第134話 どうしたらいいのだろうか?
「……んっ?」
「あら、目が覚めたようね」
陽が完全に沈みきった頃、ボクの部屋の床に転がされていた男の子が漸く目を覚ました。
「あれ…ここは?」
一応は起きたようだが、まだ完全に覚醒していないのか、男の子は現状を把握出来ていない様子だ。
「ココはボクの家のボクの部屋だ。今日の昼過ぎ、君が我が家の中を覗いているのを見つけたので捕獲させてもらったよ」
男の子の質問に答えると共に状況を説明してやると、男の子はハッとなり勢いよく起き上がろうとするのだが、それをルーリアは素早く押さえ込んだ。
「は、離せ!離せよ!」
「暴れないでください。大人しくさえすれば手荒な真似はしませんから。大人しくすれば、ね」
まるで脅すように警告するルーリアの言葉を聞き、男の子はピタリと動かなくなる。
その反応をみて、ルーリアは男の子から手を離し、その場にゆっくりと立つように指示を出した。
脅しが効いているのか、男の子は大人しく言う事を聞き、ゆっくりと起き上がる。
「あなた名前は?」
「マルク、です」
質問に素直に答える少年ことマルク。
やはり先程のルーリアの脅しが効いているようだ。
「ではマルク、正直に話しなさい。あなたは何故この家を覗いていたのですか?」
「……」
ルーリアの質問に黙り込むマルク。
「何故、覗いていたのですか?」
黙り込むマルクに再度質問を投げかけるルーリア。
しかも今度は恐怖を覚えるような低めな声で。
マルクはその表情に恐怖を浮かべながら、ゆっくりと語り始めた。
「この家に人が住み始めたって聞いて、それなら食料があるはずだからソレを頂こうと思って、留守かどうか見て、ました」
「やはりそうだったのですね。ユウキ様、どうします?」
「どうしますって言われても、今回の件は未遂に終わってるし、どうもこうも無いんじゃないかな?」
「確かに盗みは未遂だったけれど、留守を確認するために家の中を覗いていたという事実があるのだから、罰するには十分な理由になるわ」
「因みに今回の様な事だと、どんな罰則が一般的なの?」
予想としては精々留置所に数日入る程度だろうと思っていたが、ルーリアから帰って来た返事は、犯罪者としてセレニア商に売る事が出来る、というものだった。
もちろんセレニア商に売る前に、一度街の警備兵の元へ連れて行き、そこで嘘を見破る道具を使用して取り調べを行った後でだ。
そんな予想以上の罰を与えるのは、少し可哀そうに思えたので、今回は警備兵に突き出す事はしないとマルクに伝えると、マルクはホッとしていた。
しかし、次の瞬間ルーリアが「けれど、流石にただで許してしまう訳にはいけませんよ?」と、意見を口にする。
確かにこのまま許して解放してしまうと、同じような事を繰り返す可能性がある。
だからといって、どんな罰を与えればいいのだろうか?
ボクはルーリアに「そうだね」と答え、どうするべきかと考え始めるのであった。




