ皆との合流を考えて冒険者ギルドへと戻ってみると、皆が入り口前で待っていた。
「ただいま。皆は怪我とかしてない?」
救出作業中に何らかのアクシデントが起こる可能性は十分にあり得るので、皆の無事を確認してみると、ルーリアとマルクが指先や腕にちょっとした怪我をしていたが、 他には目立つ怪我はないようだ。
とりあえず二人の怪我を魔法で治し、他にもう無いかチェックしてから皆で我が家の様子を見に戻る事に。
あちこちの建物が崩れた事により、街中の景観がガラリと変わってしまったのを目にしながら大通りを歩き、ボク達は戻ってきた。
「やっぱりうちもダメだったか…」
そう呟いて立ち尽くすボクの視線の先にあったのは、瓦礫の山と成り果てた我が家だったモノの姿だった。




