閑話 刀
まだ俺のレベルが10で、ちょうど『剣術使い』のがレベルが3になった時の事だった。
その日、俺は先日取得した『商人』のレベル上げの為に目利きを使いながら、新しくレベルも上がったし新しい武器でも買おうかとゴルバさんの店に訪れていた。
色々と店内を物色しているとそれはジャンク品の中にあった。 ほんとにジャンク品の奥にあって一個ずつ目利きで調べないと見逃していたかもしれない。 それは日本の男の子の大好きな武器ベスト3には確実に入るであろう『あれ』。その奥に、鞘に収まった状態で置いてあった『あれ』を目利きしてみると、日本刀『無銘』となっていた。
それは至って普通の打刀のようだったが、そのギラリと光る刃に何かを感じ、ゴルバさんに尋ねてみてみた。
「あの……これは?」
「最近流れてきたが、それはだめだ。 動かんものを切るならいいが実践では碌に使えん。だからずっと残っている」
「そうですか。 確かに使い方を知らないと使えませんからね。 これ……いくらですか?」
「ほんとに買うのか? なら……4000だ」
「安くないですか? 確かに普通の刀ですけど。 でもちゃんと鋼を使っているし、造りもしっかりしているはずですが?」
「ほう……よくわかったな。 確かにそうだ。しかし誰も使えるやつがおらんからな。 誰も買わんそれに使えん奴には俺は売らん」
「そうですか。 これ俺が買ってもいいですか? 実は俺のいた国ではこの刀をよく使っていたんです」
「お前さん、他国の者だったか。 なるほどな……まぁ、お前ならいいだろう。 しかし、俺では直せない。気をつけろ」
「ありがとう、ゴルバさん。 大事に使わさせてもらいます」
そして、早速刀を買った後、森に入り試し切りしてみる。 すでにさほどの脅威でもなくなった。はぐれウルフを相手に戦ってみる。
最初はやはりうまくいかなかった。 剣術はあるが使い方が違うのかやはりうまくいかない。 HPとDEFで耐えながら戦っていく。そして、まぐれかいい一撃が決まりはぐれウルフを倒した時、ピローンといつもの音がした。
急いで確認してみる。
・刀術使い Lv.1
どうやら条件は単純に刀で倒すことだったみたいだ。
スキル 刀術の心得 Aスキル 一閃
おお! これでいつかは何たらの閃きが撃てるようになるのだろうか。 いや俺には無理か。
早速、刀術のジョブをセットしながらそんなこと考えているとガサガサと背後で音が聞こえ振り向くと同時にびゅっと何かが頬を掠める。硬球が掠めて様なひりひりとした痛みが頬を襲う。危険察知がなければ顔面に直撃だったな、と思いながら周りを見渡すと五メートル先で、何か茶色いボール状の塊がぽーん、ぽーんと規則的に跳ねている。 意識してみるとスプリングマウスと表示される。
その時、ひゅっという音とともに一瞬でスプリントマウスの様子が消えたかと思うと背後の木にだんっと何か当たる音が聞こえたと同時に背中にどっという衝撃が走る。
「…痛」
ってー! マジかよ何も見えんかったぞ!
そしてまたぽーんぽーんと跳ね始める。
っち! どうする? 闇雲に振っても当たらんだろうし、 ジョブを変えるか? いや、武器を変えてるような時間はない。武道家にしたとしても、あのスピードで色んなとこにぶつかっても何ともないとこ見ると打撃系は効かんと見た方がいいな。……ああ。何だっけこんなことこの前もあったような。まぁいいそんなこと!くそ!またぶっつけ本番かよ!
そしてさっき攻撃を食らった場所に立ち目をつぶるとふーと息を吐き少し脱力する。
ぽーんぽーんというが消えひゅという音とだんっと言う音が聞こえる。
危険察知をフルに使い、ギリギリで最小限の動きで辛うじて直撃を躱す。
そして、ゆっくりと手に持った刀に手を伸ばし、しっかりと腰を落とす。
――集中しろ。音を聞け。感じろ。
余計な雑音が消え、樹に当たる音と風を切る音だけが聞こえる。何かが周りを縦横無尽に動き回るのを感じる。
――――だんっ
背後から聞こえる音が鳴るコンマ数秒前、一瞬先に体を捻り腰を回しながら振り向くと同時に作っていた溜めを流れるように手から刀に伝える、そして鞘から刀身を滑らせ一気に背後に向かって抜き放つ。
――――ザンッ
その抜き放ったポーズのまま目を開けると目の前に光の粒子が広がっていた。同時に電子音が聞こえる。
ふぃーっと大きく息を吐き、体を見ると所々青痣や蚯蚓腫れになっていた。
痛ってーといいながらジョブを見ると刀術使いLv.2――抜刀術(派生)となっており、スキルを開くと、派生スキル 神速の刃が加わっていた。 ちなみに狩人もこの時、レベルが上がっていた。結構いい経験値だったみたいだ。
目の前に落ちているウルフより一回り大きい結晶と跳び鼠の皮を手に入れた。
ちょっと、刀の具合を試しに来ただけなのにとんだ試し切りになったな。
まぁ効率よくレベル上げ出来たし。思わぬ収穫もあったからよしとするか。
さて、今日の晩飯は何かな?とオレンジに染まりかけた西の空を見ながら町に向かって歩き出した。
派生スキル 神速の刃 斬撃の瞬間、AGL二倍の速度で攻撃可能
師匠のポエムは世界一ぃぃ!