第029話 頼りになるアミルさん
さて、あのオークの死体をどうしよう…
貰えたのはうれしいのだが、何処をどう解体すればいいのかサッパリわからない。
「ん~、とりあえずアイテムボックスに入れとけば良いか。解体の仕方はギルドに戻ってからアミルさんに聞けばいいだろ」
と独り言を呟いたところで、ふと今夜はそのアミルさんと一緒に食事をする予定だったことを思い出し、ボクは急いでオークの死体を収納の腕輪へと取り込む。
そして取り込み終えたところで、既に倒し、死体を放置したままのフォレストドックの事も思い出し、放置した場所へと急いだ。
オークから逃げ回る時、森の中をあちこち走り回っていたのだがフォレストドックの死体を集めていた場所への戻り方は分かる。
追いかけて来たオークの匂いが走って来たルートに残っているからだ。
一応自分の匂いもわかるのだが、それよりもオークの方が匂いが強いので、ルートが分かりやすかった。
そうして森の中を移動する事数分、偶然5匹目のフォレストドックを発見し、サックリと倒して依頼を達成。
死体は収納の腕輪の中へとしまう。
もう死体の焼却は明日する事にした。
流石に残りの4匹の死体がある場所に戻り、それから焼いてたら時間が掛かってしまう。
今夜はアミルさんと食事をする約束があるから、出来ればその前にお風呂に入ってサッパリしておきたい。
という事はつまり、そろそろ戻らなければならない。
「少し急ごう」
駆け足程度での移動から更にスピードを上げ、ボクは匂いの痕跡を辿りながら目的地へと進む。
もちろん周囲の警戒は怠らずに、だ。
それから約2時間後、ボクはフォレストドックの死体を回収し終えて街に戻り、ギルドへとやって来ていた。
現在収納の腕輪の中にはオークの死体2つと、フォレストドックの死体8つが収まっている。
討伐数よりオーバーしている分は、森の中で迷子になりかけながら走っている途中で見つけた分だ。
そういえば、今日の狩り始め頃は嘔吐いたりしていたのだが、帰り道では慣れて来たのか、だいぶマシにはなっていたな。
「お疲れさまでした、こちらが報酬になります」
ギルドの受付にてフォレストドックの討伐確認を終えると、アミルさんが報酬の銀板1枚と銀貨5枚が差し出され、ボクは礼を言いながらそれを受け取った。
「所で今夜の予定なのですが、今日の仕事が6時で終わりになりますので…そうですね、少し準備する時間も欲しいので、7時半頃にギルド前で待ち合わせというのはどうでしょうか?」
業務以外の会話だからだろうか?アミルさんは少し声を小さくして話しかけて来る。
それでもしっかりとボクには聞こえており、了解の旨を伝えておいた。
約束の時間まで、後2時間程だ。
今から宿に戻って風呂に入る時間は十分にある。
そう考えたところで、ふと解体の件について思い出し、アミルさんに尋ねてみる事にした。
「あの、オークの解体ってどういう風にすればいいんでしょう?」
ボクの口からでたオークの解体という言葉に、アミルさんは少し驚いた様子をみせたが、すぐにいつもの表情へと戻る。
「実際に解体はした事がありませんが、手順の知識はありますので、後で紙に纏めたものをお渡ししますね」
「ありがとうございます」
よし、手順さえわかれば、後はどうにか出来るはずだ。
明日はアミルさんが書き纏めてくれたものを見ながら、実際にやってみるとしよう。
こうして明日の予定も決まったところで「ではまた後で」とアミルさんに一声かけ、ボクはギルドを後にし、宿へと戻った。




