第9話 街の防衛戦と、氷の要塞
(前回までのあらすじ)
フレデリク(フレド)は魔王軍の先遣隊を撃破し、パーティの絆を深めた。街は警戒態勢に入り、フレドたちは防衛の要として任命される。市長からは軍事面での協力も求められ、フレドの暖かい南の国への逃亡はさらに難しくなる。魔王軍の本隊が迫る中、静かに暮らせない悲劇は加速する。
街の空気が張りつめていた。
ラグナスの街壁には、冒険者や民兵が配置され、弓矢や魔法道具が並ぶ。
魔王軍の本隊——推定100体以上のゴブリン兵とオークの混成部隊——が森の向こうから迫っているという情報が入った。
斥候の報告によると、街を占拠して南下の拠点にするつもりらしい。
ギルド支部長が俺たちに指示を出した。
「ガルドの冒険隊は街の北門を守れ。
フレドの氷雪魔法で防壁を強化してくれ。
魔王軍の闇魔法は厄介だが、君のスキルなら対抗できるはずだ」
ガルドが剣を構え、気合いを入れる。
「了解! 俺たちで守り抜くぜ!」
エリナが魔法の杖を握りしめ。
「フレドさん、私の火魔法と組み合わせたら最強よ!
氷と火のコンボで溶かして凍らせるわ!」
ティオが回復ポーションを配りながら。
「みんな、怪我したらすぐに言ってね!
僕、がんばるよ!」
リリが弓を張り、クールに。
「……敵、多め。ステーキの分、稼ぐ」
俺は街壁の上から森を見下ろした。
遠くに黒い影の群れが見える。
魔王軍の旗が揺れている。
(……南の国々が危ない。
この街が落ちたら、ビーチリゾートも巻き込まれる。
ほっとけないな……
でも、俺はただの家出王族だぞ?
なんでこんな大規模戦に……)
根が真面目すぎる俺は、
また「みんなを守るか」と決意した。
戦いが始まった。
魔王軍の先頭が森から飛び出し、街壁に迫る。
ゴブリン兵が矢を放ち、オークが斧を振り回す。
闇の魔法弾が飛んでくる。
街側の民兵が反撃。
弓矢が飛び、魔法が炸裂。
でも、魔王軍の数は多すぎる。
壁に梯子をかけ、登り始める。
ガルドが叫ぶ。
「フレド! 今だ!」
俺はスキルを発動させた。
まず【霜王の加護】で街壁全体の温度を下げ、
魔王軍の動きを鈍らせる。
副作用で周囲が涼しくなり、民兵たちが「快適だ!」と喜ぶ。
次に【氷雪支配】を大規模に。
街壁の前に氷の壁を生成。
高さ10メートル、厚さ2メートルの氷の要塞だ。
梯子をかけたオークたちが滑り落ちる。
「すげえ! 氷の壁だ!」
「フレドさん、神!」
パーティの面々が感嘆する。
でも、魔王軍は諦めない。
指揮官のデーモンらしきものが闇魔法を放ち、
氷の壁を溶かそうとする。
エリナが火球を連射。
「私のターンよ!」
ガルドが壁の上から剣を振るい、
リリの矢が敵を貫く。
ティオが負傷者を回復。
俺はさらに【オーロラの導き】に従い、
最適なタイミングで【北風の咆哮】を放つ。
大吹雪が魔王軍を襲う。
ゴブリンたちが凍りつき、オークが転倒。
闇魔法も吹雪に飲み込まれ、効果が薄れる。
魔王軍の半数が凍結し、残りが退却を始める。
街側から歓声が上がる。
「勝った! 魔王軍を撃退したぞ!」
「氷の魔法使いのおかげだ!」
「フレド殿! 万歳!」
パーティが俺に駆け寄る。
ガルドが抱きつく勢い。
「フレド! お前がいなきゃ街は落ちてたぜ!
ほんとにありがとう!」
エリナが目を潤ませ。
「大吹雪……美しかったわ。
フレドさん、私たち家族みたいね!」
ティオが泣きながら。
「みんな無事でよかった……フレドさん、僕のヒーローだよ!」
リリが珍しくハグ。
「……フレド、ステーキ一生分おごり」
俺は疲れ果てて壁に寄りかかった。
(……街を守れたのはよかった。
でも、みんなの絆が深まりすぎてる……
抜けにくくなったじゃん)
支部長と市長が駆けつける。
「フレド殿! 君の功績は王国中に知れ渡るぞ!
王都から使者が来る。
勲章と、正式な顧問任命だ!」
俺は顔を覆った。
(表彰またかよ……
南のビーチ、いつ行けるんだ……)
その夜、祝勝会でパーティの面々が語らう。
ガルドが真剣に。
「フレド、お前がいなきゃ俺たちはここまで来れなかった。
これからも一緒に。
魔王の本拠地まで行こうぜ!」
エリナが頷く。
「そうよ! 魔王討伐の英雄パーティよ!」
俺はビールを飲みながら、
内心でぼやいた。
(暖かい南の国で静かに暮らしたかったのに……
気づけば魔王討伐の中心メンバーだ)
魔王軍の脅威はまだ続く。
街の防衛は成功したが、
本隊の主力が南下中という情報が入った。
静かに暮らせない俺の悲劇は、
クライマックスへ向かう。
――続く
(第9話 終わり)




