国の現状
「なんでウチが召喚極めたかってのは、まずテーラにとっての異世界の知的生命体を呼び出し。」
「うん」
「王様をぶっ飛ばすためだ。」
「おっとそう来たか」
瀬居のイメージでは、大体召喚系は世界を救う、ラスボスをたおす、この様なパターンが多いと思っていた為、少しばかり拍子抜けしていた。
「王政に不満を持っているのか?攘夷するって相当だろ」
フォルは瀬居のひたいを軽くデコピンする。
「本の内容を思い出しながら聞けよ?この世界ではお金は労働により発生するスキルポイントで成り立っている」
「確かにそんなページあったな」
「スキルポイントの税収が無茶苦茶高い、高いと貧民層は税で殆どむしり取られて買い物も満足できない。」
「国民のためでなく私利私欲の為の税収って所か?」
「その通りだぜ。しかもその貧民層は拡大の一途辿っている。ちょっと外に出るぞ、見た方が万倍はえぇからよ。ほら、靴だ。」
「ありがとう。流石に靴下オンリーはきついからな」
フォルが出した革靴を履き、瀬居たちが外に出ると、賑やかな街並みがそこにはあった。
子供達は駆け回り、吟遊詩人の歌声が聞こえる。店の人らしき人物が仕入れのためだろうか、反物を幾つか貿易商で購入していた。
「賑やかだな」
「ここは城下だからなぁ、右を見てみろ、あの門が城に通じてんだぜ」
瀬居が右を見てみると、5mほどの大きさの鉄製の門が立っていた。象牙と大理石らしき素材が飾りとしてあしらわれており、いかにも金持ちが作りましたと言った様な感じだ。
門の前には二人の女の門番が起立の姿勢のまま微動だにしていない。
「女の門番か、珍しいな」
「国王は女性が好きでな、城にいる間は女しか見たくないとかいう理由で城に働いている人物は王の以外皆女なんだよ。」
「変態かよ。」
「ちなみにウチは自由に出入りできる権限を持ってんだぜ?」
「まぁ顔だけは素朴で可愛いからな。」
「かっ・・・!くそ、さっさと行くぞ、貧民街に」
瀬居の袖を乱暴に引っ張り、フォルは後ろも見ずに早足で歩き出す。角度により瀬居はフォルの顔が見えなかったが、フォルはこの時、ほんの少しだけ頬を赤く染めていた。
二人が貧民街に近づくにつれ、街の雰囲気が少しづつ変わる、初めこそ店や人は明るく、建物や路面が綺麗に整理されていたが、暫くすると段々と寂れ、なのに人口が増えてゆく。怒声、罵声、人身売買と思われる競りの声。フォルが着いた頃にはロクな建物すらなく、ストリートチルドレンと思われる少年と少女が瀬居とフォルを見つめていた。少年が話しかける。
「おい眼鏡ババア、今日はパン持って来てるか?」