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第032話 違い

いつもより少しだけ、ほんの少しだけ長めです。

(たった500文字程度ですが)


 紹介してもらったお店の料理とは、とても美味しく、量が多くて値段が安いという店だった。

 アミルさん曰く、このお店は街で2番目(・・・)に有名所らしい。


 もう少し早い時間帯(大体18時から19時の間)だと客が集中してしまい、下手をすると店前に並ぶ事になっていたかもしれないと言うのだが、ボク達が店に来たのは幸いにもその時間帯が過ぎた後だった為、すぐにテーブルに着く事が出来たのだ。


 まぁ、それでもすべてのテーブルが埋まる程のお客は居た。


 頼んだ料理は冒険者セットというものがあったので、それを頼んでみた。

 お値段なんと銀貨3枚(300ルース)だ。


 宿代が1泊銀貨4枚だった事を考えると、安くないのでは?と思うのだが、その考えは運ばれてきた料理を見る事で、あっさりと意見はひっくり返る。


 目の前に並んだのは、ナポリタン風なスパゲティにかなり分厚い肉のステーキ。

 それにポテトサラダと野菜のスープだったのだが、そのどれもが明らかに1人前の量じゃなかったのだ。

 確かにこれだけの量に対し、銀貨3枚というのなら安い方だろう。


 注文する際、アミルさんは「ホントにそれでいいの?すごい量よ?」と言ってたが、まさかこれほどだったとは…


 因みにアミルさんの頼んだ料理は、鶏肉のスープにシーザーサラダで、合計のお値段は銀貨1枚である。


 そんな二人の料理の差を見比べながら、アミルさんの言葉に従っていれば良かったと後悔しつつ、フォークを片手に、目の前に並ぶ料理に挑んだ。

 食べきれる気はしなかったのだが、それでも限界までは頑張ろう、そんな気持ちで最初にステーキを一切れ、口へと放り込んだ。


「美味っ!何これ!?こんなの初めて食べたよ!」


 噛めば噛む程溢れる肉汁と、その素材の味に感動するなり、ボクはすぐに次の料理へと手を伸ばしていく。

 途中、アミルさんとは目の前の料理の事や、アミルさんの何気ない日常の事等を聞きつつ、美味しく、楽しい一時は過ぎていく。


 そして気が付けばボクは、目の前にあった料理の約7割程を食べ終え、ついに限界を迎えてしまう。

 正直よくこれだけ食べれたものだと自分でも驚いている。

 お腹は見た目にもパンパンである。


「大丈夫ですか?あまり無理して食べないほうが良いですよ?」


「ちょっと…いえ、もう無理そうです。すみません、せっかくアミルさんが忠告してくれてたのに…」


 そう答えるが、今のボクの姿は、誰がどう見ても限界の雰囲気を醸し出している。

 そんなボクの姿に、アミルさんは苦笑いをしながら言う。


「お店の方に言えば残ってる分を持ち帰れるように包んでもらえますから、お願いしましょうか」


「はい」


 その後、お店の人を呼んで持ち帰り用にと頼み、準備出来たところでボク達は料金を支払い、店を出た。

 もちろん支払いは全部ボクに出させてもらった。


「アミルさん、今日はいいお店を紹介してくれて、ありがとうございました」


「いえ、寧ろ私の方こそ、今夜はお礼をするつもりだったのに、逆に奢ってもらっちゃって、ホント、ありがとうございました」


 そう言って頭を下げたアミルさんに対し、ボクは慌てて「これくらい当然ですから!気にしないで良いんですよ!」と言うと、アミルさんは頭を上げ、フフッっと笑い、笑顔を見せてくれた。


「あ!そうそう、ユウキさん、コレを」


 ふと何か思い出した様子のアミルさんは、手に持っていた小さなバックの中から一枚の紙を取り出し、ボクへと手渡す。

 受け取って中を見てみると、そこには魔物の解体手順が掛かれていた。


「ありがとうございます!アミルさん」


「前にも言いましたが、私自身、解体はした事がないので知識だけとなっています。なので、もしそれでもわからない様であれば、少々元手は掛かってしまいますが、ギルドに依頼を出し、実際に解体をしているところを見て覚える方が良いかもしれません」


「なるほど、因みにギルドに依頼する場合の報酬ってどれくらい必要になります?」


 依頼を出す予定は今のところないけど、一応聞いておこうと思い、質問してみた。


「依頼する魔物によってその額は変わりますが、確かユウキさんが私に聞いたオークを例に挙げるとすれば、大体500ルース位は必要になると思います」


「オークで500ルースですか…あ!因みにフォレストドックだとどうでしょう?」


 レベル1のボクですら倒せるランクの魔物なら安くなるのでは?という考えから、参考程度のつもりで再び質問してみた。


「フォレストドックを、ですか?出来ない事はありませんが、魔物以外(・・・・)の解体依頼では、ユウキさんが損をするだけになってしまいますよ?」


「え?ちょっと待ってください、フォレストドックって魔物じゃなかったんですか!?」


 新たな情報に驚いたボクは、ついそう聞き返していた。

 声に出した瞬間、もしかしたら一般常識だったかも?という不安がよぎったのだが、アミルさんの表情に驚いている様子も、不思議そうにする様子もないので安心だ。


 まぁ、そう見えるだけで、本当は内心で不審に思われてる可能性も否定はできないのだが…


「違いますよ。魔物とは、体内に魔石を持つ生物の事であり、魔石を持たず、人に危害を加える生物は、害敵と呼称されます」


「なるほど、そうだったのですか。勉強になりました」


 アミルさんの内心については真実がどうであれ、こうして新たな情報を知る事が出来たので、素直にお礼を言っておく。


「さて、それでは私はそろそろお暇させていただきますね。」


 そう言って帰ろうとしたアミルさんだったが、既に辺りは暗く、女性の一人歩きは危険だろうと思い家まで送ろうかと提案したのだが、アミルさんから帰って来たのは「私、こう見えてもユウキさんよりは強いんですよ?」という言葉と、とても良い笑顔だった。


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