第129話 思ったよりもデカかった
「あのデッパリじゃないか?」
「いえ、あれはただの岩ですね。それよりもあっちの方がそれっぽい気がするわ」
それぞれが崖に見えるデッパリを指さしつつ、そんな会話をしていた。
というのも、ルーリアからの情報によれとビターホーネットは崖の途中に巣を作るらしく、卵を産んだ後はその入り口を埋めて塞ぐ修正があるらしい。
そしてその入り口を塞ぐ際には、土を多めに盛り、まるで岩の隅っこが少しだけ見えている様な感じになっているらしい。
現に、ボク達はここに来てから1時間の間、何度もデッパリ部分を見つけたと思いきや実はただの岩、なんて事を繰り返しているのだ。
それから更に1時間、崖に沿って移動しつつデッパリを探し続けた結果、明らかに今までのとは違うデッパリを見つけ、試しに離れた場所から小さめのファイアーボールを放つと、そこにあったデッパリ部分がなくなり、直径30cm程の穴が姿を見せた。
「あれが巣穴の入り口かな?けど、この後はどうやって採取すればいいんだ?」
ルーリアへと向けた言葉ではないが、一般的な採取方法なんて知らないボクはそんな事を呟く。
「それなら簡単ですよ。そろそろ中からビターホーネットが出て来るので、ソレを倒せばいいだけです」
その言葉から、思っていたより簡単そうだと思ったのだが、その考えは数秒後に取り消す事となった。
直径30㎝程の薄暗い巣穴の中に、黒く大きな何かが蠢いており、それが入り口を更に崩し始める。
そして30㎝程は1m程まで広がり、そこから蠢いていたソレは巣穴の外へと這い出て来た。
「うわっ、デカ!!」
這い出て来たそいつを見て、ボクは驚きの声をあげた。
ある程度はデカい蜂だろうと予想していたのだが、今ボクの見ているソイツは、それよりも更に大きく、優に倍のサイズはあろうかという程だった。
目測ではあるが、体長は約1mといったところだろう。
そんな巨大な蜂が一匹、また一匹と巣穴から這い出てくる。
正直、今すぐにでも逃げ出したいと思っている。
「どうやら大物の巣穴を見つけてしまったようですね。蜂蜜の量は期待できそうです」
ボクが逃げたいと思っているのに対し、どうやらルーリアはそうとも思っていないらしく、何やら期待するセリフが聞こえて来た。
ソレに反応し、ルーリアへと顔を向けると、ルーリアは「何か変な事言いました?」と、不思議そうな表情を浮かべる。
どうやら先程のセリフは本気で言っていたようで、ボクは不思議そうな顔をするルーリアに「いや、何でもない」と答え、まずは相手の情報を知る為にと、鑑定スキルを発動させる。
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ビターホーネット
レベル8
力 16
体力 11
魔力 3
精神 4
素早さ 16
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どうやら単体としてはそれほど強い相手ではないらしいが、其れはあくまでも単体で襲ってきた場合だ。
現在、ビターホーネットの巣穴の周辺には30匹近くが飛び回っている。
流石にあれだけの数を相手にするのは危険だろう。
さて、どうしたものだろうか…