第031話 待ち合わせ
風呂上りの一杯をグビッと飲み干した後、洗濯したての服に着替え、部屋へと戻っていた。
因みに洗濯の料金は宿代に含まれており、朝のうちに部屋に置かれている洗濯籠に入れておけば、ミラノさんがしてくれるのだ。
ただ、朝の洗濯物の回収時以外で頼むと別料金が発生するので、出し忘れには注意が必要だ。
「ボクの服って全部で3着しかないんだよな」
明日の朝に回収してもらう予定の服を洗濯籠に服を全て放り込みながら、そんな事を口にしていた。
そしてソレらを見ながら、ふと思う。
いつかお金に余裕が出来たら余所行き用の服を買っておこう。
ただ、ボクは服を選ぶセンスに自信がないので、選ぶ際は誰か、もしくはお店の人と相談する必要があるのだが、と。
そんな自信の無いボクではあるが、今着ている服は白のシャツに茶色のベスト、そして緑色のズボンという、街中で過ごす際に着る用としているセットであり、個人的にはそう悪くない見た目だと思っている。
…悪く、ないよね?
少し不安は残っているが、時計を見るとそろそろ出発しなければならない時間となっていた。
まぁ、今更どう思おうと、他に着替える服も無いのでどうしようもないので、これ以上考えるのを止め、部屋を後にした。
宿からギルドまでは、普通に歩けば20分程で着くのだが、それでは待ち合わせの時刻ギリギリになる。
そんな訳で、多少早歩きをする事にし、目的地には予定より5分早く到着する事が出来た。
辺りを見回してみるが、アミルさんの姿は見えない。
どうやらアミルさんより先に来れたようで良かった。
いくら待ち合わせ時間より早いとはいえ、先に来て待たせてしまってたら、なんか申し訳なく思えるしね。
そんな事を思ってから2分程後、アミルさんが到着する。
「お待たせしました」
「いえいえ、ボクもつい先ほど着いたばかりですよ」
待ち合わせで定番とも言える受け答えが発生する。
まさかこんなやり取りをする日が来るなんて思いもしなかったな。
そもそも、あっちの世界で異性と待ち合わせをするような機会は無かったし。
…別にモテなかったわけじゃないよ?ただ出会いとかが無かっただけだし!
って、ボクは誰に言い訳してるんだろ?
まぁ、いいや。
それよりもこの後はどうしたらいいんだろ?
デートという訳ではないのだが、それっぽい現状に、この後どうするべきなのかと戸惑ってしまう。
こんな経験がない上に、ボクはこの街にきて間もない事もあり、あまり詳しくは無い。
そんな心配をしていたのだが、それは杞憂に終わる。
「さぁ、行きましょう!この近くにオススメの店があるんですよ」
次にこういう事があったら、ボクの方からエスコート出来るようにならないとな。
まぁ、次の機会があれば、の話だけど。
右手の人差し指で頭を掻きながらそんな事を思うと、ボクは先に歩き始めたアミルさんの隣へ駆け寄った。