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異世界への扉〜今日はどこ行く?〜  作者: Hippopotamus
第一章 パーティーの始まり
10/15

ある日、森の中パティさんに出会ってしまった。

 意気揚々と町を出た俺は一時間半かけて森の入り口まで行くとそのまま森に入っていく。

 確か前来た時は一時間位で森を抜けたんだよな。ということは一時間ぐらい経ったところで右に曲がればあの場所に着くはず!


 そう適当な予想で道を歩き大体一時間ぐらい経ち、どこら辺から入ってみようかときょろきょろしながら歩いていた時、ぐにゅっという感触と共にふぎゃっと以前どこかで聞いたことのあるような、ないような呻き声が足元から聞こえてきた。


 「……ど、どけれぇ、あ、足どけれぇ」


 なにやら死にそうな声が足元から聞こえてきたので、横に避けさっきまで何かを踏んでいたところを意識してみると『パティ』と表示されその下の赤いゲージがあと二ミリほどだった。さらにじっと見ているとぼんやり何かがいるのが分かる。魔力感知の効果だ。


 するといきなり靄が晴れたように何かが姿を現した。まさに妖精のようなひらひらのピンク、黄色、黄緑の三色のワンピース。背中には綺麗な虹色の羽。パステルグリーンの髪を肩の辺りで二つに括った、五十~六十センチほどの三頭身の丸っこい幼女の妖精がつぶれたカエルの様な格好でうつ伏せに倒れていた。その死にそうな姿に何かを感じすぐに駆け寄って跪き抱える。


 「大丈夫か!? パティ!!」


 「すまねぇ……あたいはもうダメみたいだ……」


 「そんなこと言うなよ! 俺を一人にしないでくれよ」


 「あんたのこと……すき……だた……よ……」 ガクッ


 「パティーーーー!!!!」


 妖精を抱きしめる俺、すると腕の中からくんくんと何かを嗅ぐ音が聞こえる。するといきなり妖精が飛び上がり俺は鼻にヘッドバットを食らう。


 「いでぇ!」 「アップルパイ!!」


 は?


 「おい! あんた! もしかしてアップルパイ持ってないか!?」


 「はい?」


 「アップルパイだって! 持ってんの! 持ってないの? どっち!?」


 え?ああ……あるけど……と言いながらアイテムボックスからハンナさんから貰っていた焼きたてのアプルパイを取り出すとその瞬間ちんちくりん妖精が飛び掛かってくる。


 「ヒャホー! アップルパイ!!」


 俺からアプルパイを引っ手繰るとガツガツとすごい勢いでパイを食べる。一瞬で食べ終わると子犬のようなうるうるの目で見上げれくる。


 まだあるが……といって残りのパイ三つ全部出すとまた飛びついてくる。


 「ヒャホー!まだまだあるぞー!」


 また俺の手から引っ手繰ると、ありがてぇ。うめぇうめぇと泣きながら一心不乱にむしゃむしゃとパイを食べる化け物妖精。ドン引きである。


 パイを食べ終わりはぁーと余韻を楽しみつつ息をつくと、さも今俺に気付いたと言わんばかりに二度見するとギャー!!っと叫んだ。



 * * *



 「っというわけでここでついに力尽きちゃったわけだよ」


 「なにがっというわけなんだよ」


 「いやー助かったよ! マジで! ほんとマジで死ぬ五秒前だったよ」


 「まぁ実際体力ゲージあと二ミリだったからな」

 

 「えっ? ……まじで?」


 「ていうか、お前だれだよ? ってかなんだよ?」


 「よくぞ聞いてくれた! アタシは完全無欠の超絶可愛いの天才妖精パティちゃんだ! よろしくじゃん!」


 「……へー。っでなんの妖精やってるの? そんなキャラいつまでも続けられるわけないよね? キミ何歳なの? 今はいいかもしれないけどあとあと後悔するよ? なんでを俺はあの時あんの事平気でやってたんだって、このままでどうするの。将来は? 仕事は? え? ……っでところで君なんの妖精なんだっけ?」


 「……木の妖精です。 すいません。 ……ずびっえぐっえぐっ」


 「うわぁ……そんなまじで泣くなよ……」


 「ところで君こそだれなんだい?」


 「いやにリアルな嘘泣きだったな……俺はホープだ。 プロミエの町で冒険者をやっている」


 「ふーん。 ああ、ごめんごめん。 アタシは君が誰なのかじゃなくて何者・ ・なのかを聞いたんだけど?」


 「……何者か、か。 …………俺は、びびりで、食いしん坊で、クールなだけのただののぞむだ。 ……これでいいか?」


 「ああ。 上等だね。 最高だよおまえ。 アタシはうるさくて、食い意地の張った、プリティなだけのただのパティだ! よろしく、相棒。」


 「……誰が相棒だ」


 「すぐに言うようになるさ。 さて! じゃあ早速行きますか! 付いて来な!」


 「どこへだよ?」


 「助けてもらったんだ。 こちとら受けた恩は返すぐらいの妖精としてのプライドは残してるつもりでい!」


 「……ああ。 そういう事か」


 そうしてふよふよと宙を飛びながら森の中に入っていくパティに付いていく。三十分ぐらいすると初めてこの世界に着いた時に見た深い森に風景が変わっていく。さらに三十分ぐらい進んだその時、パティが急に止まったかと思うと振り返り小さい手が俺の指を掴んだかと思うと引っ張って行く。


 「二度目の夢の国にようこそ」


 暗い森から突如として明るくなり思わず目を瞑り、数秒後目を開けるとそこは、俺が着いた時と同じ真っ青な空が見えるあの気持ちのいい草原だった。


 「やっぱり、ここだったか」


 「ああ、のぞむがここに着いた時と同じ草原だな」


 「なんで知ってる?」


 「これでも妖精だからな、妖精は視ることの出来る種族だから君の過去をみたのさ。 とはいえなぜかホープがここに着いた瞬間までしか視るは出来なかったけどね」


 「プライバシーもくそもないな」


 「くく、そうだな。 さて今日はさらに進むよ」


 手を放すと少し前を飛び進み出した。


 「どこまで行くんだ?」


 「君とならばどこまでも」


 「いや、そうゆのいいから」


 「つれねーな。 私はこんなに愛してるのに!」


 「傍迷惑だ」


 「そんな他人行儀な! せめて当事者には入ってよ」


 「断る!」


 「さすがクールだねぇ。 くくっ」


 「いじるなよ。自虐なんだから」


 「あははっ! わかってやってんのさ。 さてそろそろだよ」


 気が付くとそこはまた大きな気が立ち並ぶ森に入っていた。しかしここは前の森とは違い木々が理路整然と並び、まるで主人を出迎える召使のようにぴしっと立ち並んでいた。その枝葉まるで主人の為に過分な日光を遮り通す日傘のように優しく広げられていた。その道を十五分ほど歩くと大きな大きな老樹が見えてくる。それは目測でも三十メートルはあるのではないかという高さで横幅は十メートルはありそうだ。

 そんな巨大で立派な老樹の根本まで近づくとパティが大きな声でしゃべり掛けた。


 「よう! 爺さん生きてるかぁ?」


 するとその大きな老樹が動いたかと思うと樹の幹に大きなキノピヨの鼻をした優しそうなお爺さんの顔が浮かび上がる。


 「おや……誰かと思ったら今度はもう帰って来たのか、我が可愛い可愛い娘パティよ」目を閉じたままゆっくりとしゃべりだした老樹。


 「はっ、もうって百年前だけどな! アタシが出てったのは!」


 「わしにとってはすぐじゃよ、百年なんぞ。それにちょくちょく草原までは帰って来とったみたいじゃがの。 ところで最近はよく人が来るのう。 しかしこの子はまた少し変わった子のようじゃがのう。 なにやら我が娘が世話になったようじゃな。 なんのお構いもできんのが心苦しいがゆっくりしていきなされ、御霊渡りの子よ」


 「ところで爺さんあれをこいつにやりたいんだがいいか?」


 「あれ? ……ああ、あれか。 それは構わんが何やら泉の水が止まっており今はあまり実っておらんぞ?」


 「泉の水が? っち、困ったな。なんで止まってんだ?」


 「……ふむ。……なにやら大きな岩が入り口を塞いでいるようじゃの」


 「ふむふむ……なるほど。 じゃあ少し早まったがあれを今やっとくか。 おい、相棒 ちょっとちょっちゃこい!」

 

 「ん? なんだ? てか相棒じゃねぞ」


 そういってパティに近づく。


 「今からなんだよ、それに」


 パティは俺の胸に手を当てると何かぶつぶつと唱えたかと思うと、何か温かくて優しい何かが流れてくると同時に何かが抜けていくのがわかる。次の瞬間、ぴかっと光ったと思うと一瞬焼けるような熱を感じる。


 「熱っ……」


 次の瞬間にはもうなにも感じなかった。胸の中心、痣の横に長細いダイヤモンド型の烙印のようなものが浮かび上がる。 そしてピローンと電子音がしたので画面を見ると固有能力にNEWがついていた。


 ・RPG化


 ・???


 ・精霊の友 NEW


 「契約終了……っとな。 でもどうも完全ではないみたいだな。まぁほとんど成功したし特に問題はねえと思うが。 なんでだ? 魔力は十分あると思ったけど」

 

 「それは、その子の器の容量があまり残ってなかったからじゃろうな」


 「はぁ? どういう「おいっ! お前俺に何した!」」


 「ったく、かっかすんなよ。 禿げるぞ!」


 「死んでも禿げるか! ていうか説明は!」


 「ああ。契約だよ。けーやく。 お前と俺の魂の一部を交換することでアタシとのんちゃんの間にリンクを作ったんだよ」


 「誰がのんちゃんだ! てか何勝手なことしてんだ。 このちんちくりん妖精!」


 「誰がちんちくりんじゃこら! いてまうぞ! この根暗野郎!」


 「誰が根暗だー! 少し心がインドアなだけだ!」


 「まぁ落ち着かんか、二人とも。 パティもちゃんと説明せんか。 おぬしもあんまり熱くなるな、相手するだけ疲れるぞい」


 「「……ちっ」」


 「仲がいいのぉおまえら」


 「「よくねぇ!」」


 「「……くっ!」」


 「まぁまぁ、のぞむとやらさっきのは精霊契約といって、パティはリンクと言っておったが、確かにぴったりじゃの。 お主の星の言葉か。 つまりおぬしとパティを繋げる魔力の通り道を作ったんじゃ、それによっておぬしとパティとの間で相互契約がなされた。 まぁ簡単にいうと魔法を使えんお主に変わって魔力を渡すことで魔法が使えるようになったという事じゃ。 別に大したデメリット……というのかの? そういったものはない。 むしろお主にとってメリットばかりじゃ。 しいて言うなら死ぬまでパティに付き纏われるくらいじゃな」


 「最大のデメリットじゃねぇか!!」


 「なにをー!」

 

 またぎゃーぎゃーと言い合いをする俺たち。


 「やれやれ、まぁこれで泉の岩を退かせられるじゃろうて。 アウラよ、二人を泉まで案内しておやりなさい」


 「はい。 畏まりました。エンティア様」


 すると木の陰から綺麗な深緑のロングワンピースを着た同じ深緑の長い髪をアップに纏めた二十代後半ぐらいの綺麗でお淑やかな女性が現れた。


 「げ! アウラ!」


 「…………お久しぶりですぅ! パティお姉様ぁ!」バッ


 ……気がしたが違った。


 「ええい! 離れろ! うっとおしい!」


 「うっとおしいは、いとおしいですわ! お姉様!」


 「聞いたことないわ! ぼけ!」 


 ……羨ましい。


 「なら変わってやるわ! 今すぐ! Right Now!」


 「……なぜ心を読める!?」


 「リンクが繋がってるからだよ! いいから助けろよー!」


 「わああん! フライバシーの侵害だよぅ!」


 「キャラ壊れてんぞ! のぞむ! いいから戻って来なさい!」


 「……ああ。 いかんいかん。 ……えーっと、アウラさんでしたか?」


 「はい。 そうでございます。 紡木 望様」


 「……ああっと、そろそろ案内していただけますか?」


 「ああ……失礼いたしました。大変お見苦しいところをお見せしてしまい。 じゅるり」


 「おい……涎垂れてんぞ、アウラ」


 「いいので案内を早く」


 「はい。では、こちらになります」


 そう言ってアウラは俺たちを泉まで案内し始めた。



 

アップルパイ苦手です。

ちなみにアップル社のリンゴが齧られているのは"bit"と"bite"を掛けてるかららしいですね。


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