第208話 目が覚めたらベットの上だった
今回はクロエ視点です。
「……ん~?」
目が覚めるとそこは見知らぬ家のベッドの上。
「ココは…?確か私は…っ!」
ぼやける意識の中、自分に何があったのかを思い出そうとしながら身体を起こそうとしたその瞬間、頭と左足、そして右腕に激痛が走る。
咄嗟に左手で右腕を押さえると、そこに布らしき手触りがある事に気付いた。
「これは…包帯?…そうっす、私あの時ユウキの一撃をもらって!って、痛ぅ…」
ふと思い出したと同時に勢いよく頭をあげたものだから、再び頭痛に見舞われる。
今度は左手で頭を押さえつつ、私は痛みに耐えながらゆっくりとベッドへ身体を横たえた。
「もしかして私、とんでもない化け物を目覚めさせっちゃったんじゃないっすかねぇ…はぁ」
溜息を吐く私は、気を失う直前の事を思い出していた。
あの時、ルーリアさんが合図をする直前に嫌な予感がし、咄嗟にガードしたおかげで助かった。
これまでに戦って来た経験によって培われたのか、生きる為の本能というべき直感が全力で身を守れと訴えかけて来た気がしたのだ。
もしその直感に従っていなかった場合、私は二度と目を覚ます事が無かったかもしれない。
私の本能、ナイスな指示でしたよ!
自身への賛辞を送りながら、生きてる事を喜んでいると、部屋の扉をノックする音が聞こえて来た。
「はーいっす」
ノックに返事を返すと、開かれた扉の向こうからルーリアさんが部屋へと入って来た。
「(予想はしていたっすけど、やっぱりここはルーリアさん、いや、ユウキさんの家のようっすね)」
身体に走る痛みを我慢しつつ身体を起こし始めると、ルーリアさんは「そのまま横になっていて良いですよ」と言う。
この程度の痛みなら我慢出来るのだけれど、折角なのでお言葉に甘えさせてもらい、私は再び横になった。
「あまり無理をすると、身体も良くならないですからね。それにしても、ホントに良かったわ。このまま目を覚まさなかったらどうしようかと思ってたのよ?」
「心配かけて申し訳ないっす。それとコレ、ルーリアさんがしてくれたんすか?」
腕に巻かれた包帯に触れながら尋ねた所、ルーリアさんはニコリと笑顔を見せ、手当てをしたのは自分ではないと答えた。
じゃあ一体誰が?と思っていると、ルーリアさんが再び口を開き、私の手当をしたのはユウキさんだと言う。
なんでも私はユウキさんの一撃と崖に身体を強く打ち付けたせいでポーションでも回復しきれない程の重体となっていたらしいのだけど、ユウキさんが回復魔法を使ってくれたおかげで何とか現状まで回復することが出来たらしい。
そしてその後、ルーリアさんに背負われながらユウキさんの家へと運んでもらい、そのまま私は3日も寝ていたみたい。
てっきり翌日くらいかと思ってたのに、まさかそんなにも寝てたとは…
「ところで、ユウキさんは今どこに居るんすか?」
手当をしてもらったお礼を直接しようと思い、まずはユウキさんの居場所について聞いてみた所、今はリビングで昼食をとっているらしい。
まだ足も痛むけど、ちょっと我慢すれば移動は出来る。
という訳で…
「ルーリアさん、ちょっと私をユウキさんの所まで連れてってくれないっすか?」
「それ位構わないのだけれど、まだ無理をしない方が良いわよ?」
「分かってるっすけど、やっぱり一言お礼を言っておきたいっすからね。その後は大人しくするっすよ。だからお願いっす」
「…分かったわ」
私の気持ちを汲んでくれたのか、ルーリアさんは少し思考した後、私の願いを聞いてくれたのだった。