第213話 ボンッ!
茂みや木に身を隠しているボク達のすぐ近くで、3匹のゴブリンがグギャグギャという声を上げながら木の実をかじっている。
あの鳴き声?はゴブリン達の言語か何かなのだろうか?
「アイツらは私にやらせてもらうっす」
ゴブリン達の観察をしていると、すぐ近くに居たクロエがそう言いながら茂みから飛び出した。
そんなクロエの声に驚くようにゴブリン達が振り返った。
…ゴブリンの驚いた顔なんて、ある意味レアなものを見たかもしれない。
珍しい光景に立ち尽くすボクだったが、次の瞬間ゴブリン達の身体が吹き飛び、木に激突した。
「ん~、まだ本調子って程じゃないっすねぇ」
不満そうな声が聞こえ、木に激突したゴブリン達から視線をそちらに向けると、クロエは首を傾げながら自分の拳を見つめていた。
もう一度ゴブリン達の方へと視線を戻すと、地面に倒れた状態でピクリとも動かない。
いくらゴブリンが弱い魔物だとしても、一撃で殴り殺せるってだけでその辺の冒険者より強い気がする。
しかし、コレで本調子じゃないって…
「(いや待てよ?身体強化を使えるようになった今なら、ボクでもゴブリン程度なら殴り倒せるか?)」
身体強化を使った戦闘をまだしていないので分からないが、出来るような気はする。
そんな事を考えている内に、ボクの中で試したい気持ちが大きくなって来た。
そして気づけば…
「ねぇ、次に見つけたゴブリンはボクにやらせてもらえない?」
ボクはそんな言葉を口にしていた。
この言葉にボク以外の皆が驚いていたが、特に反対の声も無くボクの意見は通り、次のゴブリンを探し始める事となった。
それから数分程森の中を走り回り、実験台を2体発見。
手にしていた[心具]をしまって身体強化を使用する。
そしてそのまま一気にゴブリンへと肉薄し、思いっきり顔面を殴りつける。
すると次の瞬間、殴りつけたゴブリンの頭部がボンッ!という、ありえない音と共に弾けた。
「え?」
「ぐぎゃ!?」
予想だにしていなかった結果に、ボクともう一匹のゴブリンが同時に驚きの声を上げた。
少し離れた場所では、ルーリアとクミ、そしてマルクの3人も驚いていた。
そんな中、クロエだけは特に驚いた様子もない。
「ユウキさん、驚いてないでもう一匹も倒したほうが良いじゃないっすか?」
冷静なクロエの助言にハッとなり、ボクはすぐさまもう一匹のゴブリンを殴りつけた。
今度は先程の半分程度の力で殴りつけたので、今度は爆発四散する事なく、ゴブリンの身体は吹き飛んで木に激突するのだった。




