第170話 お出かの準備は時間が掛かる
思ってたよりも説明に時間が掛かってしまったけど、何とかクミの事とボク自身の事、そして女神様の存在等々についてを話し終えた。
話し中、マルクは驚きの表情を見せたり疑いの目を向けてきたりしていたが、とりあえず静かに聞き続けてくれ、最後には理解は出来てないが納得はした、といった様子だった。
まぁ、いきなり女神様と知り合いだとか、ボクが別の世界から転生して来たと聞かされたところで、マルクの様な反応をするのも仕方がないと思う。
それでも納得してくれたのは、きっとクミという存在が目の前にいたからだろう。
因みにだが、マルクにこの話は他言無用だと念を押している。
そんなこんなで、結局マルクに話し終えたのは朝食を食べるには遅すぎると思えるような時間になっていた。
これは後で思った事なのだけど、クミに人の姿になってもらった状態で紹介すれば、最初の一騒動を回避する事が出来て、もう少し早く終わっていたかもしれない。
まぁ今更それを考えても仕方が無いので、これ以上は考えない事にした。
一通りの話も終わり、とりあえず朝食?を食べようという事になったので、ボク達3人はキッチンへと向かう。
キッチンにはテーブルが設置してあり、テーブルの上には既に出来上がっていた料理がならんでいるのだが、そのどれもが冷えている様には見えない。
寧ろ出来立ての様に湯気が出ている。
「お話は終わったのね。そろそろかな?って思って温め直しておいたわよ」
キッチンに入って来たボク達を見るなり、そう口にするルーリアに、ボクに抱かれていたクミが「ルーリアさんって優秀なのね」と呟いた。
その後、皆一緒に食事を頂き、食事が終わったところでボクはこの後に皆で冒険者ギルドへいく事を提案した。
理由はマルクとクミの冒険者登録である。
今後も一緒に行動する予定のクミは兎も角、解体や家の仕事をするマルクには必要の無い事なのかもしれないが、今後の身分書の代わりにもなるので無駄にはならないだろうと思い、一緒にしておこうと思ったのだ。
「そうね。ただクミ様はその姿のままじゃ騒ぎになるから、人の姿に変わってもらえますか?」
「確かにこのままの姿じゃマズそうよね」
ルーリアの言葉にクミは始めて自分を見たマルクの様子を思い出したのか、苦笑いを浮かべながらそう答えた。
「という訳で、クミ様、私の部屋に行って準備をしましょう。ユウキ様とマルク様はそのままお茶でも飲みながら待っていて下さい」
「りょーかい」
ボクが返事をするなり、ルーリアはドラゴンの姿のままのクミを抱きかかえてキッチンから出て行った。
二人の帰りを待つ間、ボクはマルクに冒険者になる時に聞く説明を、覚えている限りで話しながら時間を潰していた。
それから約30分後、二人は漸くキッチンへと戻って来た。
女性の準備とは、何故こんなにも時間が掛かるものなのだろうか?
全くもって謎である。
「似合う、かな?」
人の姿になり、白いワンピース姿になったクミは、自分の容姿にあまり自信がないのか、不安そうに尋ねる。
ボクはそれに対し、シンプルな格好ではあるが、とても可愛らしいと思ったままに答えたのだが、それを口にした後に思う。
「(でも、これから冒険者ギルドに登録をしに行く人の恰好ではないよな…)」
そんな事を思っていたボクの隣では、マルクは何も言わず、ただ静かにお茶を飲み続けていた。




