第023話 戦い,そしてその手に残ったもの
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3時間程森を彷徨い続け、漸く薬草を3束分見つける事が出来たのだが、なぜかアーリンの花を未だに見つける事が出来なかった。
途中、あのデカい犬を遠くに見かける事が何度かあったのだが、探し物を先に終わらせておきたいからと、戦いは避けるようにして来た。
我ながら、よく相手に見つからなかったものだと感心する。
もしかしてボクって前世は忍びの者だったのだろうか?
あ、違うな。この世界に来る前に一度死んでるから、前世は只の会社員だ。
って、そんな事はどうでも良い。それよりも今はアーリンの花を見つけなければ。
…とはいっても、まだ今日の重要事項が残っているから時間の余裕があまり無い。
多分、後3時間もしない内に、空は夕焼け色に染まってしまう事だろう。
別に正規の依頼ではないので無理に探す必要はないかもしれないが、出来れば持って帰ってあげたい。
しかし、一体どこにあるのだろうか?もしかしてどこかで見落とした?それともこの一帯には無いのか?
そのどちらかは分からないが、とりあえずもう少し範囲を広げて探してみるとしよう。
……
…
それから更に1時間程経った頃、ついにアーリンの花を数メートル程先に見つける事が出来た。
発見した場所は街の東側付近であり、遠くに街を囲う石壁が見えているところだ。
さて、アレをさっさと回収したいところだが、そういう訳にもいかない。
というのも、目的の物とボクの間に、一匹の魔物が居るからだ。
その魔物とは、この森で何度も見かけて来たあのデカい犬だ。
流石にこれはもう戦わなければならないだろうし、睨み合っている今のうちにさっさと鑑定してみるとしよう。
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フォレストドック
レベル1
力 3
体力 4
魔力 1
精神 1
素早さ 5
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どうやらこいつの名前はフォレストドックというらしい。
ウルフじゃないのが残念だ。
もしこいつがウルフだったら、[心具]の成長条件の一つを満たすことが出来たのだが…
「って、今はそんな事どうでも良いか。それよりも、このくらいの強さなら初の戦闘には丁度いい相手かもな」
そう言って右手に魔力を込め、左手の収納の腕輪に触れながら剣が欲しいと思いながら[心具]を取り出す。
魔力の扱いについては、昨日、半日かけて行った魔法の練習のおかげで、多少は上手く扱えるようになっている。
とは言っても、まだ魔力を流すという段階までであり、魔法を発動させるのは、まだ少し手間取ってしまうレベルだ。
ボクの手に鉄製のロングソードが現れると同時に、フォレストドックは低く唸り始め、前足を若干曲げる。
どう見てもアレは突撃してくる体制だろう。
そんな殺るき満々な獣に対し、ボクはロングソードを握るが少し震えていた。
相手は魔物。そして今この時、殺らなければ殺られるという現実が今、目の前にあるのだ。
ステータスは自分の方が上だし、これは生きる為にもしかたのない事。
自分の鼓動が聞こえそうな程に、心臓がバクバクと鳴る中、そんな風に必死に自分に言い聞かせながら、フォレストドックを睨みつつ、一度大きく息を吐き出す。
そして灰の中の空気を全部吐き出せたところで、次は一気に空気を吸い込み、同時に剣を握る手に力を籠めた。
「覚悟は既にして来たんだ!だからもうこれ以上は考えない!」
そのセリフと共に、ボクは勢いよく地を蹴り、フォレストドックへと剣を振るう。
レベル1とはいえ、通常よりもステータスが高いおかげか、振り下ろした剣は避けようとしていたフォレストドックの横腹を深々と切り裂き、フォレストドックはキャインと甲高い鳴き声を上げると共に地に倒れ、動かなくなった。
「倒した…のか…」
フォレストドックの死体を前に、ボクは荒い呼吸を繰り返す。
手にはまだ斬った時の感触が残ったままだ。
時間が経つにつれ、目の前にあるその死体からは血がどんどんと流れ始め、辺り一帯にその匂いが漂い始める。
獣人となったボクの鼻は、人間の時よりも更に嗅覚が鋭くなている。
おかげで、その強烈な血の匂いを嗅ぎ取ってしまい、ボクは胃の中の物を吐き出す事となった。




