第002話 作りましょう
あれ?真っ暗で何も見えない?
それになんだろう?体の感覚が、無い?
「あら?気が付かれたのですね?(よかった)」
なんだか優しそうな女性の声だ。
というか、今なんか小声で良かったって…
「気のせいです!」
いや、でも今確かに…って、あれ?今ボク声に出してたっけ?
「いえ、声は出てませんよ?私があなたの考えている事を読み取っているだけです。まぁ、今の貴方では、体が無いのでお話をする事が出来ませんが」
なるほど、異世界にはそういうのが有るんだな…って、ちょっとまって!?
体が無いってどういう事!?ボクは今どうなってんの!?
「お、落ち着いてください。その事については順を追ってご説明致しますから」
まったくもって状況の分からない現状に混乱するボクだが、説明をしてもらえると言う事で一旦考える事を放棄し、無理やり心を落ち着かせる。
そしてボクが落ち着いたと分かったのか、先程から聞こえてくる声の主は「え~ではまず」と、話を始めた。
「自己紹介をしておきます。私はルヴィアートという世界の管理をしている女神、ラケシスと申します」
やっぱり女神様だったんですね。あ、ボクは東 祐樹です。よろしくお願いします。
なんとなく予想してただけに、慌てる事もなくこちらも自己紹介をする。
こうしてお互いの名前と素性がハッキリしたところで、女神ラケシス様に話の続きをお願いする。
「この度、ルヴィアートにあるハルメアという国で行われた、召喚の儀によって貴方は異世界へと召喚される事となりました。
ですが、その召喚の儀で使用された秘術には細工が施されていたのです。因みにその細工の内容は、異世界から勇者となる人物を召喚すると同時に、その召喚された者は強制的に召喚者の奴隷となるというものでした。
流石にこれは見過ごせないと思い、私はその秘術に介入し、転移する途中のユウキさんを私の元へと転移させたのです。が、しかし…」
見えるわけでは無いのだが、女神ラケシス様がすごく言いにくそうにしているのが分る。
そしてそれから3,4秒程沈黙が続いたかと思うと、女神ラケシス様が口を開き、そこから聞こえて来た言葉にボクは唖然とさせられる事となる。
「その転移の際、私のミスでユウキさん身体が消滅。結果、魂だけがこちらに転移したというわけなのです」
そう言えば、足元の光が強くなった時に間違えたとかなんとか聞こえたような気がする。
「本当に申し訳ありません!」
…oh
女神ラケシス様の言葉に衝撃を受けたボクは、心でそう呟くと、あまりの衝撃に意識が薄れていきそうな感覚に陥るのだが、何とか持ち直し、今一番気になる事を尋ねる事にした。
それで?ボクはこれからどうなるんですか?
「既にユウキさんの存在は地球から抹消されてしまっています。なので申し訳ありませんがルヴィアートへと転移してもらう事となります。とは言っても、もちろん召喚の儀をした場所にではなく、別の国で、比較的安全な場所に送りますから、安心してください」
分かりました。
ところで、ボクの身体はどうなるんです?消滅しちゃったんですよね?
「はい。なのでこれからユウキさんの身体を作ろうと思います」
なるほど、流石は女神様だ。
因みにその新しい身体とは、以前と同じ見た目ですか?それとも全くの別物?
「以前と同じにも出来ますが、黒目に黒髪だとルヴィアートでは目立ってしまいますので、申し訳ありませんが多少は変化をつけさせて頂きます」
多少の変化?目と髪の色を変えるって事かな?
まぁ、それはお任せします。
「分かりました。では早速始めようと思います」
女神ラケシス様はそう言うと、ボクの身体作りを始めたのか、辺りは静けさに包まれる。
それから数秒程後、一体ボクの身体はどれくらいで出来るのだろうか?なんて思った瞬間、「出来ました」と聞こえて来た。
流石は女神様、あっと言う間に作り終えちゃったよ。
「それでは次にユウキさんの魂をこの身体へと移しますね」
そう言われた直後、ボクの意識は遠のいてった。