取り戻す、その1※キン視点
今おれは城の門の前にいる。貧民街では見たこともないような綺麗な服を着込み、何時も適当に結んでいる髪も綺麗に整えられていた。テンガンは「馬子にも衣装」とかおれの知らない言葉を言っていたけど、なんだか少しムカついた。
「あれ、持ってきているか?」
ウルセェな持ってきてるよ。こいつも見たことないおしゃれなローブを羽織り、ピカピカとした眼鏡をつけていた。
あれ、というのはテンガンが作り出した赤と青のマーブルの短剣だ、丸い形から短剣の形になってゆく様はキモかったとしか言いようがない。
「申し訳ございません。我が城は王以外の男性は入る事が出来ません。」
妙に乳がでかい門番が棒読みで言う、ぐちゃぐちゃうるせぇなさっさと通せよおっぱいおばけ。
「名乗りもしねぇですまねぇな、ウチはフォル、フォル・ラードング。新しいスキルの能力を王様に見せたくて来たんだ、その為にこの少年が必要でなぁ、王の為なんだ、そのくらい良いだろ?」
門番が困ったように少々オマチクダサイと城の中にいた女中を呼び、王に聞いて来て下さいと伝言した、こいつこんだけ喋れて表情あったんだ、と何処かでぼんやりと思いながら五分ほど待つと、女中が戻って来た。門番に何やらヒソヒソと喋ると、今度はおれらの方に向いた
「フォル・ラードング様、許可が出ました、こちらへどうぞ」
女中の案内におれも付いて行こうとするが、おっぱいおばけに止められてしまう、何でだよ、入って良いって言ったじゃねーか。
「申し訳御座いませんが、ええと」
「キンだ」
「キン様は別室で待機して頂きます。必要な場面になりましたらフォル様が召喚という形で王の間に飛びますので」
女好きこじらせるとここまでになるんだな、馬鹿みてぇ。
もう一人の女中が来ると、裏口のような場所に連れていかれ、人通りのない寂れた部屋に突っ込まれた、おれにしたらこれでも豪華な部類にはいるが、これがもし偉いやつだったらヤバイことになるんじゃないか?
「こんな場所ですまんなぁ、これでも譲歩しましてん」
これまたおっぱいおばけなその女中は案内された道中に横目で見た人たちよりも美人だった。
「うちなぁ、子供がすきやねん、こんなかわらし子をおくれてうちも嬉しいわぁ」
のほほんと話しているけど、ぶっちゃけおれにとってはどうでも良い事ばかりだった。そんなことより今の状況が重要だ!
人通りもなく、この部屋には変な喋り方の女中だけだ、おれは懐から例の短剣を取り出した。
「なんなん?かっこええな、今のおもちゃってこういうのなんやねぇ」
それが『女中』の喋った最後の台詞になった




