第403話 不穏な空気
エリトバードという鳥型の魔物討伐の依頼を受けたボク達は、クラドの北にある森の先にある草原へとやってきていた。
「クミ様!そっちに行ったわ!」
「任せて!」
羽をバタつかせながら大地を走り回る全長70㎝程で茶色のカモに似た鳥の魔物であるエリトバードは、本当に鳥類なのかと思う程の速度で逃げ回っている。
その速度は、時速70km程はあると思われる。
しかし、それでもまだボク達の方が素早さが高く、逃げる先に回り込んだクミの手によってその両羽を掴まれ、あっけなく取り押さえられていた。
「空は飛べないくせに、なんでこの子達って羽ばたくのかしらね」
「その理由は今でも謎となってるのよね」
「理由なんてその内誰かが解明してくれるっすよ!それよりもそいつも早くとどめを刺して収納するっす!折角の美味しいお肉が勿体ないっすよ!」
今回この依頼を受けた理由が、クロエとルーリアがエリトバードの肉がとても美味しいからという者であり、その討伐する際に重要事項として出来るだけストレスを与え過ぎない内に殺してしまう事だと聞いていた。
なんでも多少のストレスは肉の歯ごたえ余をくするが、与えすぎると固くなりすぎて料理に向かなくなるらしい。
更には苦みも増すらしく、最終的にはとても固くて苦い鶏肉が出来上がるようだ。
クロエの言葉を聞いたクミは、すぐ様エリトバードの首をナイフで切り付け、その頭部がボトリと落ちたところでエリトバードの死体を収納する。
「さぁこの調子であと20匹位確保するっすよ!」
「依頼は全部で5匹でいいんだぞ?」
「何言ってるっすか!折角こいつらがこの地域に来てるんすから、今夜食べる分と予備を狩っておきたいんす!」
このまま少し顔を前に着きだせばキスが出来そうな位まで迫ってくるクロエ。
それ程までに美味しい肉という事なのだろう。
「わかった。わかったから」
クロエの言い分を認めながらその顔を押し戻し、ボク達は再びエリトバード探しを始める。
が、この草原にはトクサに似た植物が生えており、それらはボク達の肩くらいまで成長しているので見渡しが悪く、中々見つける事は出来ない。
それでも何とか臭いを頼りに探しだした結果、15時の時点で17匹のエリトバードを仕留める事が出来ていた。
「20匹には届かなかったけど、今日はもう終わりにしようか。流石にこれ以上は暗くなるから探せないし、何よりも夜にこんな場所に居るのは危険だしね」
20匹と言い出したクロエ以外はボクの言葉に反対する様子はない。
クロエも反対はしないが、少し不満そうだ。
明日もまた受ければいいじゃないかとクロエに言うと、クロエの顔から不満の色は消え、笑顔に変わった。
「さぁ、急いで帰らないと街のてまえで野営しないといけなくなるぞ」
「それは嫌ね。出来れば家の布団で静かな夜を過ごしたいわ」
何故かボクの方に視線を向けながら賛成の意を示すクミ。
言いたい事をなんとなく理解したボクはそっと視線を逸らすと、クミが「はぁ~」と深いため息を吐いた。
狩りをした日の夜って、無性にその気になってしまうので許して欲しい。
そんなこんなで完全に陽が落ちた頃にクラドに到着したボク達は、ギリギリ街中に入る事が出来たのでその足で冒険者ギルドへと向かったのだが、建物内に入るった瞬間、建物内の様子がおかしい事に気付いた。
普段であれば、夕方以降は冒険者達の姿も減っていくのだが何故か今日は人が多い。
しかもその殆どが受付付近に集まっているのだ。
多分この様子だと、良くない事が起こっているのだろう。




