第357話 もう一つの用事
「お待たせしました」
クラドの街の中央にある詰め所前へとやってきボクは、そこで待っていたルーリア達とディランドの姿を見つけ、声をかける。
そこにボーロン伯爵や騎士の姿はない。
きっと詰め所の中に牢があってそこにでも入れてるのだろう。
「例のゴーストの件、報告してきたのかい?」
「いえ、まだです。とりあえず依頼完了のサインは貰らってきたところです」
そういって依頼完了のサインが入った用紙を見せると、ディランドは冒険者ギルドは詰め所から近いし、今から報告しに行こうと言い、ボク達は冒険者ギルドへと向かって歩き始める。
冒険者ギルドに到着すると、受付で暇そうに座っていたアミルの姿を見つけ、そこで依頼完了サインの用紙を提出。
サクッと処理してもらい、報酬を受け取る事で依頼は完了となった。
「他にこの町でしておく事はあるのかい?」
「そうですね。とりあえず連絡を取っておきたい人達が居ます」
ゴースト除霊の依頼は終わったが、次はファイアドレイク退治に向かわなければならない。
つまり、また暫くクラドの街を離れるという事なので、出来る限り解体作業員達とは連絡を取っておきたい。
「そうか。その人達と連絡とるのに時間が掛かるのかい?」
「いえ、いつでも連絡取れると思いますよ?」
「ならそちらの用件も済ませに行っておこう」
「色々と優先させてもらって助かります」
こちらの都合を優先させてくれるディランドに礼を言い、ボク達はアミルに挨拶をして冒険者ギルドを後にする。
向かう先は我が家の近くにあるスラム街だ。
付いてきているディランドは、周りの風景が変わった瞬間から辺りの様子を伺いつつも「こんなところに何を?」という疑問を呟いている。
別にそれはボク達に対して質問しているのではないようだったのだが、この地区の中に魔物の解体作業を頼む人達がおり、そのリーダーとなるまとめ役の下へ向かっていると答えた。
するとその内容が気になったのか、ディランドはもう少し詳しく聞いてもいいかい?と言うので、王都に向かう際に時間があるのでその時にでもお話しますと伝え、さらに奥へと進む。
それから5分程進んだところで、目的地であるローの家に到着。
扉をノックすると中から「入っていいぞー」と返事が来たので、建物内に入らせてもらうと、ローはボク達の姿を見て立ち上がり「戻ってきてたのか」と、両手を広げながら歓迎してくれた。
「ん?見ねぇ顔が居るな」
ボク達の後ろから入って来たディランドを見たローは、途中で足を止め、その表情に少し警戒の色を見せる。
そんなローにボクはディランドの紹介や、今の状況について話した。
「とまぁそんな訳で、また暫くクラドを離れないといけなくなったんだ」
「そうか…戻ってくるのは暫く先になりそうなのか?」
そう口にしたローは心配そうな表情を見せるのだが、十中八九その理由は解体作業と食料の事だろう。
そこで、一応出発前にそれなりの食糧を用意し、数日毎に解体作業用の魔物は渡しに来るつもりだと伝えると、ローはホッとしていた。
やはり食糧事情の心配だったようだ。
「出来る事ならそんな面倒な事をしなくてもいいようにさっさと終わらせてしまいたいんだけどね」
「その件だけど、多分王都に戻ったらすぐにわかると思いますよ?」
はぁ、とため息交じりに零した言葉に、ディランドはそんな気になる言葉を口にするのだった。




