第178話 初の・・・
スライム討伐の報酬を受け取り終わったボク達は、冒険者ギルドを後にし、帰路へとつく。
現在、時刻は2時を少し過ぎたところであり、お昼を食べていなかったボク達は空腹状態になっていた。
家に到着すると、マルクが自室から出てきてボク達を出迎える。
お昼は食べたのか?と聞いてみると、どうやらまだのようだ。
一応マルクには食事をしに行けるくらいのお金は持たせていたのだが、少し前まで寝ていたらしく、結局食べに行ってなかったらしい。
「それじゃあ、すぐに用意出来る物を作るね。マルク、手伝って」
「分かった」
そう言ってルーリアとマルクはキッチンへと向かい、ボクとクミは今の内に着替える事にした。
その後、ボク達は揃って少し遅めの昼食を食べ、空腹を満たせたところで部屋へと戻り、濡れたタオルで身体を拭いてから、今日の残りをのんびりと、というよりも、ほぼ寝て過ごしていた。
そして翌日、朝食を食べ終えた後に、4人揃って冒険者ギルドへと足を運び、アミルさんにお願いされるがままにグリーンビートルの討伐依頼を受けた。
と言うのも、昨日のスライム討伐でギルドの小さな魔石の在庫が残り少なくなってしまっているので、出来ればこの討伐を受けて欲しいとお願いされたからだ。
しかも、その小さな魔石の買取額は上がったままだという。
これは更なる貯えを得るチャンスとばかりに、ボクはこの依頼の事を聞いた瞬間に即了承したというわけだ。
依頼はすぐに受理され、ボク達は冒険者ギルドを後にしていつもの屋台で串焼きを4人分買ってから狩場へと出発するのだった。
狩りは順調に進み、何一つ問題は起こる事無く一日が終わり、報酬はかなりの額になる。
ギルドに戻って買取をしてもらっている途中、暫くはこの買取額が続くと言われ、ボクは買取額が通常に戻るまでこの依頼を受け続ける事にし、その翌日、そして更にその翌日もとグリーンビートルの討伐依頼を受け続け、1週間が過ぎた。
「ねぇ、グリーンビートルの依頼がないよ?」
今日もまた依頼を受けようかと朝から冒険者ギルドにやって来たボク達だが、建物に入るなり依頼書の張られてあるボードの元へと走って行き、その後を歩きながら追っていくと、先にボードを見ていたクミが此方に振り返り、そう口にする。
「って事は、もう魔石の在庫が十分貯まったって事なんだろうな。仕方ない、今日は他の…ん?」
他に割の良い依頼にしようかと言いかけたその時、アミルが笑顔でこちらに向かって手招きをしているのが視界に入った。
なんだろうかと思いながら皆でアミルの元へと向かう。
「おめでとう、クミさんとマルク君のギルドランクの昇格が決まったわよ」
「え!ホント!?やったわ!」
「……」
アミルの言葉に、言葉に出しながら喜ぶクミと、言葉は無くても嬉しそうな表情をするマルク。
そんな二人にアミルは冒険者カードを提示してもらい、ソレを受け取るなりギルドランクの更新作業を素早く済ませ、ソレを二人へと返却する。
FランクからEランクへと昇格した二人に、ボクとルーリアは「おめでとう」と伝え、二人もソレにありがとうと答えた。
「さて、もう一つ報告があります。ユウキさん、貴方達に指名の依頼が来てますよ」
「指名の依頼?え?ボク達を!?」
初めての指名依頼に驚き戸惑いながら、ボクはアミルにその指名してきた人が誰なのかと尋ねてみた。
「今回の貴方達を指名したのはバドソンさんです」
ボクを指名したのが、まさかのギルドマスターの補佐だった。
一体どんな依頼をするつもりなのかと思っていると、アミルは席を立ち「こちらです」と案内を始め、ボク達はその後をついて行った。