第312話 買い物とは疲れるものである
「まさかドーミル伯爵家当主様がねぇ…人間追い詰められたら何するか分からないものだ」
「まぁ、可愛い一人娘が死刑になると聞かされれば、分からないでもないっすけどねぇ」
「もし仮にクーデターが起こらなかったとしても、バーゼア様が死刑になった時点でドーミル伯爵家は王家への忠誠が無くなっていたでしょうね」
「「たしかに」っすね」
お城に泊まったその翌日、ボク達は謁見の間にて王様から今回の報酬を頂き、その際に昨夜の騒動について質問してみた。
その質問に帰って来た答えは、どうやらバーゼアの親であるサブジアルが摑まっている娘の救出をすべく、武装してお城の中で騒動を起こしたそうだ。
が、バーゼアの父親一人が騒動を起こしたところでどうにかなる訳もなく、騒動が起こってから2時間後、バーゼアが捕らえられていた牢の前にてサブジアルは取り押さえられたそうだ。
今では二人は隣同士の牢に入れられ、明日の明朝、二人の死刑が執行されるらしい。
そんな昨夜の話を聞き終えた後、この度の一件に協力した事に対してお礼を言われ、ボク達はお役御免となる。
それすなわち、ボク達はこれ以上お城に居る理由も無くなったという事なので、お城を後にし、王様から聞いた内容について話ながら第2の我が家へと向かい歩いていた。
「ところでユウキ様、今後の予定はどうするの?」
「ん~。シャルロット様の件が予想よりもかなり早く終わったし、クラドに戻ろうか」
「それが良いと思うわ。流石にアミルさんに連絡を取らないままだから、きっと心配されてると思うわよ?」
クミが答えたその言葉に、ボクはハッとなる。
シャルロット様の護衛をすると決まった時点で、アミルにはギルド経由で帰るのが更に遅れると連絡を入れておけば良かったものを、していなかったのだ。
その事を今、クミのおかげで思い出したボクは足を止めて振り返る。
「とりあえず王都での予定はもう無いし、今更ギルド経由で連絡入れるよりも一度クラドに戻るって事でどうかな?」
そう提案すると、皆からも不満の無い様子で賛成という意見が戻って来たので、今日はこの後旅支度をして、明日の朝クラドに向けて出発するという事に決まり、早速食料や旅に必要な道具を買い足しに向かった。
必要と思われる物自体は時間を掛ける事無く買い終えたのだが、それ以外にかなりの時間を費やした。
因みにその内容は、クラドで心配させてしまっているであろうアミルへのお土産選びや、折角王都に来たのだからとクロエとクミは服やアクセサリー等を物色したというものだ。
ちょっとだけ買い物をしたいというから付き添う事にしたのだが、まさか昼から陽が落ち始めるまで続くとは思わなかった。
確かに女性の買い物は時間が掛かるものだと知ってはいたのだが、予想していた2時間を過ぎても終わる気配はなかった。
流石に疲れを感じ始めたボクとマルクの口数は減り、3時間が経過した頃にはグッタリしていたのだ。
ボクはこの時、ルーリアとクロエには悪いがデート以外においては出来るだけ自分達だけ、もしくはクミを連れて買い物に行ってもらうかな、と考えていた。
そんなこんなで買い物も終わり、第2の我が家へと帰って来たところでルーリアに軽めの夕食をお願いし、食べ追た後は食休みをとった後に早めの睡眠に就いたのだった。




