悪役? いや、見る専なんで。
結局、書きたくなって書いてしまいました。
(堪え性のないヤツですみません……)
『悪役』シリーズの4作目です。
1悪役は、難易度が高いようです。
2悪役という名の、袋のネズミ
3悪役って……誰のこと?
4悪役? いや、見る専なんで。
今回の視点は、どこぞの誰か、です。
今までの話と同一世界ですが、雅と要の要素が薄いです。
サイドストーリー?的な感じだと思ってお読みください。
「もうね、ほんっとに可愛かったの!」
「ふーん……」
ソレハヨカッタネ。
「ねぇ、聞いてる?」
「ああ……」
聞イテマス。
「…………」
「……」
……うん? 何か急に静かになったぞ?
「……オイ、聞けっつてんだよ」
おおう、声のトーンがヤバい。
……女としてそれは駄目だろ……口調含め。
「……きちんと聞かせていただきました。雅が相変わらず可愛いって話だろ?」
「そう! なーんだ、聞いてたんだ…………っち」
ちょ、今舌打ちした!? ちゃんと聞いてたのに!?
それともアレか、俺を責めて楽しむ、とかいうことでもしようと思ってたってか!?
いつの間にそんな趣向に目覚め…………てたな、既に。
はあ……まあ良いけどな……その被害に遭うの、俺じゃないし。
それに俺、どっちかっつーと………。
「聞いてましたとも。たとえ、執務室でデスクワーク中であろうとも、俺の可愛い彼女さんの話を聞かないはずがないだろ」
「な……! か、可愛くなんて、ないもん……」
はい、ツンデレ発動☆
いやー、普段気の強い子ほど不意打ちに弱いってのは周知の事実――もはや常識と言える。
で、俺の彼女サンは例に漏れない、と。
さっすが元々ヒロインだっただけのことはあるな。
まさに王道を行く!って感じで。
「そ、そんなことよりも! 新しいデザインを作ったの。……確認してくれる?」
「はいはい。こっち来いよ」
さっきの流れで頬が赤くなったのまま、ちょっと不安そうな顔するとか反則だろ……。
でもこれ以上のやり取りはこの後の作業に影響が出るからな。
仕方ない、おとなしく服のデザイン見てやるか……どうせ八割方が雅の服だろうけどな。
――――――――――――――――――――
っと、まあいきなりのっけから、正直「お前誰だ」って感じだよな……。
いや、俺もどうかとは思ったんだがな。そこら辺の苦情はあれだ、紀伊に頼む。
あいつの行動はわかりやすいんだが……かなり突発的でな。俺としても困ってるんだ。
仕事が押してる時に限って訪ねてくるのは、本当に勘弁して欲しい……。
ん? それは良いから自己紹介しろって? ……そういえばまだしてなかったか。
俺は霧島彩≪きりしま さい≫って言うんだが……まあ名前はどうでもいい。
俺の立ち位置としては、篠宮雅・斎条要の幼なじみであり、現在は青蘭紀伊の恋人(卒業後からのつきあいになる)だ。
ついでにもう一つあげるなら、俺は転生者だ…………無駄に。
そう、俺はこの世界が少女漫画の世界だってことを知っていた(あえての過去形で。なんせ結末変わってるし?)。
え、なら俺の前世は女かって? いやいや、俺は今も昔も未来も前世も変わらず男です。
……たとえ雅に“彩ちゃん”呼ばわりされていようとも、俺は男だ。
「生物学上、一応男?」とか未だに言われるようとも、俺は男、だ。
「雅用の服似合うんじゃない?」とか言われようとも、俺は、男、だ。
……断じてそう言われる理由は聞かないぞ。……どうせ、「だって女の人みたいな綺麗な顔してるから」って言われるに決まってるからな……。
あー……なんだっけ? ああ、俺が少女漫画を知ってる理由だったな。
それは、まあよくあることだが、俺の前世に、姉という最強生物がいたからだ……。
姉弟の関係では、姉が女王で弟が下僕になることがよくあるって言うだろ? 俺の前世も、例に漏れずそうだったんだ。
(今世は一人っ子だから、余計に前世の俺、頑張ってたなって思うよ……)
んで、そんな最強生物が、自分の好きな漫画について語り合う相手を欲した結果、俺に白羽の矢が立ったっつーわけだ。
んで、俺はうふふきゃっきゃした少女漫画を大量に読まされ(砂吐きそうなほど、読むの辛かったな……)、その中の漫画の一つがこの世界の漫画(この漫画は読むの、まだマシだったな……キャラが濃かったからな。ちなみに、俺の推しは雅で、あの要に対する一途さが良かったと思う)…………あ、名前忘れた。
なんだっけな……確か、要が薔薇王とか呼ばれてたから……『薔薇君』?とかそんな名前じゃなかったか?
……うん、多分そうだった気がする。正式名称? そんなもん忘れたよ。
いや、俺的にはこの略称が思い出せただけでも結構凄いことになんですけど。というか、別に名前どーでもよくね?
それで……だからなんだって感じだよな。もう物語も終わってるし?
いや、特に何があるわけでもないんだ。……だから最初にちゃんと言っただろ?
俺は無駄に転生者だって。
物語を俺好みに変えることもなく、円滑に進める(漫画では、俺ポジションは雅の味方で悪役だった)ために努力することもなく(聞いたことないけど、雅は転生者なんだろうな。悪役頑張ってたもんな……出来てなかったけど)。
ただ単に、傍観してました、はい(時々、雅が物言いたげに見てたのは知ってたけども。俺の平穏な日々のために、スルーさせてもらいました)。
意味わからんって?
そうは言ってもなー、俺に努力って、似合わない気がするんだ。
というか、前世で散々下僕ライフ頑張ったから、今世では何もしたくなかったんだよ……。
……まあ、単に見てる方が面白そうだったってのもあるんだが。
……てなわけで、傍観ライフを送ってたわけだが。
正直に言おう、かなり楽しかった。
何がって……雅の天然っぷりと、要の不憫さと、紀伊の壊れ具合が。
で、この3人の関わりつつもお互いに全く理解出来てない感じが。
端から見てたら丸わかりなのにな、なんで気付かなかったんだろうな~。
……ああ、要はある程度(自分の思惑が雅に通じてないことと、その雅は何故か自分と紀伊をくっつけようとしてたことくらいは)わかってたか。
こんなもん、もはやネタでしかないと思わないか?
それぞれの思惑とか全部理解しながら見てるんだから、そりゃあ面白いに決まってる。
要の誕生パーティー?
勿論見てたとも。
要が壇上から雅と話してたときなんかは、思わず要に同情したな。
会話の言葉尻捕まえた雅がおかしなこと口走ってるし、満面の笑みに周りのヤローどもがざわついてる(雅はよく笑う方だろうが、ヤローは嫌いだからな……見たの初めてだったんだろうな)し。
あのときの要は尋常じゃなかったな……雅は気付いてなかったっぽいが。視線で人が殺せるなら、まず間違いなく数十人はお亡くなりになってたはずだ。
てか雅がおかしなこと口走る原因になったアレ(要の「婚約を解消する」とか言ってたセリフのことだが)、本当は“婚約関係を解消して、今日から新しい関係を作ろう”(……俺は言えない……というか言いたくないな。鳥肌が立ちそうだ)的な感じになるはずだったらしい……まあこれは雅が悪いな。
んで、その後の追いかけっこ(要がやたら楽しそうだった)からの、別室行きだろ?
いくらなんでも、酒は駄目だろ、と言いたい(まだ未成年ですよー)。
……でもな、あんなに嬉しそうな要は久々に見たからな……止めるのは正直に言って不可能だ。俺はまだ死にたくないです、はい。
後日、結果を嬉々として報告された。……うん、良カッタデスネ。
一つ言えるとすれば、頼むから俺にのろけを語らないでくれ……。俺は別に雅のアレコレは聞きたくない。
いや、俺にしか言えないってのは理解してる(俺は二人の幼馴染みだし、雅にそういった意味での興味がない)んだが……幼馴染みのは、ちょっとな……。
そういえば最近では、鎖に繋いだ件について語られた(これは紀伊からも報告を受けた)。
まあ確かに、ことあるごとに誘拐される雅もどうかとは思う……が、流石に鎖はやり過ぎじゃないか……?
いや、正直なところ、気持ちはわかるんだ。
好きなヤツに自分だけを見てほしいとか普通(俺的には、ときちんと言っておく)だし、独占したいものだろう。
鎖に繋がれてるってことは、自分のものってことだろ? それが好きな女なんて、男の夢だと思うし。
実際にするかどうかは置いておくとして、やりたいかやりたくないかと問われた場合、俺はやりたいと即答できる。
ただな……要は相手が雅だったから良かったんだ(雅は要の重い愛を受け止められる、希少な存在だ……単に鈍感で騙されやすいだけかも知れないが)。
それが俺の場合、相手が紀伊だろ? ……多分無理だな。
紀伊は明るくて行動的だ。アレは自由だからこそ輝いていられる。行動を許されず、縛り付けられれば……多分、壊れる。
たとえ紀伊が壊れても、俺は変わらないし、変わらず紀伊を愛せるだろう。
でもそれを俺は望まない。紀伊には輝いていてほしいから。
……だから、縛り付けるなら、紀伊が壊れない程度に、加減しなければ。
ん? 言ってることがおかしいって?
別に今縛り付けてるわけじゃないんだから、おかしくはないと思っているんだが?
そんなことしなくても、紀伊は俺の側にいるしな。
……紀伊が逃げたときは…………その時は、俺自身、何をするかわからないけどな。
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「……紀伊?」
「んー……」
寝てる、か……。そういえば最近は徹夜続きだとか言ってたか。
「無理させた、か……」
デザインを見た後、非常に眠そうな紀伊を俺の家に連れ帰り……美味しく頂いた。
……言い訳をさせてもらうと、紀伊が徹夜続きだったということは、俺ともしばらく会えていなかったということで。
そろそろ紀伊不足も限界だったんだ。
不思議なものだ。
最初はただの漫画のヒロインだった。次に鈍感で変わった子だと思った。そのうち、雅の友達になっていて……俺の心の中に入ってきた。
俺の心は狭くて、極数名を除いて、それ以外はどうでも良かったのに……紀伊はいつの間にかそこにいたんだから。
「なあ、紀伊? 不思議だと思わないか?」
「うぅん…………さぃ……す、き………」
「っ!!」
あー、もう。
俺は紀伊を捕まえたつもりだった。……が、捕まったのは俺なのかもしれない。
俺の心を鎖で絡めとったのは…………紀伊なのかもしれない。
「俺も好きだ……だから、俺から離れるな。…………俺を、離すなよ?」
――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――
<鎖をつけられた、あの日 side雅>
「ぅ、ん…………」
おはようございます……。
……お見苦しくて、申し訳ありません。わたくし、朝は弱いのです。
「うー……ん……?」
何故でしょう……左足が、重い様な……?
確かめようとは思いますが……まだ起きたくありません……。
「……雅? 起きたのか?」
「かなめ……?」
要が声をかけてきました……起きなければなりませんね……。
――ジャラッ――
……ジャラ?
「え…………?」
何かおかしな音が聞こえました。左足の方から、です。
「どうかしたのか?」
「要……あの、左足が重い気がするのです……」
「ああ……自分で見てご覧?」
……要がとっても良い笑顔なのですが。どうしてでしょう、物凄く嫌な予感がいたします。
わたくしは恐る恐る左足の布団を退け、そこにあるものを確認――――――
――――何かおかしなものが見えた気がいたします。
いえ、きっと見間違いですわね。もう一度確認してみましょう。
わたくしの足に重みをかけているものは――――鎖。
…………鎖?
なんというか、中世ヨーロッパ等で使われていそうな長い鎖に、わたくしの足が繋がれております。
わたくし、実物は初めて見たのですが……思ったよりかは重量がないようです。
それに、随分と長いのですね……家の中なら歩き回れるくらいはあるのではないでしょうか?
……げ、現実逃避をするな、ですって?
そのようなことはわかってますわ! ですが、いきなりは無理なのです!!
いえ、パニックを起こしてもどうにもなりません…………落ち着いて考えてみましょう。
まず鎖ですが、これは現代日本において、通常ならまず目にすることはないものと思われます。
そして、何故かわたくしの足が繋がれているのですが……これはもう直接聞くしかありませんね。
「要? この鎖は何なのですか?」
「これは、雅を守るためのものだ」
「わたくしを守る……?」
「そう。だって雅は、家から出ると誘拐されるだろ?」
「そんなこと! そんなことはありま「す。ついこの間誘拐されかけたの、もう忘れた?」あぅ…………」
「全く、もうお腹に子供もいるってのに、そんなんでどうするんだ?」
「それは、その……。で、ですが、このままずっと出ない、というのは不可能ですわ……」
「ああ。だから、今日だけ、な? 俺が帰ってくるまで、このまま家から一歩も出るな」
「わ、わかりましたわ……」
いつなにく真剣な様子の要に思わず頷いてしまいましたが……そもそもこの状態では出られません……。
というか、洋服を着るのにも苦労しそうな気が……。
「そう思ったから、下着だけは着せておいた」
「ええ……気付いておりました……ありがとうございます」
久々にきましたわね………読心術。もはや諦めることを覚えてしまいました……。
「それじゃあ、名残惜しいけど、仕事に行かないとな」
まあ……もうそんな時間でしたか。
お見送りしなければいけませんね。
「その格好だし、見送りはここで構わない」
「ではお言葉に甘えて。行ってらっしゃいませ、要」
「ああ、行ってきます」
行ってらっしゃいのキスをして。
要が完全に家から出たことを確認し、わたくしはため息をついてしまいました……。
鎖……予想外過ぎますが、いた仕方のないことなのかもしれません……。
それに、要は今日だけ、と言っていましたし、これで要の気がすむのなら、わたくしは甘んじて受け入れるべきでしょう。
それにどのみち、自分で外すことはできませんもの。
きっと物事、諦めが肝心ですわね……………。
はい、ここへきて、まさかの新キャラ視点にしてみました。
当初は、完全に傍観者視点(名前もないモブ)でいこうと思っていたのですが、それでは個人的に盛り上がらなかったので、紀伊のカップリングを作ってみました。
そして…………何故こうなった。
元々は単なるツッコミ君だったはずなのに……いつの間にかヤンデレ化(まだ行動に移してないので、予備軍扱いですが)。
そして紀伊は……おっさんどこ行った!? ちょっと気の強い、単なる女の子になってしまいました……。
これもアリ、と思って頂ければ、嬉しいのですが。
それから、オマケとして書いてみた、例のあの日。
これは、ちょっと書いてみたくなったものの、短いため新しく短編にすることも出来ないため、ここに載っけてみました。
雅は要ヘの対応の最終奥義、“諦める”を習得しています。
雅ちゃんも流されるだけじゃありません、ちゃんと成長してました!
そんな雅の成長に……書いた私がびっくりです。