第227話 報告は…完了だな
次の話を書いている途中で、227話でティアミスの存在が途中から消えていた事にふと気づき、数か所程訂正しました。
あと、後書きも訂正しました。
コンコン
「どうぞ入って」
扉の中から聞こえて来た許可を聞き、扉を開いたアミルに勧められるままに俺とティアミスはギルドマスターの部屋へと足を踏み入れた。
「思ってた以上に早かったね。何があったのか聞かせてもらおうか?」
実は、今回の討伐において俺は報告の義務を任せられていた。
そんな俺が予想以上に早く帰って来たものだからか、部屋の奥にある机に座っていたモーラは驚いた様子を見せたが、すぐにその表情は真剣なものへと変わる。
「まず討伐の結果だが、討伐は完了したも同然との事だ」
「完了したも同然との事?それはどういう事だい?」
俺のハッキリとしない報告に、ギルドマスターが追及してくる。
まぁ、それは当然とも言える反応であり、予想はしていた。
そこで俺は、討伐に向かう前、つまり、ナツキという人物が複数の女性を連れてギルドにやって来たところから順に話をしていった。
「つまりその女ったらしと思っていた男の子供達が、暇つぶしと称してリザード種の集落を襲ったのが今回の原因?しかもそれによって西の崖を下りて来たリザード種達は子供たちの後始末としてその男がした、と?」
「まぁ、纏めるとそういう事だ。ただ、直接討伐している所や戦っている所を見た訳じゃなねぇから、信憑性は無いに等しいかもしれないが、ユウキに言わせるとナツキという男はこの世界の誰よりも強い、という事らしく、後始末を任せれば確実だそうだ。まぁ、俺も流石に信じられねぇから、一応この後にもう一度確認には向かうつもりだ」
「その時は私も一緒に行っていいかしら?」
協力者が多ければそれだけ確認作業が捗るというもの。
俺はティアミスの申し出を有難く受け取る事にし「おう、頼むわ」と答えた。
「…ふむ。ユウキがそれほど信頼する男だと言うのなら、あながち嘘と言いきれないかもしれないねぇ…まぁどっちにしろお前さんが確認に行ってくれるのなら、その報告を待つとしようかね」
「だな。まぁ、どうせならその時の報告の内容次第で理由を考えて、直接あってみたらいいんじゃねぇか?」
本当に討伐していたら礼と報酬を与えるとか言えば来てくれるだろ。
もし討伐せずに放置してたとするなら、それはそれでいくらでも理由は作れるだろうしな。
ギルドマスターも俺と同じ事を考えたのか、ニヤリと口端を吊り上げた。
「そうしてみるかね」
ギルドマスターがそう口にすると、次の瞬間カチャリという音が聞こえ、音のする方へと視線を向けると、そこには森をイメージさせるかのような緑色をした長い髪の少女が、ソーサーにティーカップを置いていた。
「(!?、おかしい、そこには今まで誰もいなかったはず!一体いつの間に!?)」
突然現れたというべきその少女に驚いた俺は、何時からいたのか分からないその少女が実はギルドマスターの知り合いなのかも?と思い視線を向けてみるが、そこには驚きの表情を浮かべつつ立ち上がり、臨戦態勢のギルドマスターの姿があった。
どうやら知り合いではないらしい。
もちろんティアミスの知り合いでもないらしく、彼女も俺の隣で臨戦態勢をとっている。
「落ち着いてください。別に貴方達に危害を加えるつもりはありませんから」
緑髪の少女はニコリと笑顔をギルドマスターに向けながらそう口にすると、ギルドマスターはゆっくりとイスに腰を下ろした。
一見、臨戦態勢を解除したようにも見えるが、一切気を抜いた気配はしない。
、
「ではどういった用件かな?お嬢ちゃん」
相手の出方を伺うかのように、ギルドマスターが問いただすと、少女はスッと立ち上がり、ギルドマスターの方へと身体を向ける。
「トト様達の時間を邪魔されるのが困るので、ちょっとだけ貴方達の記憶を弄らせていただきます」
「トト様?トト様とは一体…」
少女の言葉にティアミスがそう問いただそうとした瞬間、強烈な眠気に襲われるかのように意識が遠のき始めるのだが、数秒経ったところでハッとなる。
「(今、一瞬意識が飛びそうに…)」
立ったまま意識が飛びかけるとか、俺は疲れているのかもしれない。
隣を見てみると、ティアミスも額に手を当てていた。
「なんだか今、ものすごく眠気が…疲れてるのかねぇ。おや?あんた達も眠そうだね?」
ギルドマスターの声に反応して視線を向けると、ギルドマスターもなんだか眠そうな表情をしていた。
「まぁ、とりあえず報告は貰ったし、私も少し休むとするかね」
「そうだな。俺達も今回の報酬を貰ったらさっさと宿に戻って休んだ良さそうだな」
「そうね。私もそうするわ」
こうしてリザードの討伐完了の報告を終えた俺達は、ギルドマスターの部屋を出た後、受付で報酬を受け取って宿へと戻ったのだった。
「記憶の改変は成功ですね。これでもうトト様達が邪魔される事はないでしょう。さぁ速くミールさん達の元に帰らなきゃ!」
記憶を弄ったネクソンとティアミス、そしてギルドマスターの様子を離れた場所に移動して監視していたルナは、これで大丈夫と判断し、ニコニコしながらその場から姿を消すのだった。