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第181話 見張りの順番は?


「普通、だな」


 目の前に置かれた野菜スープを口にしたボクは、思ったままの感想をボソリとこぼす。

 ソレが聞こえていたのか、料理を作った張本人は「えぇ~」と不満の声をあげる。


 料理前、あれだけ自信たっぷりに出来ると答えてたのに、実際に完成したモノを食べてみると、ソレは美味しすぎるわけでもなく、マズいわけでもない。

 普通だという感想が一番しっくり来るのだ。


 もしかしたら、ボクの舌がルーリアの味に慣れてしまっているだけで、本当はすごく美味しいのかもしれない。

 そう思って同じ料理を口にしたバドソンの反応を見てみるが、その様子からこの野菜スープがとてもうまいという可能性は感じられない。

 やはり、クミの料理は普通というレベルで間違いはなさそうだ。


 もし仮にバドソンもルーリアレベルの料理人が作ったものを食べていたのなら、また話は変わってくるかもしれないが…

 多分それは無いだろう。


 そんな風に考えていると、ボク達に遅れて野菜スープを口にしたマルクが「確かに普通だね。マズくもなければ美味しすぎる事もない?」と口にし、それがクミの自信にトドメを刺したらしく、クミは両手を地につけ、項垂れてしまった。

 クミの口から「おかしい、こんなはずじゃないのに」という呟きが聞こえてくるが、ソレは敢えてスルーだ。


 そんな出来事があった後、とりあえずクミの事は放っておいて食事を頂く事にした。

 ルーリアとマルクが作ってくれたコッペパンサンドは当然のようにお美味しく、クミの作った野菜スープもそれなりには美味しい。

 バドソンから言わせれば、野営でこれだけ美味いものが食えるだけで十分に贅沢な事だそうだ。


 まだまだ収納の腕輪の中には食材を入れてあるので、この旅の間はルーリアとマルクに美味しいご飯を作ってもらえますよと伝えた所、バドソンは笑顔で「そうかそうか」と頷いていた。


 こうして1日目の夕食は終わり満足に終わり、これからは見張りの仕事が始まる。


「それじゃあまずはボクはマルクが見張りをするから、その後はルーリアとクミがお願いね。時間は3時間毎に交代でどうかな?」


「ええ、時間はそれ位で良いと思うわ。けど、順番は私達からやらせてもらいます」


「え!?私達が先に見張りをするの!?なんで!?」


 ルーリアとペアを組むクミが驚きの声をあげる。

 だけどそれも仕方がない事だろう。


 というのも、今夜は早めに寝るという事になり、今から夜明けまでは約9時間程度。

 最初に見張り役をやると、6時間後にはまた自分達の番が来るのだ。

 そうなると必然的に睡眠時間は短くなってしまい、翌日が辛くなる。


 クミはそれが分かっているからこそ、ルーリアの言葉に驚きの声をあげたという訳だ。


「(ルーリアもその事くらいは分かって居るだろうに、なんでだ?)」 


 と、そこまで考えたところで、ふと思い出す。

 ルーリアはセレニアであり、ボクがその主人であるという事を。


 きっとルーリアには、辛い役割は自分がという考えがまだ残っているのだろう。

 しかし、そうなるとクミも巻き添えになる事くらいは分かっているはず。


 そう考えながらクミの方をチラリと見てからすぐにルーリアへと視線を戻すと、ルーリアはボクに向かい微笑んでいた。

 

 どうやらボクの考えている事が分かっているようだ。

 しかもあの微笑みは、ルーリアもその辺りの事への対策も考えているという事だろう。


「分かった。それじゃあ先を任せるから3時間後に起こしてくれ」


「ええ。任されたわ」


「はぁ…仕方ないわね。早く寝に行きなさい」


 ボクとルーリアで話し合いが終わった事に諦めがついたのか、クミはそう言いながら手をひらひらさせていた。


「それじゃあ先に休ませてもらうな。ほらマルク、あっちに行くぞ」


「お、おう。わかった」


 ずっと静かに成り行きを見守っていたマルクを誘い、ボク達は用意しておいたテントの中へと入り、身体を横たえる。

 そして目を閉じながら、明日の移動中は二人にしっかりと睡眠時間を取ってもらおうと考えていた。

 

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