Chapter1 Strawberry jam and bread
『私、南波心結。現在、恋してまーす。つき合っているは、彼、南雲敬一!私と同じ高校に通うカリスマ高校生!』
と一度は言ってみたかった。これは、ただの夢だとわかっている。南雲君には星川愛実という彼女がいる。私が南雲君が好きだった頃、私の友人である彼女に、相談を受けていて、告白を手伝っていたのだ。彼女も、私の高校では、マドンナ的存在だったので「美男美女カップル」と呼ばれている。
ある日、私が部活を終え、帰ろうとしたとき、
「敬一、今日、つきあってほしいところあるんだけどいい?」
と言っている愛実がいた。
「わりぃ。今日、バイトだから。」
そう言って、南雲君は、逃げるように愛実のそばから走った。
私も何食わぬ顔で、通りかかろうとしたとき、彼女が私を呼び止めた。
「ねぇ心結、アンタから敬一にあたしに優しくするように言ってくれない?」
めんどくさい事を頼んできたよ、ったく。と心で思いつつ
「いいよ。」
と答えた。彼女はうれしそうであった。
彼女が去ったあと、すぐ帰る支度をし、南雲君を探しに出た。すると、衝撃的な光景を見た。南雲君の顔が傷だらけになっていた。
「大丈夫!?」
私は、思わず叫んでしまった。
「あぁ。大丈夫、大丈夫。あれ?お前、たしか愛実の…」
と彼は、言った。名前を言おうとしていたが顔の傷が気になる私は
「ちょっ。保健室行こう!」
と言い、彼の腕をつかみ、全力疾走で保健室に向かった。保健室の先生に、手当てしてもらい、帰ろうとした。すると、南雲君は、
「ちょっと待って!」
と走ってきた。
「ありがとう。ごめん。名前、南波心結だよね?」
と笑った。
「そう。あっ!走ってごめん。足ケガしてなかった?」
と聞くと
「顔だけだよ。ありがとう。じゃっ。」
と言った途端、私は思い出した。
「なっ南雲くん!あの…愛実に、もっと優しくしてあげて。愛実、すごく素直でかわいいし…南雲君に告白する前の時、あたしのとこにきて、必死に頑張ってたんだ。だから、愛実を泣かせないであげて…」
あぁ~言い過ぎた…。何も知らないのにズカズカいくのはまずい…。
「ごめん!何も知らないのに説教して…。あっ、ケガ大丈夫?おばあちゃんが言うには、ちゃんと消毒したりすれば傷跡なくなるって。」
余計なことを言ってしまった~。逃げよう。
「またね!」
そう言って走ろうとした瞬間、
「おまえ、おもしろいな(笑)ありがとう(笑)ひさしぶりに笑ったわ」
涙が出しながら大笑いしていた。そして、
「あぁ。愛実のことは、大事にするよ。心配かけてごめんな。」
と言った。私は、手を振り、帰ることにした。だが、顔の傷のことを忘れていた。それが、愛実によってだったことを…。
次の日、教室のみんながざわついていた。なぜなら愛実は、泣きながら南雲君を見て
「何で別れようなんて言うの?もうすぐで二年目ってなるのに…」
そう言って泣き崩れた。大丈夫?と聞きながら近寄って支えようとしたその時
「心結、あんたのせいよ。あんたが敬一にひどいことしたから」
そう言って、私の顔を殴った。私は分からないまま、ぼーっとしてしまった。
「心結、昨日、アンタが敬一を殴ったみたいね。ひどいよ。どんだけ敬一のこと、好きなの?脅して別れさせようとしたんでしょ?最低…」
そう言って、もう一度殴ろうとしたとき、私の体が何者かに守られていた。
「ッテェ」
南雲君だった。愛実は、ギョッとした顔で見た。南雲君は、すごく睨んでいた。
「愛実、彼女は、何も悪くない。昨日、俺を殴ったのはおまえじゃないか。黙って見てると思ったか?」
すごく低い声だった。すごく怒っているようだ。だが愛実は、怒りがおさまらないのかもう一度殴ろうとした。今度は、私が受けた。すごく痛かった。顔にあざができているのもわかるくらい。
「南雲君は、悪くない。あんたは、卑怯者だよ。」
いつの間にか、私も声が低くなり、彼女を睨んでいた。
「私は、人が目の前で殴られるのは嫌いだから…。」
と私は言い、その場を去った。怖かったが安心した。
それ以来、愛実と敬一は、ケンカしなかった。前みたいにラブラブではないが寄りを戻したらしい。不思議すぎるカップルだとみんな噂した。
私は、殴られた頬が治らず病院に行き、ちゃんとした治療を受けた。どれくらい強い衝撃だったかは、もうわかるだろう。彼女は、きっと殴るのが慣れているようだ。
南雲君が、痛い目に逢っているとも知らず、説教したことを後悔した。病院帰り、ふといい匂いがした。パンの匂いだ。少しあるくと煉瓦づくりの家があった。中に入ると若い女の人が、
「ようこそ、レ・ジュールへ。私は、ここの店長のリサといいます。」
と言った。
「さあ熱い紅茶とともに人生にパンとジャムを…」
と言い彼女が厨房に戻ったとたん、目についたのは食パンとイチゴジャムだった。ほんのり甘いパンに甘酸っぱいイチゴジャムがトロッとかかるとまるで「恋の味」。
「おいしい」
と言ったら厨房からヒョイと彼女が出てきて
「辛いことあったらいつでもいらっしゃい」
と言った。何だが泣きたくなり大泣きした。
外が薄暗くなり、帰ることにした。リサさんも手を振り、店に戻った。なんだか心が軽くなっていた。よくわからないけどすごく幸せな気分だった。
翌日、学校に行った。愛実は、いつものように南雲君と来ていたが南雲君は、もう疲れているようであった。昼休み、南雲君は、愛実に別れを告げたのかなんだかすっきりしていたが愛実は、泣いていた。
放課後、南雲君に
「南波さん、ちょっといい?」
と言った。黙ったまま、屋上に連れて行った。すると、南雲君が振り返って
「愛実とは、別れた。」
そういった。私はびっくりした。そして
「彼女、ボクシング習ってたみたいでさ、不満があるとよく殴るんだ。俺は、殴り返すと彼女に傷できてしまって何か言われるのもめんどうだから黙って受け身になってたんだ。でも、南波さんが俺を守ってくれたとき、『南波さん、優しいな』って思った。南波さん、自分の感情抑えてまで愛実に告白させたりするくらいだから。だからさ、そんな南波さんを守ってあげたくなった。別れたばかりなのに、って思ってると思うけどさ。誰かにとられる前に言いたくて…。」
彼は、向き直り、私の顔にそっと手をあて、
「俺、絶対南波さんなこと、守るから。俺のそばにいてくれないか?」
私は、泣きながら頷いた。そして彼が私を引き寄せ頭を撫でた。そして顔を見てキスをした。あのとき食べたジャムのように甘酸っぱく、パンのように甘かった。
10年後…
「敬一、これって…」
私の手に小さなダイヤが輝いた。
「結婚してくれる? 」
敬一は、ニコッと笑った。私は、嬉しくて彼にキスをした。
「おめでとうございます!敬一さん!心結さん!」
多くの人から拍手とメッセージをもらった。
あのとき食べたパンとジャムの味が、今の私と敬一かもしれない。本当に人生にパンとジャムは、必要みたいね。




