第113話 思いつく打開策
体力的に実現できそうにない。
ならばと周囲を見渡しながら何か他に良い策は無いかと考え始めていると、ゴブリンマッスラーと目が合った。
その瞬間、ゴブリンマッスラーはニヤァとする。
それを目にした瞬間、ボクの脳裏に嫌な予感が過る。
「ユウキ様、今あの巨大なゴブリン、こっちを見て笑いませんでしたか?」
ルーリアもゴブリンマッスラーの笑みを見たらしく、そう言いながらその表情を引きつらせている。
きっと今、ルーリアもボクと同じように脳裏に嫌な予感が過っている事だろう。
そんなルーリアに対し、ボクは答える。
ルーリアと同じようにその表情を引きつらせながら。
「確実に笑ってたな。多分あの笑みは、次に狙う獲物を決めたってところだろうね。因みにアイツの名前、ゴブリンマッスラーって言うらしいよ」
「へ、へー。ところでアイツ、此方に向かっている様ですけど、逃げた方が良いんじゃない?」
「賛成。とりあえず何か策が浮かぶまで逃げに徹する事にしようか」
「了解です」
ルーリアの返事を聞くや否や、ボク達はその場から逃げる。
先程までは標的が逃げたら別の標的へと映っていたゴブリンマッスラーは、余程ボク達の事を気に入ったのか、ニヤニヤしながら追いかけて来る。
なんで!?
…もしかして、あの時に目が合ったからって理由だけだったり?
そんな事を思いながらも逃げ続けるが、依然としてゴブリンマッスラーはボクを諦めるつもりはないようで、ずっと追いかけて来ている。
このままじゃ近い内に体力の限界が来て追いつかれてしまい、間違いなく殺されてしまうだろう。
何か早く手を打たねば…
「ユウキ君!すぐに手伝いに行くから、無理をせずに逃げ続けるんだ!」
離れた場所から聞こえてくるティアミスの声。
視線を向けてみると、そこでは少しだけ離れた場所に居るゴブリンに向けて矢を射りながらもボクの方を見ていた。
しかも驚いた事に放たれた矢はちゃんとゴブリンの頭にHITしている。
何故!?と驚くボクはほんの少しの間足を止めてしまうのだが、近づいてくる重量感のある足音が耳に入り、ハッと我に返ったボクは再び走り始めた。
周囲には未だにゴブリンと戦う冒険者達が居り、むやみやたらには逃げる事が出来ない。
それでも何とか戦う者達を巻き込まないように気を付けつつ、出来るだけ人のいない方へと逃げて行く。
「(ティアミスさんはああ言ってたけど、あの様子じゃ援護に来るまで時間が掛かりそうだし、それまでボクの体力も持ちそうにない。どうする?)」
ひっしに考えを巡らせながら走っていると、前方に直径3m強はありそうな巨大な大岩が目に入る。
それを右側へと方向転換しようと思ったその瞬間、首筋にゾクリと寒気が走り、それに一瞬遅れてルーリアの叫ぶ声が聞こえて来た。
「ユウキ様!後ろ!!」
どうやら少し離れてボクを追いかけてきていたようだ。
そんなルーリアの声に反応し背後へと視線を向けると、そこにはボクの身長程はあろうかというサイズの丸い岩を両手で持ち上げ、今にも投げようとしているゴブリンマッスラーの姿があった。
マズい!
そう思った瞬間、思っていた通りゴブリンマッスラーは大岩を此方に向けて投げ、ボクは咄嗟に両腕で顔を覆うのだが、その瞬間、自身の左腕に太陽の光を反射する腕輪の存在が目に入った。
「(そうだ!)」
ボクはその瞬間、現状の打開策を思いついたのだった。
今回で今年最後の投稿となります。
本当ならこの一件を終わらせてしまいたかったのですが、作者の能力不足と時間不足で、中途半端になってしまいました。
すみません!
来年も頑張って続きを書いていきますので、どうかよろしくお願いします。
読者の皆様、良いお年を!