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序章

 男は獲物を見ていた・・・・。

距離は凡そ30メートル、目と耳に集中すれば、獲物の声と顔の輪郭がはっきりと聞こえる距離である。彼はこの距離までにくるのに凡そ二週間の時間を使っており、体力と精神は限界にきていた。額から汗が垂れる。一瞬、彼は右手を使い汗を拭う事も考えたが、警戒心が強い獲物に発見される可能性があるため、その思考をキャンセルした。

 通常生活では極当たり前に思える行為だが、相手が千の軍勢と同等に戦える我等の敵“魔王〟である。じぶんが考えられるかぎり、用心するに越した事はない。目の周りで蟻が動いている。それは既に彼にとっては小さな問題だ。ズボンの中に糞尿を垂れ流し、それに無数の虫が集っている事は想像に硬くない。

 しかし、彼には体中が汚物にまみれようが、体と服の間に虫の巣ができようとも、彼にはそれをする価値がった。

「そろそろだな・・・・・」

“カイン〟は太陽の位置と物の陰を見て時間を確認した。魔王の警戒心が解ける、唯一のカインのチャンスだ。魔王には子供がいない。魔王は孤児を集め、自分の子供のように育てあげていた。魔王は子供と共にいるこの時間は、魔王ではなく君主でもなく、ただ一人の母親になれる時間であった。

「相変わらずイイ女だな、あれならば金貨10枚だして惜しくはない」

水の様に柔らく長い赤毛、他者に無条件に好意を抱かれる青い瞳、そして無駄のないボディラインは、男ならば賞賛しない者はいないだろう。しかし、魔王の頭には控えめな角、鋭い犬歯、それは人とは違う、亜人の特徴をそなえていた。

 カインはまるで、ミミズが地を這う様に前進していく、彼は漁師が使う網に、枝 草 等を貼り付け、それは外から見たら完全なる偽装であった。しかし、完全なる偽装も動いては目だってしまう。彼は風の動きに体を合わせ、前進した。

 「お母さん!」

魔王の傍に4人の子供が駆け足で魔王の傍に行く。

 「みんなイイ子にしてたかしら?」

 「うん!僕ね、掛け算できるようになったんだよ!」

 魔王はそれを聞き、満面な笑顔で子供に返す。子供達は、今がその時と言わんばかりに自分を主張していく。それをなだめながら聞く魔王。顔は幸福に満ち溢れていた。

 「25メートル・・・・」

カインは前進している。

 「お母さん、戦争はまだ終わらないの?」

子供が悲しい顔で魔王に聞く

 「うん・・・・ごめんなさい・・・・・できるだけお母さんがんばって、この戦争が早く終わるようにがんばるから、もう少し待っててね」

 魔王はその問いをした子供の顔を撫でながら、優しく返す。

 「20メートル・・・・」

体中の血液が沸騰する・・・・・それでもカイン冷静さを失わない。

 「あいつら人間が悪いんだ・・・・・・僕達が人と違うからってバカにして、お母さんを困らせてる・・・・あいつらみんな死んじゃえばいいのに!」

 魔王は少し間を置いて、真剣な顔で話す。

 「人も亜人もね怪我をしたら赤い血を流すでしょ?」

 「うん・・・・」

 「本当は人も亜人も戦争なんかしたくないのよ・・・・・ただ、状況がそれを許さないだけ・・・だからあなた達が大人になったら、戦争はダメだって言える世の中にしたいから、お母さんは、今がんばってるの。応援してくれる?」

 「うん!」

 子供達は笑顔で返す。それは子供らしい曇りなき表情で。

 「15メートル・・・・」

カインは背中に背負っている大剣を握る。踏み込む距離までは目と鼻の先である

 「僕達ね、お母さんがこの戦争で怪我をしないようにお守り作ったんだ。」

言いだした子供がポケットから、木と糸で作った不器用な飾りを持ち出し、魔王に見せる。

 「12メートル・・・・・」

今が好機。魔王は警戒心はまるでない

 「これ貰っていいの?」

子供達が魔王がその飾りをつけるの待っている。魔王はそれを受け取り首に両手を使い、つけようとしている。

 「貰った!」

カインは背中から大剣を引き抜き、魔王に駆け出していく、それは文字どうり全身全霊をかけた一撃を与えるために。

 「お母さんとても嬉し・・・・・・っつ!」

それは一瞬だった・・・・・・・。魔王の腹には大剣の半分まで貫通し、その剣先におびただしい量の地が垂れていく・・・・。 

 「うおおおおおおおおおおおお!」

カインは、魔王を貫いた剣をもち上げ、カイン頭上を魔王の体がとうりすぎた時、子供が魔王に作った首飾りがバラバラに落ちていく・・・・・・・。カインは剣で突き刺した魔王を地面に叩き落とした。首飾りが中を舞い、拡散していった。

 子供達は何が起きたかは理解したいなかった・・・・・・。ただ不条理がそこにはあった。魔王の口から血の塊があふれ出す。カインは最後の留めを刺すために、歩みよる。

 「勇・・・・勇者よ・・・・・・頼みがある・・・・」

 「・・・・」

カインは黙り、首と胴体を分断させるたに大きく構えた。

 「こ・・・・子供・・・・・・だけは・・・・・殺さないで・・・・・・」

カインはそれを聞き終えたあと、剣を降り落とした。あたりは鮮血にまみれたカインと子供達そして、ただ時間だけが過ぎていった・・・・・・・

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