第7話 魔王軍の影と、氷の反撃
(前回までのあらすじ)
フレデリク(フレド)は表彰式で街の英雄となり、市長の相談に乗って経済活性化のアドバイスをした。街はさらに活気づくが、フレドはまた目立ってしまい、逃亡を決意。しかし、宿を出る直前にガルドから緊急クエストの連絡が。魔王軍の斥候が近くに出現したという。フレドの静かな生活は、ますます遠ざかる。
宿のドアを開けると、ガルドが息を切らして立っていた。
後ろにはエリナ、ティオ、リリもいる。
みんなの顔が真剣だ。
「フレド! よかった、起きてたか!
ギルドから緊急連絡だ。
街の北西、森の奥に魔王軍の斥候部隊が出たらしい。
数は少ないが、偵察に来てるってよ。
放っておくと、街が狙われるかも!」
エリナが地図を広げる。
「斥候は3〜5体くらいだって。
でも、魔王軍の兵は普通のモンスターより賢いわ。
フレドさんの氷雪魔法なら、完璧に抑えられるはず!」
ティオが心配そう。
「魔王軍……怖いけど、みんなでなら大丈夫だよね?」
リリがクールに。
「……朝飯、食べてから」
俺は荷物を下ろし、ため息をついた。
(……魔王軍かよ。
俺のスキルは氷雪特化だから、相性いいのはわかるけど……
ほっとけないな。
街が攻められたら、俺の逃亡ルートも塞がれる)
根が真面目すぎる俺は、
また「少しだけ手伝うか」と決めた。
「わかりました。行きましょう」
パーティ全員がホッとした顔をする。
ガルドが笑う。
「頼んだぜ、フレド!」
森の奥へ向かう道中、ガルドが状況を説明した。
「魔王軍は最近活発化してるらしい。
南の国々を狙ってるって噂だ。
この街は交易の要所だから、偵察に来たんだろうな」
エリナが頷く。
「魔王の配下は闇属性が多いけど、
斥候は影のゴブリンとか、素早いタイプよ。
フレドさんの吹雪で一網打尽にしちゃおう!」
俺は内心でぼやいた。
(南の国々を狙ってる?
俺の理想のビーチリゾートも危ないのか……
これは本当にほっとけない)
森の奥、指定の場所に着いた。
木々が密集し、霧がかかっている。
リリが斥候スキルで周囲を探る。
「……あそこ。影が動いてる」
みんなが身を低くする。
確かに、木陰に黒い影が5つ。
ゴブリン型のモンスターで、黒いマントを着て、偵察道具を持っている。
魔王軍の斥候だ。
ガルドが剣を抜く。
「よし、奇襲だ! 俺が前!」
戦闘開始。
ガルドが突っ込み、一体を斬る。
エリナの火球が飛ぶが、斥候は素早くて避ける。
リリの矢が命中するが、浅い。
ティオが回復を飛ばす。
斥候たちは連携が良く、反撃してくる。
影の魔法でガルドの動きを封じようとする。
「くそ、こいつら賢いぞ!」
エリナが叫ぶ。
「フレドさん! お願い!」
俺は頷き、スキルを発動させた。
まず【霜王の加護】で周囲の温度を下げ、
斥候たちの動きを鈍らせる。
続けて【氷雪支配】で地面を凍結。
斥候たちが滑って転ぶ。
「今だ!」
【北風の咆哮】を放つ。
吹雪が森を覆い、斥候たちを凍らせる。
一瞬で全滅。
パーティ全員が息を吐く。
ガルドが俺を叩く。
「またお前のおかげだ! フレド、すげえよ!
魔王軍の斥候を一撃で!」
エリナが興奮。
「氷雪魔法、魔王軍にも効くなんて!
これ、ギルドで報告したら大ニュースよ!」
ティオが喜ぶ。
「みんな無事でよかった……フレドさん、ありがとう!」
リリが満足げ。
「……戦利品。売ってごちそう」
俺は凍った斥候たちを見て、ため息をついた。
(……これで街は安全になったな。
でも、魔王軍が南を狙ってるなら、
俺のビーチも危ないかも……)
ギルドに戻り、報告。
受付のお姉さんが驚愕。
「魔王軍の斥候を撃退!?
これは上層部に連絡するわ!
報酬、金貨30枚!
あなたたち、国レベルの英雄よ!」
街の人たちがまた集まる。
市長も駆けつける。
「フレド殿! また街を救ってくれたのか!
今度こそ、経済顧問と冒険者顧問のダブル任命だ!」
俺は頭を抱えた。
(……また表彰かよ)
その夜、パーティの祝勝会で、
ガルドが真剣に言う。
「フレド、お前がいなきゃ俺たちダメだ。
これからも一緒にやろうぜ。
魔王軍が活発化してる今、
お前のスキルが必要だ」
エリナが頷く。
「そうよ! 魔王討伐の英雄になるかも!」
俺はビールを飲み干し、
内心でぼやいた。
(暖かい南のビーチで静かに暮らしたかったのに……
気づけば魔王討伐の道へ?)
静かに暮らせない俺の悲劇は、
エスカレートする一方だ。
――続く
(第7話 終わり)




