第242話 上位種認定されたゴブリン
お目当てのゴブリンを逃がさぬようにと気を使ってくれたナツキ一家が、ボク達よりも先にレイの背から飛び降り、ゴブリンを取り囲む。
ボクもすぐに後を追いたい気持ちはあるのだが、今居るのは上空50m付近であり、飛び降り慣れていないボクとしては、怖くて後を追う事なんて出来やしない。
そもそも、今のボクのレベルは1に戻っているので、この高さから飛び降りたら死ぬ気がする。
もし身体強化を使って飛んだとしても、よくて瀕死レベルといったところだろう。
地上では、先に飛び降りたナツキ達がゴブリンを牽制し、逃げれないようにしてくれているので、このままレイに地上まで下りてもらう事に。
「ルナの魔法で受け止めてもらえるんだから、ユウキもすぐに飛び降りてくればよかったのに」
地上に降り立つなり、ナツキはコチラへと振り返りそう口にしたのだが、そんな事一言も聞いた覚えもないと抗議すると、ナツキはつい先ほどの事を思い返し始め、すぐに口にしていない事を認めた。
確かこの人、記憶力はとてつもなく良くなっているはずなのだが…と思いながらも、ボクはもう一つの理由を声高らかに言い放つ。
「あんな高さからとか嫌ですよ!怖いですもん!」
「そうか?」
そうか?って…
この人、しょっちゅう大空を飛んでるせいで感覚が狂ってしまっているんじゃないだろうか?
そんな風に思いながらもボクは[心具]を手に取ると、隣りに立っていたルーリアも自分の剣を構え、ゴブリンと対峙する。
「皆、ユウキが戦いやすいように、そのまま少し下がろうか」
ナツキの指示に、周りを取り囲んでいた女性陣が取り囲む輪を広げる様に後ろに下がり、その様子を見ていたゴブリンはその意味を理解したのか、弓を手に取り、ボク達二人だけへと戦意を向けて来た。
やはりこいつ、ふつうのゴブリンよりも知能が高い。
レベルが1になってしまっているが、それでもステータスはあの時よりも少し低い程度はある。
だが、今はあの時と違い身体強化も出来るし、武器の性能も上がっているので大丈夫だろう。
そんな風に高を括りながらも、まずは鑑定スキルを使う事に。
相手の情報を知る事が勝率をあげる事に繋がるのだ。
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ヒールゴブリン
レベル29
力 75
体力 71
魔力 35
精神 23
素早さ 70
弱点《状態異常》
状態異常に耐性は全く無いが、回復力が高いので注意が必要。
毒を使うのならかなり強力なものが必要となる。
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「(ヒール、ゴブリン?)」
最初に名前を見た瞬間、回復する事の出来るゴブリンなのだろうかと思ったのだが、表示されているそこにはそれらしいスキルは無い。
その事に何故?と疑問を抱くのだが、すぐにHealではなく、Heelという意味なのだと気付き、回復系のスキルが無い事にも納得出来たのだが、それはそれでもう一つの疑問が浮かぶ。
それは、何故こいつの名前には悪役という意味を持つ言葉が付いたいるのだろうか?という事だ。
そもそもヒールではなく、evilでいいのでは?
「(って、今はそんな事を考えなくていいか、とりあえず戦いに集中しないと)」
自分のステータス的にも油断は危険だと今更思い、ヒールゴブリンとの戦いに意識を集中させ、身体強化を発動する。
すると不思議な事に、ステータスが下がっているはずなのに下がる前と同等の力がある様に感じる。
戦うよりも先に試しておくべきだったと後悔しながらも、ボクは[心具]を構え直し、ヒールゴブリンに向かっていくだった。




