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異世界への扉〜今日はどこ行く?〜  作者: Hippopotamus
序章 君が望むならば
3/15

深緑の森

 町に向けて出発することを決めた俺は、まずは草原を抜けるため森の方に向かった。

 

 歩きながら草原にいる動物たちを観察してみると皆一様にまったりと寛いでいることがわかる。牛のような動物にリスのような動物、どの子も警戒してないところをみると、ここには天敵となる動物がいないのだろうか? 


 やはりここにいたほうが安全かとも思ったが、ここにいても埒が明かないし、なにより今は色々と情報がほしい。何もわからない土地で無知あるほどで危険ものはない、いくらチートがあるからといっても死なない保障はないのだから。最初は危険を冒しても自分の安全を確保していきたい。


 とりあえず森を抜けなければ。楽観的な考えだがこれだけ安全な地域ならば近くに村ぐらいはあるかもしれない。 

 なにより今は頼るものがないのだから進むしかないだろう。


 ということで森の入り口まできた俺はその大きな照葉樹林の森を見上げた。そして一度草原を見た後、腹を決めるとだっと勢いよく森に足を踏み入れた。するとさっきとは打って変わり背の高い大きな木々が所狭しと立ち並ぶその人気のない暗い森の姿に俺は言い知れない不安感に襲われた。

 少し後ずさりしもう一度後ろを振り向くとそこにはさきほどまであったはずの穏やかで明るかった草原などなかったかのようにうっそうとした薄暗い森がただ広がるだけだった。

 

 「……え?」


 いきなりの出来事に鳥肌が立ち、早くも折れそうになる心を奮い立たすため両頬を二度ほど思い切り叩き、気合を入れ直すと少し涙目になりながら少し明かりが見えるほうへ歩みを進めた。


 人間喉元過ぎればなんとやらで、案外すぐに落ち着きを取り戻した俺は注意しながら改めて森を観察した。


 確かに薄暗いが木々の間から少しばかりの木漏れ日が差すその森は、数百年は経っていそうな大きな広葉樹たちがまるで空を覆い隠すように枝葉を伸ばし迷路のように立ち並んでいた。


 その荘厳で静寂に満ちた景色はとても神聖で、俺はなんだか入ってはいけない聖域にでも迷うこんでしまったようなそんな錯覚に陥った。


 そして妖精でもいそうな森だと感動しながら三十分ほど辺りの景色を堪能しながら歩いているとさっきまでの少し湿り気のある空気から柔らかく朗らかな風に変わり始め、周りの景色が若々しい枝の葉の隙間からは暖かな春の日差しが差し込む明るい森に変わってくる。 

 すると少し先の乱立している木々の間から漏れる明かりが強くなり始めたかと思うと急に視界が開けた。


 どうやら無事に人の通る道に出てこれたようだ。とりあえず太陽の位置から北だろうと思われる方角に進んでいくことにした。しかし太陽の位置関係が地球と同じなのか、北に町があるかわからないこの状況に俺は少し歩く足を速めた。


 道を進んでいるとついに避けては通れない事態に行きあたってしまった。

 そう、初の魔物との戦闘だ。幅三メートルほどの道の端に六十センチほどの黄色いウサギのようなものがいた、ただし小さな牙の生えた。


 早速、表示をオンにしてみてみる。



 『チビラビット』



 あれでチビか、嫌になるなと腰に手をやるとあることに気付いた。


 「……武器持ってねぇ」


 とりあえず慌ててアイテムボックスを念じ、そこからさっき草原で何個か拾っておいた石ころを取り出すとこちらに向かって突進してくるチビラビットに目がけて投擲した。

 やはりまだLv1でDEXが低いせいか勢いはそこそこあったが見事に外した。続けてもう一発投げ、また外したあと行きよい良く俺の腹に目掛けて突進してくるそいつを真横に飛びぎりぎりで躱す。


 瞬間、すぐ横を通り抜けたその速さと確かな圧力に微かに冷や汗が流れる。

 焦るな。落ち着け。と自分に言い聞かせるとアイテムボックスから最後の石を取り出し、Uターンしてまたこちらに突撃を仕掛けてくるやつに狙いを定める。

 しっかりと引き付けたあと狙いをさだめて思い切り投げた石は、どしっという鈍い音とともにチビラビットに当たる。するとそいつの上にあった赤いゲージのようなものが三分の一ほど削れ、一瞬ウサギの動きが止まる。

 その瞬間を見逃がさずサッカーボールキックの要領で思いきり蹴りを入れると地面を転がりながら三メートルほど吹っ飛んだ。


 そして突然キラキラとした綺麗な光とともにゆっくりとチビラビットの姿が消えていき、さっきまでウサギがいたところに毛皮と小さな結晶のようなものが残った。


 「はぁはぁ……」


 すると一歩遅れて頭の中でピロローンとまたあのどっかで聞いたことのある電子音が流れた。

 おっと思い、少し息を整えメニューを開くとステータスのところにNEWの文字が、開いてみるとLv2となっていてステータスが少しだが上昇していた。


 なるほど、想像はしていたがやっぱりこうやって上げていくのか


 とりあえず無事勝てたことの喜びと安心で気分が少し楽になる。

 さらに蹴った瞬間の感触は死ぬほどリアルだったがRPG化のお陰か消え方が思いのほかファンタジーだったためか恐れていたほどの不快感や嫌悪感はなかった。


 自分はこんなにも図太い神経してたのかと少し疑問に思ったがこれも固有スキルのせいだろうと自分を納得させると目を瞑り一度深呼吸をしてアイテムを拾いに行った。

 


 * * *



 それから同じように何羽かのチビラビットを素手や石、途中で拾った手頃な木の棒などで倒していき、 同じように何枚かの毛皮といくつかの小さなの結晶、それに新たにチビラビの肉をいくつか手に入れた。 


 レベルももう一つ上がりステータスも全体的に少しだけ伸びていた。

 もう一つ新たに得たものがあった。素手でチビラビを倒した後、メニュー画面のジョブとスキルのところにNEWの文字があり開くとジョブが増えていた。


[異邦人]


・異邦人 Lv.1

・武道家 Lv.1 NEW

・戦士 Lv.1 NEW


 スキルを開くと新しく二つのスキルが加わっていた。

 


・異邦人 Pスキル:ステータス補正(微小)

・武道家 Pスキル:武道の心得  Aスキル:連撃  NEW

・戦士  Pスキル:戦闘の心得  Aスキル:ラッシュ  NEW




 このAやPってのはなんだ? まぁいいか、とりあえず試してみてだな。


上の欄に武道家をセットして連撃を使ってみると体の中で何かが少し抜けたのを感じた後、素早く二発攻撃することが出来た。


 おおっと驚きと少し感動を味わったあと、さっきの違和感を確かめるためステータスをチェックすると少しだけMPが減っていた。


 「ここはやっぱりテンプレ通りみたいだな」


 多分、二種類のスキルから比べるとPはPassiveのPで常時発動型、AはActiveのAで任意発動型なのだろう。そしてAは使用時にMPが必要なようだ。


 そのあと何回か戦闘しながら少しジョブやスキルについて検証しながら進んでいると、いつの間にか森を抜け平野らしき地形に変わっており左の方には微かに川が見える。

 もしかしたら町は近いかもしれないと淡い期待を抱いきながらそのまま真っ直ぐ一キロほど舗装されていない凸凹の道を進んだところで遠くの水平線上になにか人工物らしきものが見えてきた。


 「……はぁ。よかった。 とりあえず野宿はしなくてよさそうだ」


 近づくにつれて町が見えてくる。三メートルほどの高さの茶色い塀が見え、その手前に石で出来た堀があり、中をゆっくりと水が流れているようだ。正面には門らしき大きめの木の扉と手前には跳ね橋が降りていた。

 その門の横に警備兵らしき人物が立っているのが見え、どう言い訳しようかと考えながら足早に門に向かった。


 

 「きみ、どうしたんだいその格好は。 追剥にでもあったのかい?」


 俺よりも五つ以上若い感じの警備兵の男の子が俺を見て少し驚いた顔でそう聞いてきた。


 「……あーっと、迷ったというか。気付いたら森にいたというか」


 忘れていた。俺は正直な男だった。というか嘘が苦手だった。


 「……森に?」


 微妙な空気が流れた。 やっぱまずったか?


 その若い警備兵の子は顎に手を当て少し前かがみになりながらじーっと俺の顔を見たあと目線を上下に動かすと


 「んっ? その髪にその目、それによく見れば変な服を着てるね。……もしかして きみ、『渡り人』!?」


 「……『渡り人』?」


 「ああ! わからないよね! 要は違う世界から流されてきた人のことだよ。……違うのかい?」

 

 「いや。多分その『渡り人』というので合ってると思う。でもどうしてその渡り人だと?」


 「ああ。 それはよく聞く『渡り人』の特徴に黒髪黒目に変わった青いズボンというのがあるからね」


 「なるほど」


 「その証拠に体のどこかに変わった痣があるはずだよ」


 「痣……?」


 素早く体を探してみると左の鎖骨の下辺りに二匹の蛇が輪の形に繋がったウロボロスのような痣があった。


 「いつの間に……」


 「ということはきみは今、無一文だよね。町に入るにはソドリス黄銅貨一枚がいるんだけど」


 「ああ。 ならウサギの毛皮や結晶はあるので換金出来ない?」


 「そっか、それならここは僕が払っておくから、今から僕が買取所に案内してあげるよ。ちょうどもうすぐ交代の時間だしね」


 そういうとその警備兵は横にある宿舎のようなところに入って行った。


 ……行っちゃったよ。なんか人のよさそうなやつだな。


 「おまたせ! じゃあ早速いこうか?」


 そうして十分ほどして、さっきの若い警備兵の子が戻ってくる。


 さっそく彼に付いて行き町に入る。

 

 「さっきはどうもありがとう」


 「いやいや、僕もちょうど終わりだったしね気にしないで」


 「でもどうして?」


 「ははは。 実は『渡り人』っていうのはかなり珍しくてね。 僕は昔からもし会えたら色々話を聞いてみたいと思ってたんだ」


 そういうと彼は人懐っこそうな笑顔で少し照れくさそうに言った。


 なんか犬っぽいな。こいつ。


 「僕はライト。このプロミエの町で警備兵をやってるんだ。 よろしくね! きみの名前は?」


 「俺は……」


 そう言って俺は少し考えた。こいつの話がほんとなら俺が『渡り人』だというのはあまり知られないほうがいいのかもしれない。念のため本名は隠して別の名前にしとくか。



 「俺はホープだ。 よろしくな、ライト」

一度でいいから行ってみたい、彼女と白谷雲水峡。


ステータス載せておきます。

ステータス

Lv.3 HP:27 MP:7

ATK 6 

DEF 5

INT 2

MND 3

AGL 7

DEX 5

LUK 66


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