第040話 解体作業
[心具]の杖の鑑定が終わった後、早速その性能を試そうと思い、ボクはフォレストドックの死体の山の前に立ち、魔法の使用を試みた。
使おうとしたのは当然炎の魔法。
イメージした内容は、杖の先から火球が飛び、着弾と同時に対象を燃やし尽くす様な炎が舞い上がるといったものだ。
この[心具]がどれほどの効果を発揮するのかは分からないが、杖無しで魔法を使った時であのショボさなのだから、ボクの魔力程度では効果アップ(大)があったところでこのくらいのイメージを送らないとまともな魔法にはならないだろうと考えたのだ。
けど、その考えは甘かったようだ。
いざ魔法を発動させた瞬間、杖の先から放たれた直径50㎝程の火球が積み上げられたフォレストドックの死体に着弾。
その次の瞬間、ズゴォォォン!!という、まるで爆発にも似た音と共に激しい火柱が立ち上り、周囲に熱風が吹き荒れたのだ。
襲い来る熱風を、両腕で顔を覆うようにガードして耐え、少しして熱風が収まったところでガードを解き爆心地の様子を伺ってみると、そこには真っ黒になった地面と、視界の端にゴブリンの死体が2つ見えるだけという状況になっていた。
「……」
そんな状況に、ボクはただ唖然とするしかなかった。
それから少しして、ボクは気づきたくなかった事に気付く。
そう、フォレストドックの死体の山の傍にあった、オークの死体2つと、ゴブリンの死体が4つ消えていたのだ。
今の魔法で巻き添えを食らい、フォレストドックの死体と共に消滅してしまったようだ。
ゴブリンの死体は兎も角、オークは解体すれば結構なお金になったのに、なんともったいない事をしてしまった事か。
ガクッと膝をつき、暫しの間悔やみ続けたが消滅したものはもう戻ってこない。
ならばこれも勉強だと思い、次に生かす事にし、消滅した死体は諦める事にした。
「しかたない、ゴブリンをオークに見立てて解体の練習をするか」
本来、オークの解体は、買取の対象である各部位の肉の切り分けと魔石を取り出す事である。
もしこれがオーク以外の場合、魔物によって売れる部位が変わってくる為、ある程度情報を仕入れる必要がある。
と、今手にしているアミルさんのメモの後半部分に書かれていた。
「流石にゴブリンの買い取り対象は掛かれてないか…」
分からないのならば、一度街に戻って調べてくるべきなのだろうが、今回はあくまでも解体の練習をするのが目的である。
なので、1体は残しておき、もう一体を今日の練習用として使うとしよう。
「最低でも魔石は手に入るし、まるっきり損するわけじゃないしな」
誰に聞かせるわけでもない、言い訳じみたセリフを口にし、ボクはアミルさんのメモの前半部分に再び目を向け、覚える為にと書かれてある内容を口にしながら実行していく。
「血抜きが終わったら、まず最初に魔石を取り出す。魔石は心臓の中にあります、か。心臓って人間と同じ位置であってるのかな?」
魔物の生体なんて知るはずもないボクは、疑問に思いつつも、[心具]の剣を取り出し、ゴブリンの胸もとを切り開く。
切り開かれた胸元からは、血抜きが甘かったのか血があふれ始め、その匂いにボクは吐きそうになるが、何とか我慢…は出来ずに、草むらにダッシュしてリバース。
「(あ゛~、今日街に戻ったらマスクか口と鼻を隠す布を絶対に買わないと…っ!)」
何度かリバースしたところで、何とか気持ちを落ち着かせ、再び解体作業を開始する。
まずは切り開いた胸もとで心臓を見つけ出し、更にその心臓を切り開いて魔石を取り出す。
これで最低限の儲けは手に入ったと油断したところで、再び草むらにダッシュし、再びリバース。
といっても、出るのはもう胃液だけだ。
そんなこんなで、アミルさんのメモを見つつ、更には胃液リバースを繰り返しながらも、何とか偽オークを部位毎に切り分けていき、合計2時間かけて漸く1匹の解体を終える事が出来たのだった。
ところでこの作品、メインヒロインはいつになれば出るんだろうか…
そんな疑問と戦いつつ、41話目に取り掛かる今日この頃。




