第267話 ソレは岩ではなかった
「あれ?これってもしかして、岩じゃ、ない?」
作戦との実行と共にルーリアと共に駆け出したボクは、見つからないように大回りをし、ジャイアントシックルの手前にあった巨大岩の傍へとやって来たのだが、近くにきて触れてみるとソレが岩では無い事がわかった。
触れた手のひらに感じる暖かな温度を感じ、その表面は軽く押しただけでグニュっとへこんだ。
見た目的には完全に岩なのだが、これは一体なんのか?
とりあえず試しに収納してみようとするが、出来なかった。
その瞬間、すごく嫌な予感が頭を過り、その可能性が街が射であればと思いながら、目の前にあるソレを鑑定してみた。
________
ジャイアントシックルの卵
一見、岩の様に見えるが、その実はジャイアントシックルの卵である。
この卵には100匹程の子が入っており、もう間もなく生まれてくる。
誕生まで残り10分
________
表示されたその文字を見た瞬間、ボクは一目散にその場から逃げた。
まさか予想した通りだったとは…
これではもう計画は実行不可能となってしまい、更には子が生まれそうな卵の傍に居るのは危険なだけだと判断したボクは、ルーリアの元へと走り、一度撤退だと伝えて一緒にマルクの元へと走った。
「急に戻って来てどうしたんですか?」
「説明は後!とりあえず安全そうな場所まで逃げるよ!」
「え?ええ?」
状況が全く分からないマルクだったが、またすぐに走り出したボク達の後を追いかけるように走り始めた。
チラリとジャイアントシックルの居る方を見てみるが追いかけてくる様子はない。
きっとあの場所で卵を守っているから動けないのだろう。
そんな風に思いながらもジャイアントシックルの視界に入らない場所まで離れた後、二人に例の岩だと思っていたモノについて説明すると、二人は衝撃を受けたように驚き、更に生まれるまで残り10分を切っていると伝えると、マルクが慌て始めた。
「落ち着いて。もしかしたらなんとかなるかもしれないから」
「ホントに?」
疑うかのような視線を向けるマルクに、コクリと頷く。
「アレをどうにか出来る可能性があるとすれば、ユウキ様の魔法くらいでしょうけど、どんな魔法を使うつもりなの?」
「以前にビターホーネット相手に使った魔法があるだろ?アレの更に強化版ってところかな?」
ボクの答えを聞いたルーリアは「アレの強化版?」と口にしながら眉を顰める。
そしてその時の事を知らないマルクは、何のことだかわからず首をかしげていた。
「多分コレならあの卵ごとジャイアントシックルも倒せると思う」
ボクが思い浮かべている魔法は、きっと火力的には申し分ないはずだ。
但しその魔法には魔力の大半を使う予定であり、使用した後はしばらくまともに動くことは出来なくなるだろう。
成功すれば良いのだが、失敗した時が問題だ。
二人にその事を話すと、ルーリアは「その時は私がユウキ様を運んであげるから気にしなくてもいいわよ」と笑いながら答えた。
どうやら後の事を心配しているボクを励ましてくれているようだ。
「ありがとう。よし!それじゃあ早速やるか!」
ルーリアのおかげで後ろ向きな考えを捨てれたボクは、絶対に成功させるという気持ちで魔法の射程範囲に入る場所まで移動し始めたのだった。




