フォル・ラードング
瀬居はラノベの主人公によくある学生やニートなどという、どどど童◯ちゃうわ系キャラではない為、声の主が女でもさほど驚かなかった、しかし瀬居は別ベクトルで驚いていた。
「見た目のイメージ真逆ですね。」
男っぽい口調のキャラクターだと、ボーイッシュな見た目が多いが、彼女は緩いウェーブのかかった長い栗色の髪で、それが二つの三つ編みになっている。
素朴な顔には丸メガネにソバカス、ゆったりとした紫のローブでわかりにくいものの、女性的な出るとこ出ているいいの体型だ、つまる所、ボーイッシュとは全く無縁な臆病そうなか弱い女子といった感じだ。
「おいおい、態度とか変えんじゃねぇぞ、ウチの前では常に無礼講だと思いやがれ、というか、ですますで喋られてもムズムズするンだよ。」
しかしその言動は百年の恋もさめるような大雑把な男子そのものであった。
「そうか、それはこちらも楽だが、後で『何あいつ、チョーシのりすぎ』とかは言わないでくれよ」
「お前さぁ、っつたくよぉ、ウチが過去を詮索しないタチで良かったな・・・おっと危ない危ない」
「なんだ?」
「名前聞いてなかったな、名前をお互いに言い合わないと本契約にならねぇんだ、このままだったらただ駄弁って元の世界に返しちまう所だった。ウチの名前はフォル・ラードング、お前の名前は?言っとくが偽名とかだめだかんな?契約は本名じゃねぇと成立たねぇんだ」
「俺の名前は瀬居点眼、これ、名姓じゃなくて姓名だから。」
「テンガンか、姓名で名乗るとはおもしれぇ奴だな」
瀬居の目の前に一枚のなにやらごちゃごちゃと描かれた羊皮紙が浮かび上がり、署名のところであろうスペースにペンも何も持っていないのにじわりと瀬居の字で名前が描かれる。
「これで契約完了だ、と言いたいがせいぜいこれでは『ここにいても良い』程度だ」
「まだ何かあるのか?」
何もわからない、といった感じで首をかしげると少女、フォルは目を大きく見開いた。
「スキルしらねぇのか?」
「何故そこにスキルが出てくるんだ?」
マジか〜とフォルは頭を抱えた、うまいように言葉をまとめようと唸る。
「あー、そうだな、説明は難しいが・・・テーラではスキルがないと生きてゆけねーんだ、呼吸、食事、排泄とかの生命維持に重要な役割もスキルがないとできやしない、お前らの世界もこうじゃねぇのか?似たようなもはあるだろ?」
「・・・は?」
もの凄い事実をフォルはさらりと言った。