第206話 練習の成果
「さて、それじゃあクロエの所に行こうか」
翌日、朝食を食べ終えて一休みし終えたところでボクは勢いよく立ち上がりそう口にする。
まだ予定時刻には早いとクミに言われるが、早めに行って少しでも身体強化の練習をしておきたい事を伝えると、「それもそうね」と答えて席を立つ。
その後、ボク達は家を出るなり昨日と同じあの場所へと向かう。
いつもならば町を出る前に串焼きを買ってから行くのだが、今日は屋台によらず、まっすぐ目的地へと向かい、1時間程かけて到着する。
もしかしたらクロエが来てるかもと思い辺りを見回してみるが、やはりそこに姿はない。
まぁ、予定時刻まではまだ1時間以上もあるのだから当然なのだろうが、あのバトル好きっぽい性格から、もしかしたら…と思ったのだ。
もし居たとしたら、練習する時間が無くなっていたかもしれない。
居なくてよかった。
「時間も勿体ないし、始めるか」
そう呟き、ボクは昨日の感覚を思い出しながら練習を始める。
昨日と同じレベルの精度の身体強化は5分程かけて再現する事が出来た後、更に精度を上げるべく、練習に励む。
そうして30分程が経過した。
「昨日よりかはだいぶマシになってるわ。例えるなら…ランクEの冒険者が使うようなレベルかしら?」
確か昨日の時点では冒険者に成り立ての人レベルって言ってたから、それなりには成長しているようだ。
といってもまだまだ精度は悪いようだが…
しかしまぁ、確実に癒えるのは今までのボクよりかは確実に強く慣れているはずだという事だ。
なんせ今までは身体強化無しでやって来たのだ。
そこに精度は兎も角、身体強化が加わるのだから弱くなるはずは無いのだ!
そして今日はソレを試す事が出来るので、内心ワクワクしてたりする。
早くクロエ来ないかな、なんて思いながらも更に練習を続ける。
そしてそこから20分後、クロエがこの場にやって来た。
「あれ?予定よりも早く連れて来たんっすね」
クロエはボクがここに連れてこられたと思っていたようで、ルーリアとクミに向かってそう言うが、二人は首を横に振る。
「ユウキ様が自らここに行こうって言ったのよ。しかも1時間位前に来てたのよ」
「嘘・・でしょ?」
「本当よ」
驚いた表情でボクを見るクロエにクミが答えると クロエは信じられないと呟きながらその目を見開いていた。
「そんなに驚かなくてもいいんじゃないかな?まぁ、仕方ないのかもしれないけどさ…。とりあえずそんな事より、早く試合をしないか?」
ボクの口から試合をしようと聞こえ、クロエは更に驚くのだが、今度はすぐに気を取り直すと、準備運動をさせてくれと言い、前進を解す様に身体を動かせ始めた。
それから少しして、クロエの準備運動も終わりボク達の試合は始まるのだが、身体強化を身に着けたボクは思ってた以上に強くなっていたらしい。
ルーリアによる試合開始の合図と共に突撃するボクだが、クロエはその顔に驚愕の色を浮かべながら咄嗟に手をクロスにして防御態勢をとる。
が、ボクはお構いなしにクロスした腕の中心目掛け、掌底による一撃を入れる。
地のステータスが高いクロエならば大丈夫だろうと思い、加減抜きで打ち出したその一撃だったのだが、ボクの攻撃は容易くクロエの防御を打ち抜き、その体は勢いよく吹き飛んで行き崖に打ち付けられ、クロエはその衝撃で気を失ったらしく、前のめりに地面へと倒れていくのだった。