第021話 お願いされたのは?
「はぁ~。やっぱり只の鉄製ロングソードか」
無いにも等しいレベルの希望は、当たり前のように気去ったところで、ボクはそう口にしながらも、手に持つシンプルな作りのロングソードの柄をしっかりと握り締め、少しばかり振ってみる。
驚いた事に重さは殆ど感じず、まるで羽の様にとても軽い。
これはこの剣が[心具]だからなのだろうか?
いつか機会があれば普通の剣と比べてみよう、と思っていると、グゥ~とお腹がなり、空腹を訴え始めた。
流石にお昼も食べてないから、もうお腹はペコペコだ。
時間的にそろそろ夕食を食べられる時間だろうし、宿に戻るとしよう。
…ところでこの[心具]どうやってしまえばいいのかな?
[心具]の仕舞い方に少し悩んだ結果、収納の腕輪にアイテムを入れるようにしてみたら右手からロングソードが消えた。
無事に[心具]を消すことが出来たところで、今度こそ宿へと戻り食堂へと向かうと、ミラノさんが先程手伝ってくれたお礼だという事で、夕食のミートスパゲティを少し多めにして出してくれた。
それを食べ終わる頃には、少しお腹がはち切れそうだったけど、味はとても美味しかった。
その後、部屋へと戻ってから少し食後の休憩をし、風呂にゆっくりと入り、十分に温まったところで部屋に戻り、今日はもう寝る事にした。
元の世界ならまだ夜はこれからという時間帯だろうが、この世界では起きててもする事が無い。
何か本でもあれば話は違ってくるだろうが、まだそういった娯楽でお金を使う訳にもいかないのだ。
なのである程度稼げるようになるまでは、早寝早起きをする生活が続くだろう。
そんな訳で、早い時間から眠りに就いたボクは、翌日、外が明るくなるよりも早い時間に目が覚め、まだ起きるには早すぎると2度寝し始めた。
そうして結局ボクが起きたのは、もうすぐお昼になろうかという時間帯になった頃であり、慌てて宿を飛び出し、以前にも買った事のある屋台でオークの肉の串焼きを2本買い、それを朝食代わりに食べながらギルドへと向い歩いていた。
「すみません、この依頼を受けたいのですが」
「Fランク依頼、薬草の採取ですね。ギルドカードの提出をお願いします」
ギルドに着くなり、依頼ボードに貼られていた薬草の採取という依頼書を手に取り、受付に居たアミルさんに提出し、依頼の手続きをしてもらっていた。
Fランク依頼という、駆け出し冒険者用のクエストでありながら、一昨日は森で出会ったティアミスというエルフの少女?の手を借りる結果となってしまったのだが、今はもう魔法も[心具]も使えるようになったのだから、今日こそは一人で達成させるつもりだ。
そんな事を思いながら少しの間手続きが終わるのを待っていると、処理を終えたアミルさんから「頑張ってくださいね」と励ましの言葉と共にボクのギルドカードが差し出される。
ボクはアミルさんに「はい!」とスマイルで答えながらギルドカードを受け取ると、ズボンのポケットに仕舞い込みその場を後にしようとすると、アミルさんがボクを呼び止めた。
「なんです?」
「あの、これは個人的なお願いなのですが、もしよろしければ薬草を探すついでにアーリンの花を4,5本程持ち帰っていただけませんか?勿論お礼は致します」
「分かりました。が、アーリンの花ってどんな花なのでしょう?」
薬草探しのついでに探すくらい訳はないのだが、アーリンなんていう名前の花なんて知る訳もないので、素直に聞いてみる。
以前みたいに一般常識の様な事を聞くのは変かもしれないが、流石に花の事ならば聞いても問題は無いはずだ。
…多分だが。