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異世界への扉〜今日はどこ行く?〜  作者: Hippopotamus
序章 君が望むならば
4/15

プロミエの町

 隣を歩くライトを改めて見る、ちょうど目線の高さくらいに頭が見えるので大体165センチから170センチ弱くらいだろうか。

 髪はふわっとした綺麗な金髪を短めに切りそろえ、微かに幼さの残る中性的な顔立ちは男らしいというよりは可愛らしく人懐っこい笑顔は女性の母性本能をくすぐりそうな感じだ。


話を聞いているうちに分かったのだが、五つ以上年したかと思っていたらどうやらライトはこの見た目で18歳だったらしい。

俺がかなり驚くとちょっとへこんだようにそうなんだ……と呟き、逆に俺の年齢を聞くとめちゃくちゃ驚いていた。

どうやら俺も若くみられていたようだ。


 そんな話をしているとその柔らかそうな金髪をなびかせて急にこちらを振り向くとこういった。


 「じゃあ『渡り人』ってことはホープはこの世界のことについてあんまり知らないんじゃない?」


 「ああ。 あんまりというか全く知らないな。 教えてくれるか?」


 「ああ! もちろんだよ! でもその代りホープの世界のことも教えてほしいんだ!」


 「ああ……そっか。 ライトは『渡り人』と話してみたかったんだったな。 いいぞ。でも期待してるような話があるかわからんぞ?」


 「ほんとかい!? ありがとう! じゃあ僕になんでも聞いてくれよ!」

 

 そういうと嬉しそうにライトは胸を張りとんっと胸を叩いた。

 何とも頼りなさそうだと思っているとちょうどその時、顔が隠れるほどの大きな二つの袋を前で抱えた茶色い赤髪を後ろで三つ編みにした恰幅のよさそうな40代くらいのおばさんが向こうから歩いて来た。

 すると歩いて来るおばさんにぎゃははと騒ぎながら歩いていた冒険者風情の二人組の若者がぶつかりリンゴによく似た赤い果物が袋からリンゴがこぼれた落ちた。


「ちょっとあんたたち! 人にぶつかっといて謝りもなしかい!」


 若者たちはチッと小さく舌打ちすると何も言わずさっさと行ってしまった。


 「ったっく。最近の冒険者ときたら。この町はどうなっちまうのかね」


 俺たちはその恰幅のいいおばさんに駆け寄った。


 「大丈夫ですか?手伝います」


 「おお。ありがとね。にーちゃん」


 「ハンナおばさん! 大丈夫?」

 

 「なんだい誰かと思ったらライトちゃんじゃないかい! 今日はお友達と一緒かい?」


 「はは! まぁね」といいながら嬉しそうに笑った。


 「始めまして。 私はホープといいます。 今日この町に入る時に、ライトに知り合って町を案内してもらってるんです。」

 

「そうかい。 ライトちゃんと仲良くしてやってね。 あたしゃ、この町で宿屋をやってるハンナってもんさ。 よかったらうちにおいでよ、ライトちゃんのお友達なら夕食くらいサービスしてやるよ!」


「ハンナさんの料理はすごく美味しくて評判なんだよ!」


「じゃああとでお邪魔させていただきます」


「ああ! 待ってるよ!」


ハンナさんと別れたあとしばらくして取引所に着きアイテムを出そうとしたとき、俺はあることに気づき慌ててライトを脇の裏路地に連れて行くと尋ねた。


 「みんな荷物を運ぶ時はどうしてるんだ? 魔法やなんかで運んだりしてるのか?」


 「いいや。 みんな道具袋や背負い袋の中なんかに入れて運んでるよ。 たまにマジックアイテムの袋なんかを持ってる人はいるけど高級だからめったにいないよ」


 「マジックアイテム?」


 「マジックアイテムっていうのは魔法が込められた道具のことだよ」


 おっ、やはり魔法はあるのかと内心わくわくしつつ、まずは目の前のことをなんとかしなければとライトに向き合うと話は始める。


「これから見せることはライトを友達、いや親友だと思って見せるんだ。だから絶対に誰にも話さない事いいな?」


「……親友! う、うん!わかったよ!」


「わかったらアイアイサーだ」


「あいあいさー!」


 ちょいな。大丈夫なんだろうかこいつ。


 そうして俺はライトにアイテムボックスから

アイテムを取り出しながらにつすと案の定ライトは驚いた。


 「すごいよ、ホープ! きみ空間魔法が使えるの!?」


 やはりアイテムボックスは誰でも使えるわけではなさそうだ。


 「いや空間魔法が使えるんじゃなくて、これはアイテムボックスといって俺の固有能力みたいなもんだ。だから道具を出し入れすることしかできない」


 実際には俺の能力はRPG化なのだけどまぁ説明しにくいし問題ないだろう。


 「ホープって、『固有能力者ユニークアビリティユーザー』だったんだ! すごいすごい! やっぱり『渡り人』ってすごいなぁ!」


 「ユニークアビリティユーザー……? ああ。だから、この能力のことは誰のも話さないように。あと俺が『渡り人』ってこともだ」


 「え! なんでだい? すごいことなのに」


 「その『固有能力者』ってのや『渡り人』ってのは珍しいんだろ? だったらそれを利用しようとする悪いやつもでてくるかもしれない、だからあんまり目立ちたくないんだ」


 「ああ…うーん。そうかぁ」


 「だからこれは俺たちだけの秘密だ。 男と男の約束だぞ」


 「俺たちだけの秘密……男の約束……うんうん! わかったよ! 任せて!」


 「よし! 頼んだぞ!」


 だいたいこいつの扱い方がわかってきたな。単純なやつでよかった。まぁそこもこいつの魅力なんだろうな。



 取引所まで戻り、ライトから借りた袋から取り出したように見せつつ、アイテムボックスの中から、手に入れた毛皮と肉、それと小さい結晶を取り出した。

毛皮4枚、肉5つ、結晶4個を売り茶色い硬貨七枚と青緑の硬貨四枚を差し出され、ちらりとライトをみるとこくんとうなずいたので受け取った。


 それからライトにさっき立て替えてもらっていた分を払おうとするとどうやら足りなかったみたいだ。

 とりあえずある分を全部渡そうとすると「それはこれから必要なものを買うのに使ってよ。お金はいつでもいいから」と言われてしまったのでその好意にに甘えることにした。

 なんてなんていいやつなんだと思いながら「すまない」というと「僕たちはと、友達なんだから当然だよ!」と言っていた。なんだか少し残念な気持ちになったので撫ででやった。


 そのあと雑貨屋や道具やでライトにアドバイスをもらいながら着替えや生活必需品なんかを買い終わるとちょうど夕方になっていたので夕食を食べにハンナさんの店に二人で向かった。ちなみに買い物中ライトは小さい声で「これが夢にまでみた……」とかぼそぼそ言っていたので聞こえないふりをしておいた。


 ライトに案内されてハンナさんの店に入ると何やら光る石に照らされた明るい木造の店内は冒険者と思わしき屈強な狼っぽい獣人の男性やローブを着た綺麗なエルフの女性など様々な人種で賑わっており猫耳のウエイトレスの子が忙しそうに動き回っていた。するとカウンターの方からハンナさんが出てきた。


 「やぁ来たね、あんたたち! そっちのあんちゃんは泊りだったね!泊りは夕食付で1フォリスだよ! ちょっと騒がしくて悪いけど今日はいっぱい食べてきな!」

 そういってライトに教えてもらいお金を払うとカウンターの方に案内してくれた。


 するとすぐ料理が運ばれてきた。コブサラダのような料理に大きなローストチキン、野菜がごろごろ入ったシチューと大きめにカットされたフランスパンのようなパンがテーブルに並べられた。


 早速サラダを食べてみる。見た目はほんとにコブサラダにそっくりでトマトやキュウリ、アボカドのようなものまで上にはカリカリに焼いたベーコンにゆで卵まで乗っている。シャキシャキとした新鮮な野菜にクリーミーなドレッシングがかかりいくらでも食べれそうだ。

 次にチキンへ、よく焼き目の付いたチキンのもも肉を一かじると口の中いっぱいにジューシーな肉汁が広がり、程よく締まった食べごたえのある肉は肉本来の味がしてこれもまた絶品だった。

 エンジンがかかってきたその手を次はシチューへ、野菜一つ一つに味がよく染み込んでいて舌でとろけるほど柔らかくまで煮込まれた牛の頬肉のようなお肉が入っているシチューはしっかりとした小麦の風味のするパンと絶妙にマッチしていた。

 最後にランビックのような酸味のあるビールをぐびっと一口飲みだんっと机に置くと一息ついた。


 「ほんとにどれもとても美味いな」


 「そうでしょ! ハンナさんの料理は世界一おいしいんだ!」


 そうして料理を味わいながら本題へと移った。

 ライトから聞いた話をまとめると、ここは世界にある四大大陸のうちの一つ『グランラディア大陸』に一応は属している国『ツゥエラルコ共和国』の小さな町のひとつ『プロミエ』。なぜ一応かというとこの国には少々特殊な事情があるらしい。


 この『ツゥエラルコ共和国』の始まりは四百年ほど前にあったこの国が属している『グランディア大陸』と隣の魔族が住んでいいる大陸である『エレボス大陸』との大きな戦争にある。


 今から474年前に隣の『エレボス大陸』から魔族の侵攻があった。これに対し当時『グランディア大陸』の最大の勢力であった人族の国『アポロ帝国』が魔族に対し徹底抗戦に応えじた。しかし数に押された『アポロ帝国』は徐々に後退し、さらに新たな魔族の軍勢が『グランディア大陸』の各地で侵攻を始め、周りの獣人、エルフ、ドワーフなどの亜人たちの国も参戦し戦争はさらに激化した。そして統率の執れていない『グランディア大陸』側は徐々にその領地を奪われ始めた。


 しかし魔族の侵攻から八年が経とうとしたある日、人族の国『アポロ帝国』から一人の『勇者』が立ち上がった。そしてのちに『暁の英雄』と呼ばれた勇者はバラバラだった亜人族の国を説得して周り、二年後ついに獣人、エルフ、ドワーフを中心をした亜人族連合軍『エーオス』を結成、指揮しその時すでに絶望的だった戦況を次々と覆して行き、多くの犠牲を払いながらも二年後ついに魔族軍を見事撃退したのだった。


 その時の功績を讃えられ『アポロ帝国』の国王から褒美を聞かれた勇者は答えた。いくら勝利したとはいえその時の大戦でかなり甚大に被害を受け、滅亡してしまった国の民、家を戦火で焼き払われ行き場を失くした戦争難民たち、そういった者たちのための新たな国を作りたい、そしてそのための領地と権利を求めた。そしてその事を聞いた王は、領地をやることはできないが土地ならあると『エレボス大陸』との間にあるその時、まったくの未開の地であった小さな大陸を勇者に教え、同盟となることを条件にそのことを許可した。

 そして今から約498年前、国からほぼ独立する形で新興国『ツエラルコ共和国』、そして首都である『ネオロイス』が誕生したのであった。


 「という事なんだよわかったかい?」


 「話しがなげぇよ。読者が飽きるだろうが!」


 「えっ! なんの話!?」


 「いや、なんでもない。つまりこの国は色んなやつがいるってことだろ?」


 「いや、まぁそうなんだけどさ、そんな身も蓋もない」


まぁ事実、多種多様な種族が助け合ながら国を造ったという歴史があり、約五百年経った今でもそこまで大きな種族的な差別がなく、そこまで大きくないこの町にも獣人やエルフ、ドワーフなど様々な種族を普通に見かけることが出来きた。


 当然初めてみるファンタジーの住人に俺はライトの手前、冷静を装いながら心の中ではうおおおおっと雄たけびをあげ、すぐそこにある猫耳をもふもふしたい気持ちを抑えていたつもりだっだがどうやらバレバレだったようで、ふふっとライトに笑われた。


 通貨はペカで貨幣は六種類あり下からカルクス銅貨、フォリス青銅貨、ソドリス黄銅貨、シリカ銀貨、アウレウス金貨、マナ白金貨。それぞれ日本円にして百円、千円、一万円、十万、百万、一千万となるようだ。複数の貨幣を使うときはペカを使い、単一の硬貨だけの場合はその硬貨の名前を使い値段を表すようだ。


 さらにこの世には魔法も存在しているらしい、だが誰でも使えるというわけではなく、魔法使いなどの天職を持っている者だけが使える。天職というのはいわば、どの職業の才能を持っているかという事でその天職をもっているとその分野において力を発揮したり、特殊な技が使えたりするらしい。

 どうやら俺のジョブやスキルに当たるようだ。

 そして多くの人は非戦闘系の天職を持ち、戦闘や魔法の才能がある者が大体十人に一人の割合ぐらいだそうだ。そしてそういった才能がある者の多くは冒険者や聖職者などになるらしい。

 ライトも本当は冒険者になりたかったらしいのだがそういった天職がなく、警備兵をやりながら冒険者をめざしているらしい。


 さらに気になっていた『渡り人』についてももう一度詳しく聞いてみた。


 「それじゃあ次に『渡り人』についてもう少し詳しく教えてくれないか?」

 

 「うんうん! いいよいいよ! まぁ僕も物語や本でしか知らないんだけど、『渡り人』というのは百年にうちに数人の割合でこの世界に現れるらしいんだ。 そして特殊な力や知識で様々な時代で大きな貢献をして英雄や偉人として活躍した人たちはこの『渡り人』が多かったんじゃないかって言われてるよ。 そうそう! あの四百年前の魔族との大戦の時の勇者様だった『暁の英雄』もこの『渡り人』だったんじゃないかとか、最近でいえばマジックアイテムを作った『エジソンシュタイン魔導師』もそうらしいよ。 確かマジックアイテムが出来たのがもう50年以上も前だから今も生きているかはわからないけどね」


 エ、エジソンシュタイン……ひでぇ名だ。 だが間違いなく俺と同じ異世界人だろううな。


 「じゃあさっき言っていた『固有能力者ユニークアビリティユーザー』というのは?」


 「『固有能力者ユニークアビリティユーザー』っていうのは、自分しか持っていない特殊な能力を持っている人のことでその能力はかなり強力なものが多いんだ。 かなり珍しくて十万人に一人くらいなんだって。 あっ、そうそう『渡り人』と言われている人たちはみんなこの『固有能力者ユニークアビリティユーザー』だったらしいよ。 『固有能力』自体はあの『暁の英雄』が最初に使ったとされ、今の魔法の原型となったことから別名『原初の魔法』とも言われてるね。 そういえばポープもそうだね」


 そのあともライトは色々と話してくれた。俺の世界の話もいくつかしてあげると目を輝かせて見えない尻尾を振りながら聞いていた。



 そういった話を長々としているとどうやら結構な時間が経ったらしく、あんなに騒がしかった店内はすっかり落ち着いていた。ライトとは明日も一緒に夕飯を食べる約束して、ハンナさんに挨拶を済ませると名残惜しそうに宿舎に帰っていくライトを見送と宿に戻る。


 「料理とてもおいしかったです。 ハンナさん」


 「ああ。そりゃよかった! なんたってうちの唯一の自慢だからね! それにしてもありがとね」


 「なにがです?」


「ライトちゃんのことさ。 あんな嬉しそうな顔をしてるのを見るのは久しぶりだよ。 これからも仲良くしてやっておくれよ」


「ええ。もちろんです。もうライトとは……友達ですから」


「さぁ遠くから旅をして来たんだろ? 今日はもうゆっくりお休み」


 そういって部屋に案内してくれた。六畳ほどのへやにベットと机があるだけの質素なものだったがなんだか不思議と落ち着く雰囲気の部屋だった。

 すぐに堅そうなベットに倒れこむと今日一日のことを思い出す。


「ああーなんだか。とんでもない一日だったな」


 そうして目をつむるとすぐ俺の意識はまどろみの中に沈んでいった。


最初ライトはデカい優しいお兄さんにする予定でした。

それがなぜぼっちに……


ご意見ご感想をどしどしご応募ください!





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