Knock, Heaven's Door
これが初投稿作品になります。生暖かい目で見守ってください。
――そこは真っ白な空間だった。純白というよりは全てを塗りつぶすような暴力的な白色。最初から何もなかったかのように全てを無に還す色。
虚無な白。無垢な白。空白の白。白々しい白。
周りはただただ真っ白で距離感さえも掴めない。
風も気温も空気さえも感じないその空間で俺は天国ってのはこんな場所なのかなと馬鹿なことを考えていた。
そんなどこか現実味のない空間に気付けば俺は佇んでいた。
「……ここはどこだ?」
現状を把握しようとぼーっとする頭を必死に回転させ俺は思い出そうとする。
どうと言うことはない。
どこにでもいるような大学生、毎日をバイトや遊びに精を出し、授業なんか二の次で友達や彼女とバカ騒ぎをし、清く正しく乱れた生活を過ごすことをモットーとした模範的な不良学生。
これも貴重な一日と無理に自分を肯定していたそんなバカな学生のうちのひとりだった。
そんな不良学生の鑑のような俺は、昨日は確か彼女と珍しく喧嘩し大学の送別会に行って、嫌な気分を払拭するため調子に乗って飲めない酒を飲み過ぎたんだった。
それで乗ってきた自転車を押しながらおぼつかない足取りでひとり自分のアパートに帰る途中だったはずだ。
そこまで思い出したところで、そこからの記憶が炎で焼き切られたようにまったくない。
「……だめだ。思い出せない」
軽い頭痛と眩暈を感じ振り払うように俺は頭を軽く振った。
その時、俺はふと目の前に二段ほどの台座のような段差があり、その上に扉があることに気が付いた。
その扉はこの空間と同じく真っ白で洗礼された綺麗な意匠が施されていた。
いかにも中世ヨーロッパの宮殿にでも出てきそうな感じだ。
その扉はこの空間と同じく真っ白だがこちらはむしろ清廉といった感じだ。
同じ真っ白なはずなのにその扉は空間に同化するどころか、圧倒的な存在感がありどこか神々しささえあった。
「こんなとこに扉…?」
俺がその姿に目を奪われていたその時、急に頭の中に女とも男とも区別のつかない声が聞こえてきた。
――叩けよ さらば開かれん――
年齢さえもわからないその声に驚きながらも俺は扉から目を放すことができず、自分の中の好奇心を抑えきれずゆっくりとその扉に近づき手を掛ける。
心なしかドクドクと鼓動が速くなる、ごくりっと喉が鳴る。
俺はゆっくりとドアノブを回しそっと押す。
……ガチャッ ガチャガチャッ 「……むっ?」
引いてみる。 ガチャガチャッ ……開かない。
ガチャガチャガチャガチャッ
「閉まってんじゃねぇか!」
何が“さらば開かれん”だよ!ちょっと期待して恥ずかしいわ!と心のなかで毒づきながらドアノブから手を放し、扉に背を向けふてくされたように扉の前の段差に腰を下ろした。
ふぅと一息つき、心を落ち着かせようと目を瞑ったあとこれらからどうするかなぁと五分ほど考えていた時、ふと俺はあることを思いついた。
「まさかなぁ……」
俺はゆっくりと立ち上がり扉の前までだらだらと行くと、もう一度勢いよく扉を引いてみた。
……横に。
ガラガラガラガラッ まるで昔のおばあちゃん家の玄関の扉ような少し建て付けの悪い音をたてながら扉が開いた。
「引き戸かよっ!」
開けた戸から溢れ出す眩しい閃光と共に今まで出したことないような大声でつっこみながら俺は意識を手放した。
昔の家には玄関戸を開けると土の土間がありましたね。今はそんな家なかなかないですけど。
ご意見ご感想お待ちしています。