第037話 練習が必要のようだ
此方に気付き、奇声を上げながら襲い掛かってくるゴブリンから逃げつつ、[心具]を弓から剣へと切り替えようとするが、慌てているせいでうまく出来ず、余計に慌ててしまう。
「くそう!仕方ない、このまま戦うしかないか!」
剣で戦う事を諦め、逃げながらも矢を取り出して矢を射れる状態にし、背後の様子を伺う。
ボクとゴブリンの距離は約5m程しかない。
これでは立ち止まって振り返ればすぐに追いつかれてしまう。
なので少し引き離すとしよう。
いつでも射れるように弓を引いたまま走っているとはいえ、ステータス的にはボクの方が高いから可能なはずだ。
そう思ってスピードを上げようとした瞬間、ボクの鼻が獣の臭いに気付く。
「(この臭いは…フォレストドックだな。位置は50m程先か)」
正確にはやや左手前方50m程だ。
「(このまま進んだらフォレストドックにまで気づかれるな)」
前方のフォレストドックや追いかけて来ているゴブリンも、単体ならば勝てるのだが、両方一緒、しかも挟み撃ち状態になると流石に危険だ。
これは逃げる方向を変えるべきだろう。
そう決めた瞬間、右手方向へと進路を変え、更にスピードを上げる。
背後の確認をしてみると、追いかけてきているゴブリンとの距離は凡そ10m程になっていた。
これだけ離れていれば少しは狙いを定める余裕はありそうだ。
ずっと矢を引いたまま走っていたボクは、急ブレーキをかけると同時に振り返り、狙いを定める。
ボクからゴブリンまでの射線上に障害となるものは何もなく、視界は良好だ。
ゴブリンは弓を構えるボクの姿を見ても尚、まっすぐ向かって来ている。
避ける自信があるのか、はたまた当たらないと思っているのかは分からない。
「今度こそ!」
ゴブリンとの距離が3m程まで縮まったところで、ボクは指を離した。
「ギャァァァ!!」
ボクの手から放たれた矢は、狙っていた胴体にではなく右目に刺さり、ゴブリンは奇声を上げながらのたうち回った後、ついには動かなくなった。
念のため弓で動かなくなったゴブリンを突いてみたが、反応はない。
どうやら今の一撃で倒す事が出来たようだ。
狙った場所とは違ったが、もっとダメージが大きくなる目に刺さったのは、幸運によるものだったと言えるだろう。
「遠距離からの攻撃用に弓は使えるけど、これは要練習だな」
今回は無事に倒す事が出来たが、今後の事を考えると練習はしておくべきだと感じ、空いた時間を利用して練習しようと決め、次の獲物を探し始めた。