第147話 ついに動いた
「ほれ、今日はめでたい日なんじゃし、お主ももっと飲まんか」
「これこれ、あまり無理強いするのはいけませんよ、アルベルト殿」
「そうそう、お酒は自分のペースで飲むのが一番じゃ。ところで、エルをどこかで見かけなかったかの?」
酔っぱらいのオッサンA・B・Cに囲まれ、ボクとルーリアはどうしたものかと戸惑っている。
この酔っ払い達が普通のオッサンならまだ追い払う事も出来るのだが、残念ながら普通のオッサンではない。
3人とも頭に王冠が乗っているのだ。
因みに一番絡んできているのが火の国の王で、名はアルベルト=フェーン=フレムスト
次にアルベルト王を止めようとしてくれていたのが、水の国の王で、名はカルト=ラース=アクルーン
最後にマイペースでお酒を飲み続けているのが、風の国の王で、名はグラス=ポワロン=ウィンディアである。
マジで誰かこの状況から助けて…
少し離れた位置で嫁に囲まれて優雅に紅茶を飲んでいるナツキさんに救助を求める視線を向けるが、チラリとこちらを見ただけで、助けてくれる様子はない。
寧ろボク達の戸惑っている姿を肴に、ティータイムを継続してやがる。
後で文句を言ってやる!と心に決めながら、頭に王冠を乗っけた酔っ払い達の機嫌を損ね無いようにと気を付けつつ、何とかその場から脱出する。
「はぁ、なんだか一気に疲れた感じがするわね」
「そうだね。まさかパーティー開催と同時に国王様達に絡まれるとは思いもしなかったよ」
苦笑いを浮かべながら、ボクはそう答えたのだった。
その後は暫くルーリアと共にバイキング形式の料理を取りに行き、美味い料理を楽しんでいると、ナツキさんの合図で子供達がパーティー会場に設置された壇上の側へと集められた。
何が始まるのかと遠目に様子を伺っていると、ミールさんの娘であるティアナから順に、子供が今後の目標についてを話し始めた。
とりあえず静かにその内容に耳を傾けていたのだが、要約すると、全員が両親のように強く立派な大人になりたいと言うものだった。
「けど流石にその目標は高すぎるんじゃないか?…いや、もしかしたらナツキさんみたいな力を受け継いでたりするのか?」
「何か言った?」
ボソリと小声で呟くボクに反応したルーリア。
ボクは「何でもない」と答え、パーティーの途中からずっと手に持っていたビールの様なお酒をグビッと一気に煽った。
その後も食事をしながらの団欒は続く。
但し、ボク達は再び絡まれないようにと隅っこの方で取って来た料理とお酒をちびちびとやっていた。
「ところで、このパーティーっていつまで続くんだろ?」
始まってからかれこれ3時間以上は経っているのだが、何故か一向に終わる気配はない。
寧ろ、新しい料理とお酒が用意されている程だ。
「どうやらまだまだ続くようね。このパーティー」
「みたい、だね」
そんな会話をしながら、運ばれてくる料理をみていたその時、ずっとお腹の前の大きなポケットに入れていたタマゴが、グラグラと動き始めた。
「え!?」
「どうしまし、ってナツキ様!?動いてますよねソレ!」
驚くボクとルーリアの声に、周囲に居た人達の会話がピタリと止まる。
そんな異常事態に、ナツキさんとその奥さん達が駆けつけて来た。
「お、ついにか!」
尚も震え続けるタマゴを見て、ナツキさんは何やらとても嬉しそうな声をあげるのであった。
本当なら、生まれる所まで書くつもりだったんだけど、自分なりの締切りに間に合わないので、次回に回す事にしました。