第8話 魔王軍の脅威と、パーティの絆
(前回までのあらすじ)
フレデリク(フレド)は魔王軍の斥候部隊を氷雪スキルで撃退し、パーティを救った。ギルドから大報酬を受け取り、国レベルの英雄扱いされるが、市長からは顧問任命の話まで出る。パーティメンバーから「これからも一緒に」と頼まれ、魔王討伐の可能性まで浮上。フレドの暖かい南の国への夢は、ますます遠のく。
街のギルドは大騒ぎだった。
魔王軍の斥候撃退のニュースが瞬く間に広がり、冒険者たちが俺たちを取り囲む。
酒を奢られ、握手を求められ、女性冒険者からはウィンクまで飛んでくる。
「ガルドの冒険隊、すげえな! 魔王軍相手に勝つなんて!」
「特にあの新入り! 氷の魔法使いだって? 俺もパーティ入りたいぜ!」
「報酬で豪華ディナーだ! おごってくれよ!」
ガルドが豪快に笑う。
「ははは! みんな、ありがとうよ! でも本当のヒーローはフレドだぜ!」
エリナが俺の腕を掴む。
「そうよ! フレドさんなしじゃ、私たち全滅だったわ。
これでギルドランクも上がるかも!」
ティオが目を輝かせる。
「フレドさん、僕たちと一緒に魔王倒しに行こうよ!
英雄になれるよ!」
リリがいつものクールさで。
「……金貨、ステーキ10人前買える」
俺はビールを一気に飲み干し、テーブルに突っ伏した。
(……英雄? 魔王討伐?
冗談じゃない。
俺はただ暖かいビーチでビール飲んで寝たいだけだ。
なんでこんなことに……)
でも、パーティの面々が楽しそうに話すのを見て、
根が真面目すぎる俺は「ほっとけない」と思った。
(少しだけ……みんなのランクが上がるまで手伝うか。
それで抜けよう)
翌日、ギルドの上層部から呼び出しがあった。
支部長——厳つい顔の老人——が俺たちを部屋に迎え入れる。
「ガルドの冒険隊か。よくやった。
魔王軍の斥候を倒したのは大功績だ。
ランクをCに上げる。
さらに、王都から連絡があった。
魔王軍の本隊が南下してるらしい。
この街が前線になる可能性が高い。
君たちに、偵察と迎撃の任務を依頼したい」
ガルドが拳を握る。
「了解だ! 俺たちで守るぜ!」
エリナが地図を指差す。
「南下? それじゃ、南の国々が危ないわね。
フレドさんのスキルで、氷の防壁とか作れるかも!」
ティオが不安げ。
「魔王軍の本隊……強そうだけど、みんなでなら!」
リリが頷く。
「……報酬、ステーキ倍」
支部長が俺に視線を向ける。
「特に君、フレド。
あの吹雪魔法は魔王軍の闇属性に有効だ。
街の防衛に協力してくれ。
報酬は金貨100枚。
成功したら、王国から勲章も出るぞ」
俺は固まった。
(南下? 南の国々が?
俺のビーチリゾートが……!
これは本当にほっとけない)
「わかりました。協力します」
支部長が満足げに頷く。
「よし、では詳細を。
魔王軍の先遣隊が森の奥に陣を張ってる。
偵察して、可能なら撃破せよ」
任務は即日開始。
パーティは森の奥深くへ進む。
リリの斥候スキルで敵の位置を探る。
「……あそこ。キャンプ」
木陰から覗くと、魔王軍の小隊。
ゴブリン兵10体、指揮官らしきオーク1体。
テントを張り、地図を広げて作戦を練っている。
ガルドが囁く。
「奇襲だ。俺がオークを引きつける。
フレド、全体を凍らせろ!」
戦闘が始まった。
ガルドが飛び出し、オークに斬りかかる。
エリナの火球がゴブリンを焼き、
リリの矢が次々命中。
ティオが回復魔法を連発。
でも、魔王軍は強かった。
ゴブリンが影魔法で反撃し、
オークの斧がガルドを吹き飛ばす。
「ぐあっ!」
ティオが慌てて回復するが、
パーティは押され気味。
エリナが叫ぶ。
「フレドさん! 今よ!」
俺は深呼吸し、スキルを発動させた。
まず【オーロラの導き】が無意識に働き、
最適なタイミングを教えてくれる。
(今だ)
【氷雪支配】で周囲を凍結。
ゴブリンの足が凍りつき、動きが止まる。
続けて【北風の咆哮】のフルパワー。
大吹雪がキャンプを覆い尽くす。
ゴブリンたちは凍りつき、オークも斧を落として膝をつく。
ガルドたちがトドメを刺す。
勝利。
パーティ全員が息を荒げ、俺に集まる。
ガルドが肩を叩く。
「またお前のおかげだ! フレド、ほんとに神だぜ!」
エリナが抱きつく勢い。
「大吹雪! あれ、伝説級の魔法よ!
フレドさん、何者なの!?」
ティオが涙目。
「助かりました……フレドさん、僕たち守ってくれてありがとう!」
リリが珍しく笑み。
「……フレド、ステーキおごり」
俺は疲れ果てて座り込んだ。
(……みんな、無事でよかった。
でも、魔王軍の本隊が来たら……
この街、守らないと)
戦利品の地図を調べると、
魔王軍の計画が書かれていた。
南の国々を順に攻略。
次なる目標は、このラグナス街。
支部長に報告。
街は警戒態勢に入る。
俺たちは防衛の要として任命された。
市長が言う。
「フレド殿、君の経済アドバイスで街は活気づいた。
今度は軍事面で頼む!」
俺は天を仰いだ。
(暖かい南の国、行きたかったのに……
今じゃ魔王討伐の道まっしぐらだ)
パーティの絆は深まり、
静かに暮らせない俺の悲劇は、
新たなステージへ突入した。
――続く
(第8話 終わり)




