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Chapter2 Apple jam and French toast

 俺は、もう何もかも終わらせたくなった。そんなとき、このパンと出会った。俺の心をほんのり温かくしてくれるパンとジャムと紅茶に…。

 『ごめん。別れて。』

好きだった彼女にいきなり言われた一言。俺の胸にグサッと刺さった。

 俺は、赤城大智(あかぎたいち)。現在、カフェでアルバイトしているただの大学生。頭は、そこそこ良いが有名なトップ校に通っていない。まあ、そんなことはさておき、昨日俺は、好きな彼女に振られた。理由は彼女の浮気相手の間で妊娠してしまったから。いつの間にかできた浮気相手と一緒になるなんて、信頼してたけどなぁと思いながらバイトに向かった。

「よっ!赤城!昨日彼女となんか、あったんか?」

何も知らない桂木麟(かつらぎりん)が声をかけてきた。

「もう別れたんだよ。」

と俺は、ふてくされながら言った。

「おいおい。べっぴんさんの彼女と別れたってどういうことだよ!?」 

と俺の顔を覗き込む。

「浮気相手との間で妊娠しちまったんだよ。仕方ねーだろ?!」

と半分キレてしまった。

「あっ…。わりぃ。まあ、今日終わったら飯でも食いにいこうぜ」

と言い、店内に入った。彼は、よくふざけるがまじめなときは優しいやつだ。

だからつい、怒りたくてもそれ以上は怒らない。怒れないんだ。

 一時間くらい経ってからだろうか、元カノが店にやってきた。浮気相手と一緒に…。他のスタッフに頼もうかと思ったが誰も手が合いていなかった。俺は、仕方なくオーダーをとりにいった。すると、彼女が

「コイツ、うちの元カレ!イケメンでしょ?でもコイツ、黙ってあたしの言うこと今までぜーんぶ聞いてくれてたんだ。フォローしそうな顔してんのにさ。だから別れ話しても逆らうことなく別れてくれたの。ね?」

と笑いながらこっちを見た。他の客にも聞こえたらしく嫌な雰囲気がただよった。麟が慌てて向かってきた。だが俺は、

「お話し中すみません。ご注文をお願いします。」

と言った。彼女は、無視したことにイラだったのかいきなり水をかけてきた。

「あたしに無視をするってどういうこと?いくら元カノでも人の話、無視しないでくれる。謝って。」

と言った。俺は、もうどうすることもできなかった。すると、浮気相手が

「おいおい。やりすぎだ。」

と彼女の腕を引っ張った。俺は、もう濡れてしまったので麟と交代してもらうことにした。更衣室についたとき、俺は泣きそうになった。元カノに言われたからじゃない。麟が、俺をフォローしようと必死になってくれたからだ。このままだと客が店でゆっくりできないだろうと考えて帰ることにした。

「あぁ。なにやってんだよ。俺。」

とつぶやいたとき、パンの香りがした。匂いをたどると「レ・ジュール」という店についた。扉をあけるとパンとジャムと木材の香りがふわっとした。すごい落ち着く匂いだった。すると、若い女の人が来て

「ようこそ、レ・ジュールへ。店長のリサです。」

と言い、店の説明をした。

「さあ熱い紅茶とともに人生にパンとジャムを…。」

そう言って厨房に戻った。なんだかその言葉が響いた。さっそくみると、目に止まったのはりんごのジャムとフランスパンのフレンチトーストだった。店内に食べるスペースがあったので食べることにした。一緒に出された紅茶と食べるとふわっとりんごの香りとフレンチトーストの味がブレンドしてそこに紅茶の優しい味が加わった。本当に心が和らいだ。

「おいしい…。」

俺はそういうとリサさんが出てきて

「優しい気持ちの持ち主なんですね」

と微笑んだ。俺は少し照れたが何だか癒された。隣の高校生の女の子も何か辛かったのか泣きながら食べている。だが、口は微笑んでいた。

 僕は、そろそろ帰ろうとバスケットを返し、扉を開いた。そして出る前にリサさんに

「また来てもいいですか?」

と尋ねると

「もちろん。待ってます。」

と笑った。優しい笑顔だった。

 扉を閉めて振り返ると麟が息を切らしながら走ってるのを見た。

「麟、どうしたんだよ?」

と言うと

「探したぞ。どこにいたんだよ!あとで飯食う約束したろ?」

と言って俺の肩に手をのせた。

「行くぞ。愚痴、全部聞いたる。」

と彼は言って笑った。リサさんと同じ、優しい笑顔だった。

「ごめんな。ありがとう。」

と俺は、言った。

「お前、いつも優しいからさ。ついつい、色々言い過ぎることもあるけど、一番頼りにしてるからさ。」

と彼は言った。その言葉はまるで、さっき食べたフレンチトーストとりんごジャムと紅茶のほんのり温かい感じだった。何だか、心が温まりすぎて涙が出そうだったがなんとかこらえた。あのときの夕日は、本当にきれいだった。


 その日以来、麟とは、パートナーとしてカフェのモデルとなった。

「いつか、彼女できたら良いなぁ。」

と麟がいった。

「できるよ。麟なら。」

と俺は、コーヒーをいれながら言った。

「とうぶん、いねーわ。面倒くさい優しいパートナーがいるからさ、一応言っておくが恋愛感情はねーぞ!」

「わかっとるわ!」

と言って2人で爆笑した。

 これが本当に信頼できる人だ。あのとき、食べたフレンチトーストとりんごジャムと紅茶、いつかあいつと一緒に食べたいな。


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